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旅立ち  作者: 佐倉梨琥
第1章 駅と桜と彼岸花
3/7

光、誰そ彼

 ざあっと桜の大木を揺らして吹いた、大きな風の音で目が覚めた。…どのくらい眠ってしまったのだろう。

 切符は私が売っているのだから、誰か来ていたら声をかけられるはず。つまり、お客は誰も来ていないということになる。


 そこまで考えて、ふうと息をついたとき、誰かが駅舎内の椅子に座っていることに気がついた。思わず、ビクッとなる。すると、古くなり傷み始めた椅子が鈍い音をたてた。

 その音に気づき、椅子に座っている「誰か」がこっちを向いた。…ように見えた。逆光になり、顔がよく見えない。高…いや、中学生か。制服を着ている…男子生徒のようだ。


 でも、何故学生がここに?今日は、平日。学校がある日だ。そもそも、この村に中学生の男の子はいないはず。高校生なら一人いるが、今は、修学旅行の真っ最中。お土産物を貰う約束もしている。間違いない。ここに居るはずがない。

 …誰なんだ?声をかけるべきか否か考えていると、向こうから話しかけてきた。


 「こんにちは。」


 違和感…というより、何故か懐かしい、そんな声だった。毒気を抜かれたような、そんな気分になり、思わず固まってしまう。

 「あ、あの…こんにちは?」

 もう一度、挨拶されてしまった。

 「あ…ああ。こんにちは。」

 …なんというか、気まずい。そう、思っていると、向こうから話かけてきた。

 「それしても、今日は、本当に暖かいですね。」

 「え…ぇ、そうですね。」

 …何故、私は、年下に敬語を使っているんだ。

 「気持ち良さそうに、寝てましたもんね。」

 「…っ、なっ…!」

 声にならない。というか、からかわれている?

クスクスと、笑っている。実に楽しそうに。

 むっとなる。話題を変えてやる。

 「ところで、君はいくつだい?見たところ中学生のようだが。」

 「えぇ、そうですよ。中2、14才です。」

思った通りの年齢だった。だが、どこか声が寂しそうに聞こえた。

 「この村の子?」

 「…えぇ、まぁ。」

 歯切れが悪い。中2の子なんて、居ただろうか?

 「…学校は?今日は、平日なのだから、あるだろう?」

 ふっと息を飲む気配がした。今度は本当に声が沈んだ。

 「…行けてないんです。学校。」

 聞いてはいけないことだった。そう、思った。しかし、無視することもできない。何より、ここは駅。飛び込み…なんてことは、さけなければ。

 からかわれたことなんて、頭から消えていた。

 「話なら聞くよ。」

 「…」

返事がない。不躾だとは思ったが、聞かずにはいられなかった。

 「勉強が嫌になったとか?」

 「…」


 「…いじめか…?」


 その瞬間、堪えきれなかったかのように、何故かいきなり吹き出した。思いっきり爆笑される。

 「…っ、なんなんだ!?」

ひぃひぃ言いながら、ずっと笑っている。訳が分からない。

 「はぁ…はは。いや、ごめんごめん。」

 『ごめんごめん』の部分がまだ笑っている。しかも、いきなりため口か?

 心配したら、笑われて、馬鹿にされて…。もう、どうでも良くなってきたな。遠い目になる。気分は、菩薩だ。

 ガタンと、音がした。椅子から立ち上がったようだ。私はその様子を、静かな水面のような心地でみていた。


 「なんで分かんないかなぁ、よっちゃん。」


 そう、言いながらこちらに歩いてくる。

 「え…?」

 光が遮られ、これまでよく見えていなかった顔が、はっきりと分かる。


 「久しぶり、よっちゃん。」


 その顔を見たとき、無常に過ぎ去った懐かしい思い出たちが、走馬灯の様に駆け抜けた。


 「と…も…?朋和ともかずなのか…?」


 そこに現れたのは、記憶の中と全く変わらぬ幼なじみの姿だった。


 「あぁ。そうだよ。」


 そう言って、にっと笑った。


 そこに現れたのは、13年前に死んだ、唯一無二の親友の姿だった。

 Transparenzの佐倉梨琥です!!


 「旅立ち」本編2話目になります!!

 私の中で、当初予定していたより、少し長くなりそうで…。3月終わりまでに、一章は、絶対に書き上げれるよう、頑張ります…ので、気長にお付き合い下さい。

 よろしくお願いします。


 では、また次話で!!

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