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旅立ち  作者: 佐倉梨琥
第1章 駅と桜と彼岸花
2/7

春風、香る

 うららかな春の日、今日もまた、変わらぬ日常が訪れる。

 ガヤガヤと騒がしい駅で、私はいつもの場所に立つ。


 「おはようございます、義彦よしひこさん。」

 笑顔で声をかけてきたのは、高校2年生になった由美ゆみちゃん。少し、隈ができているように見えた。

 「おはよう、由美ちゃん。寝不足かい?」

 由美ちゃんは、困ったように笑った。

 「今日から、テストなんです。苦手科目が多いので、勉強してたら遅くなって…」

 テスト。懐かしい響きだ。嫌いだったことを思い出す。

 「テストか…。まぁ、頑張ってね。」

 「はい。…できるだけ。」

 その返事に、ふっと笑う。由美ちゃんらしい。

 「気をつけて。いってらっしゃい。」

 「行ってきます!」

 元気にホームへと、駆けていった。


 「おはよう。」

 次に声をかけてきたのは、1つ年上の慎吾しんごさんだ。

 「おはようございます、慎吾さん。暖かくなってきましたね。」

 そう言うと、慎吾さんは、気持ち良さそうに伸びをした。

 「ほんとにな。眠くてしょうがねぇや。仕事に行くのがめんどくさくなるよ。」

 いたずらっ子のように、にかっと笑うので、私も笑い返す。

 「ですね、ほんとに。気をつけて、いってらっしゃい。お仕事頑張ってくださいね。」

 にやりと笑うと、慎吾さんも笑いながら嫌そうな顔をつくった。

 「あ~あ。休みてぇな~。」

 手を振りながら、ホームへと、ゆっくり歩いていった。


 ここは、神山村かみやまむら。山に囲まれた、過疎化の進む小さな村で、人口が少ないため、ほとんどが知り合いだ。高校はもちろん、私が通っていた中学校は何年か前に廃校、小学校も今年から廃校となり、保育園が1つ残るのみとなった。

 まあ、学校といっても、私が通っていた当時から生徒は少なく、小・中学生が同じ校舎で勉強していたのだが。


 仕事を求めて村を出ていく人が多いが、慎吾さんのように、この村に残り、毎朝汽車に乗り、出勤する人も少なくはない。


 28歳になる私は、その駅で駅長のような仕事をしている。本来なら、こんな小さな村の駅に駅長など必要ないのだが、過疎化が進む村の駅では、お年寄りの事故が絶えなかったため、特別に作られた。

 当時、短期大学を卒業し、仕事を探していた私は、この楽そうな仕事に出会えた。…が、今は、後悔している。物凄く暇なのだ。誰もやりたがる人がいないのを不思議に思っていた私のことを不思議に思う。


 はぁ…と溜め息をついたとき、ベルがなった。汽車が来たのだ。私はマイクを持ち、ホームへと向かう。


『間もなく、汽車が到着します。危険ですので、乗客の皆様は、黄色い線より外側に出ないよう、お願いします。』


 そう、言いながら確認する。…よし、大丈夫だ。

 ホームに汽車が止まり、ドアが開くと、乗客が乗り出す。最後の一人が乗り終えると、ドアが閉まる。最後まで確認。


『発車いたします。いってらっしゃいませ。』


 言葉を添え、マイクの電源を切った。進み始めた汽車の中から手を振る小学生に、手を振り返す。


 …することが無くなった。次に汽車が来るのは、2時間後。何をしていようかと考えながら、駅舎へと戻った。 さて、何をしようか…。


 汽車が出ていったばかりのため、駅舎には当然誰もいない。つまり、誰かと話して時間を潰すことは、できない…。

 たしか、読みかけの本があったはず。そう思い、鞄の中を探る。…家に忘れたようだ。


 本日2度目のため息。とりあえず、銭湯の番台のような形の、切符売り場に座る。


 それにしても、本当に暖かい日だ。駅に植えられている桜の大木から、甘い桜の香りがほんのりと漂ってくるように感じられた。

 気持ちが良くなり、うとうとしてくる。


 ああ、駄目だ。寝ては…。


 そして、私は、眠りに落ちた。

Transparenzの佐倉梨琥です。


旅立ち、本編スタートです!!


初めて、小説というものを書くため、上手く表現できていない部分も有るかもしれませんが、今の私なりに精一杯書いていこうと思います。


おもしろいと思って頂ければ、嬉しいです。

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