第六話 アニメとかで言や、ここらで多分一話目終了
更新遅くなってすいません(>人<)
その代わり(?)本編は普段の一割マシ位になりました(;^_^A
それでは、本編へどうぞ!!
「止まれ。逃亡劇はここで終わりだ。」
走り回ってたのが仇になったね、出口にはすでに3人の黒スーツが立っていた。2人は多分まだ中で僕たちの事を探しているんだと思う。
「さあ、最後の警告だ。その子をこちらへ渡せ。」
構える銃口は、今度こそどんな小さな行動でも見逃さないという威圧感をひしひしと伝えてくる。
今度こそ、流石に僕もどうしようもない。お守りも残りは鞄の中だ。絶体絶命のピンチ。
「下手に動くなよ。別に俺はお前を殺しても構わんのだからな。何か怪しい行動をとれば、迷わずお前を撃ち殺す。それに、どうせもう手は残っていまい。」
そう、黒スーツの言うとおりだ。もう、猪口才な小細工はないし、できる状況でもない。こうなったら、確かにもうできることは一つだ。
「……君、ごめんね。」
……僕が不甲斐ないばっかり、こんな手段をとるしかないなんて、僕も情けないな。
「……ちょっとばかり、荒々しいことになる。」
まさか、こんなところで『アレ』、使うことになっちゃうなんて。あんまり使いたくなかったのにな……
「何をする気だ!?貴様!」
「五月蝿いよ、さっさと済ましてあげるから、ちょっと黙ってて。」
そう言って、僕は五月蝿い馬鹿にひと睨み効かす。急に強気の姿勢になった僕に、怯む黒スーツたち。これからが、本気モードの僕だ!
「具現せよ、数多の風の精霊たちよ!今ここに誓わん、我汝らの糧とならんことを!」
僕がそう唱え始めると、周囲に突風が吹き始める。そして、僕の眼の色が黒色から、普通ではありえないエメラルド色へとチェンジした。
「召喚!」
僕が大声で唱えた瞬間、目の前に緑色の短い髪の少年が現れる。普段は口うるさい奴なんだけど、今回は事態を理解してくれてるみたいだね、何も言わずにや黒スーツたちへと向き合った。
「くそっ!アンノウンがぁぁぁ!」
「……うるさいなぁ。全力でやっちゃって。」
『はいはい、いっくよ〜!』
僕が一声頼むと、少年はその手を黒スーツ3人の方へとむける。
「な、なんなんだ、こいつは!!」
『ばいば〜い☆』
ドラゴ○ボールの孫○空のカメハメ波みたいなものが、黒スーツたちへと発射した。ちなみに、これはなんのことのない、単なる風。まあ、風の精霊直々の全力の超突風だけど。正直、台風の風よりももっとすごいよ。
「――――――っぁ……」
特に悲鳴を出すこともできず、黒スーツたちははるか彼方へと吹き飛ばされていった。校内の色んな木々をぶっ壊しながら、だけど……
「1つだけ言っておくよ。僕は未確認能力者じゃない。契約者だ。」
そう言うと、不意に全身から力が抜けていく。やばい、やっぱりこんなに大きなの使うんじゃなかった。
これが僕の奥の手にして、第五話まで隠し続けてきた僕にしか仕えない魔法、召喚だ。自然干渉系でも、陣術系でもなんでもない、謎の魔法。
この魔法は、僕が契約した者を、莫大な魔力を使ってこの場に呼び出すことのできる魔法。ちなみに、それは人やものに限ったことではない。さっきみたいに、普段は具現されていないものにも、魔力を与えることで形として具現化して召喚することができるんだ。契約の仕方は、まあそのものによりけり、かな?とりあえず、僕が召喚してもいい、っていう許可がもらえればいいんだ。
ちなみに、さっき晶を助けるために身代わりにしたのは、以前契約した土の精霊。死んじゃったけど、土の精霊は死んでも生き返るんだよね。だから身代わりとしていつも使わせてもらってます(あとでみっちり怒られるけど)。
『ッ!!キョウ、危ない!』
「ふえ?」
風の精霊の声で振り返ると、そこには女の子のことなんか放置して僕に銃を向ける2人の黒スーツの姿が。
マジ?ここへきて、僕の人生DEAD END?
その男は引き金を引こうとするのが見える。あ……これは、終わったな。何がって?聞くまでも無いでしょ……僕の人生が、さ。
「死ねぇ!」
銃から小さな弾丸が発射されるのが見える。そして、本来なら超スピードのはずの弾丸も、なぜかスローに見えた。ああ、あれかな?死ぬ瞬間、人は半端ない集中力とかで世界がスローに見えたり、これまで人生で経験してきたことを脳内で見たりするって聞くけど。
だけど、スローに見えるだけで、決して身体は動かない。少しずつ、少しずつ、弾丸が自分に迫ってくるのを見てるだけ。最悪だね、こんなに怖いってのに。最後の最後だってのに、僕はろくな死に方ができないみたいだ。
……来世では、もっといい死に方したいな……
「ダメェェェェェェェ!!!」
大きな悲鳴が聞こえてきた。そして、それと同時に……
「……あれ?」
僕の中で、再び世界が動き出した。
「なっ!どういうことだ!」
そう言って、黒スーツは叫んだ本人、さらおうとしている女の子を見た。
「貴方たちなんて、貴方たちなんて……」
ウルウルと溢れてくる涙、その奥で女の子の瞳は……
「いなくなっちゃえぇぇぇぇぇぇ!!」
限りない怒りに震えてた。
「な、なんだ!身体が……」
「うわぁ!なんだ、これ!ゆがんでる!?」
女の子が叫んだ瞬間、黒スーツの周りは黒い空間で包まれた。と、思ったら、次の瞬間にその空間はゆがみ、中にいた黒スーツもろとも、その黒い空間は姿を消した。
あ、若干校舎自体も削り取られてる。いや、若干じゃないな、これは。入り口は綺麗に鋼の錬○術師のグラ○ニー(元ネタわかり辛かったらごめんね)が食べたみたいにえぐられてる。
……なんだろう、凄まじい魔法みたい。
「はぁ、はぁ……へぇ?あれ?」
そんな摩訶不思議な怪奇現象を起こした張本人は、そのことに気付いた様子もなく、むしろ何が起きているかわからず慌てているようだった。
「あ、あははははは……なんだ、守る必要なんて、なかったんだ……」
多分、僕と同じく、彼女も特殊な魔法が使える子なんだろう。ただ、本人に自覚は無いみたいだけどね。
「ふぁ、あの!大丈夫ですか、藤堂君!」
「うん、平気平気……おっと。」
口ではそう言ってみたものの、身体の方は平気じゃなかったみたい。情けなく、僕の体は地面に倒れた。
「はわわわわ!大、大丈夫ですかぁ!?」
「あははははは、慌てない、慌てない。」
別に意識が飛ぶ、何てこともなく普通に脳内は元気、疲れてるのは身体だけみたいだ。
ただそれだけなのに、すごく慌てて必死にどうにかしようとするその少女の姿は、とっても可愛らしい。今なら赤面することなくそう心のそこから感じることができた。
「そう言えば、結局まだ名前、聞いてなかったし、僕もちゃんと名乗ってなかったね。ちゃんと自己紹介、しなきゃ。」
そう言って、軽く上体だけを起こして、僕は微笑みながら彼女と向き合った。
「僕の名前は藤堂 狂夜。君は?」
ゆっくりと、握手を求める手を差し出す。さっきまで泣き顔を見せていた少女は、満開の笑顔でその手を握ってくれた。
「私の名前は、白川 都月です。よろしく、お願いします!」
「うん。こちらこそ、よろしくね。」
ギュッと握り締められた手。そこからは、春の陽光のように心をポカポカにしてくれる、優しい暖かさがあった。
うん、やっぱり早起きした朝は、いいことがあるな。
「ふぇ、と、藤堂君!?」
あれ、やっぱり魔力消費が激しすぎたみたいだな。頭がボーっとして、なんだか…景色が……
僕は自分の上体さえも支えることができなくなり、地面に倒れた。そして、泣きじゃくる可愛らしい顔を見ながら、少しずつ意識は遠のいていった……
「おう、やっとお目覚めか?問題児その3。」
そして目を覚ましたら、僕の前には美しい悪鬼羅刹の顔があった。気分はアレだね、天国と地獄ってやつ?さっきまで天国にいたはずなのになぁ〜。
「早く起きろ、問題児その3!」
「ぐべらぁ!」
いきなり鳩尾へと沈む硬く握り締められた拳。ってやりすぎだよ、先生!おぇ、吐き気がする……
「ふぅ、やっと目が覚めたか、キョウ。」
その声を聞いて部屋を見回してみると、そこにはまるで余裕って感じを醸し出してる恭祐と白川さんの姿が。
ごめんね、恭祐。せっかく目が覚めたんだけど、またすぐに眠っちゃいそうだよ。つーか永眠しそう……
「さあ、さっさと立て。治療!」
先生が魔法を唱えた瞬間、先ほどの死をも覚悟させられた痛みがすぐに引いていく。痛みがまるでなくなったどころか、むしろさっきまでより好調になった気がする。流石はこの学園の教師だ、魔法のレベルも半端ない。
「あ、ありがとうございます。」
「礼はいらないから、さっさとそこの2人の横に並びな。」
そう言って、先生は2人の並んでいる教師用の机に座った。僕も、すぐにそこに並ぶ2人の横に立った。
「さて、それじゃあ改めて名乗らせてもらおう。俺はお前ら8組の担任になる赤羽 春美だ。よろしくな。」
赤羽 春美と名乗った女性は、なんというかとても姉御肌のある人だった。年はパッと見で22,3歳、非常に若そうだ。動きやすそうなそのショートカットに、真の強さを表す力強い瞳、「凛」の一文字に尽きるその雰囲気には、矛盾するようだけど近づきづらい強気なイメージと、近づきたくなる頼りがいのあるイメージを連想させる。
そんな赤羽先生の発言を聞いて、僕はともかく僕の横の2人は不思議そうな顔をした。
「先生、勘違いしてませんか?俺は1組のはずです。」
「あ、あの、私も1組だったと思うんですけど……」
「ああ、そのことについては、今から話そう。ほれ。」
そう言って、先生は引き出しから紙を一枚取り出し、それを恭祐に渡した。
「赤羽先生、これは?」
そう言いながら、恭祐はその紙に目を通す。そして、すぐさま状況を理解したようだ。「なるほど。」と呟きながら、その紙を破りだした。
「って、えぇぇぇぇぇぇ!いいの!?ちぎっていいの!?」
「ふん、せいぜいこれでチャラにしようってことだろ?」
「まあ、そう言うところだな。」
僕の叫びを華麗に無視しながら、恭祐と赤羽先生は話をすすめていく。できれば僕にもわかるように話して欲しいな、なんちゃって。
「白川、お前にはこれをくれてやる。まあ、破って捨てようとも、それは勝手だがな。」
「はい……ふぇ?校舎修繕費請求書?って、えぇぇぇ!!」
次は、白川さんの悲鳴が部屋中に響き渡った。校舎修繕費請求書?ああ、さっき白川さんが綺麗に消した校舎の部分のことかな?
「お前、大層うちの校舎で暴れてくれたよな?だがま、お前はまだ子供だからな、とりあえず今回の件はクラス降格で勘弁してくれるそうだぞ。」
「はうぅぅぅ、すいませんでしたぁ〜。」
今にもなきそうな声で、白川さんはその紙を盾に顔を覆った。恭祐は呆れたようにため息をついてる。
「まあ、今後はこんなことが無い様にな。それでは、ちょっと白川以外の馬鹿2人。お前らには、もういっちょ話がある。白川、ちょっと席外せ。」
「は、はいぃ、わかりました……」
申し訳なさそうに顔を真っ赤にして、白川さんはトボトボとこの部屋から外へと出た。
「さて、んじゃ話してくれるか?そっちの弁明を。」
「ああ。」
恭祐がそうやって話を切り出すと、先生は居心地悪そうに返事をしながらしっかりと椅子に座りなおす。はてさて、未だに僕は事情がわかってないんだけど、それの説明もしてくれるのかな?
「まあ、とりあえずこの馬鹿が話がまだ見えてないから、ちょっと事情を説明してやってくれるか?」
「ああ、そのつもりだ。資料によると、こいつは今世紀最大の馬鹿らしいからな。『存在自体が冗談のような馬鹿』だったか?」
「なんで!?何で僕は人に会うたび会うたび馬鹿にされてるの!?」
しかも本気で『存在自体が冗談のような馬鹿』って言われてたんだ、僕。ここまで馬鹿馬鹿言われると、逆に馬鹿としての自信が芽生えてきちゃうよ……
「まず、神谷に関してだが、こいつは犯罪を犯した。魔法不法侵入の件だ。」
ああ、あれね。確か、そこまで罪状は重くないはずだけど、それでも犯罪は犯罪だよね、確かに。
「その結果が、その破り捨てられた紙だ。神谷、拾って藤堂に見せてやれ。」
「却下だ。キョウ、結果が知りたきゃ自分で拾え。」
「自分でちぎっておいてなんだよ、恭祐の馬鹿!!」
しぶしぶそのちぎられた紙を全部拾い、それを組み合わせてみる。果たして、その紙の正体とは……
「強制退学届?って、ええぇぇぇぇ!!」
マジ!退学させられるの、恭祐!?でも、確か魔法不法侵入罪って、軽い万引き程度の罪のはずだから、せいぜい厳重注意で済むはずなのに……
「だが、その結果は変更だ。神谷に関しては今回、学校を守ってくれたことを考慮に入れて、8組に落とすっていうのに落ち着いたってことだ。」
赤羽先生は、まるでもうこんな物見たくもない、といった感じでその紙を魔法で燃やした。すごいや、紙だけ燃えて、机とかには焦げ目さえついてない。軽いノリでこんな魔法が使えるんだな、先生って。
「だが、そっち側は功績を称えてっていうんじゃなくて、裏があることを読めよ、そう言いたいんだろ?」
恭祐がそこで口をはさんだ。なるほど、そこまで来ると話は見えてきたぞ。
「学校を守ってくれたことってのは建て前。速い話が、この譲渡は口封じの餌ってこと?」
「ご名答だ、キョウ。だが、どう考えてもこちらの足元を見くさった譲渡だけどな。」
苦虫を噛み潰したような顔で、恭祐はうめくようにそう言った。
「ああ、お前達の言うとおり、これは本来なら退学になるほどのことでもないことを、無理矢理退学にさせ、それを後で免除する。そういう餌だ。やり口が汚い。まったく持って納得いかんな、俺は。まったく、身内の恥だ。」
どうやら先生も、このやり方が気に食わないようだ。どうやら、こういう大規模な学校なだけに、上層部の方はこの学園を維持するために割とドロドロなのかもしれない。
「上層部はお前を問題児と認識しながらも、お前がこの学園にとどまりたいことを知っている。故に、一番問題を起こさせないように、程度の低い8組に止めて且つ、学園に不利な情報を外へと漏らさないようにした。白川に対しては、単純にあいつの素直な性格につけこんだ汚いやり口だ。こっちのことは棚に上げてあっちを責めることで、罪悪感でこっちの落ち度を隠そうとしているんだ。」
先生の言う通り、恭祐にはこの学校じゃないといけない理由がある。僕から見たら、いや、誰の目から見てもどうでもいいようなことなんだけど、恭祐にとっては重要なことらしい。まあ、その理由はまた後日ってことで。
先生は再三ため息をつく。なるほど、魔法特化って言うだけでこの学校を選んだけど、上のほうは中々にドロドロだ。
「ともあれ、こんな形でも俺とお前達は生徒で教師だ。これから、よろしくな。」
そう言って、先生は握手を求める。明らかに変わった形ではあるけど、こうやって先生と友好を深めるのもいいかもしれない。
「はい、こちらこそ、よろしくお願いします。」
「こちらこそ。あんたなら、ため口で話しても文句言いそうに無いから、楽にいけそうだぜ。」
「ふん、生意気なガキめ。」
こうして握手を済ませると、さきに教室へいけ、といわれたので、外で待っている白川さんと一緒に教室へ向かうことにした。
「ああ、藤堂。やっぱりお前はもうちょっと残れ。」
「はぇ?」
扉に手をかけた瞬間、先生に呼び止められる。僕は恭祐に、先に行ってて、とアイコンタクトを送ると、再び先生の前に立った。
「お前はもう知ってるかもしれないが、白川 都月、あいつもアンノウンだ。」
「……やっぱりですか。」
アンノウン。それは僕の召喚魔法のように、普通使用できず、詳しく研究もされていない未確認魔法と、その使い手のことをさす。でも、アンノウンの大半は、周りに奇異の目で見られること間違い無しだ。それが嫌で、僕はアンノウンではなくコントラクターと名乗ってる。
「だが、本人はまだそのことを知らない。彼女の魔法の正体、それはまだ誰にもわかってないのだ。」
「正真正銘、本当の未確認魔法ってことですね。」
「そうだ。現在わかっていることは、本人の精神の高ぶりに寄っては暴走するかもしれん、ということだけだ。」
「はい。」
それは、僕も若干危惧していることだったりする。彼女が魔法を使った瞬間、アレは完全に冷静さとは無縁の精神状態だったと思うから。
「非常に危険ではあるが、だからといって彼女を適当に縛り付けるとかはしたくない。そこで、だ。」
「はい?」
「……白川を守ってやってくれ。頼むぞ、コントラクター。」
ニコリ、と今までに見せてくれなかった微笑を浮かべ、赤羽先生はそう言った。
流石にこれには僕もドキッ、とする。まずいな、この学園の女性のレベルは高すぎるよ。
「はい、了解です。」
僕も、その微笑に笑顔で返す。そして、失礼しました、といいながらこの部屋を出る。
「おう、遅かったな、キョウ。」
「ありゃ、恭祐。先行っててって言ったのに。」
「教室行っても、なにぶん暇そうだったからな。」
そういって、とりあえず先ほどまでの苦労を、お互いの拳を軽くコツンと当てることでねぎらう。
「藤堂君。色々あったけど、同じクラスになりましたね。」
満面の笑みを浮かべて、白川さんが僕に話し掛ける。
「これから、あらためてよろしくお願いします。」
先ほどのように、握手を求める手を差し出す白川さん。
「こちらこそ……よろしくね、白川さん。」
次は、僕がその手を握り返した。再び感じる、心温まる手の温度。これから1年、いい年になりそうだね。