願いとともに
晴れ渡った空。目の前で揺れているタンポポ。
『春だなぁ。』
そのつぶやきに応じる者はいない。
ずっと、誰かに呼ばれている。そんな気がしていた。ここ最近、その声は大きくはっきりと聞こえるようになった。
『そろそろ、時間切れってことかな。』
悲しみを孕んだその声は、頭上に広がる青空にすいこまれて消えた。
昼下がり。
いつからか。[いつもの散歩道]になった川沿いの土手道をのんびりと歩く。
暖かくて心地よい時間。
これまで、慌ただしく、騒がしく…賑やかに過ぎていっていた時間というものを、独りになってからは、緩やかに感じるようになった。
[いつもの場所]に着いた。
少し年老いてきた木のそばに、黄色いリボンで結ばれた花束が置かれている。
暖かい気持ち。穏やかな、優しい気持ち。
心が温かくなる。
空を見上げる。
1羽の鳥が、どこかへ飛んでいく。
目を閉じる。すると、声が聞こえる。呼んでいるのだ。
そろそろ、いかなければならない。
あの鳥のように。どこか遠くへ。
『なら、準備をしないとな。』
哀しいその言葉は、青空に消えた。
せめて、最後は…最期は、笑っていよう。彼らのためにも、自分のためにも。覚えていてほしい。でも、未来へ向かってほしい。わがままだろうか。
でも、きっと彼らは、簡単に叶えてくれる。
笑顔がこぼれる。
桜が一輪、咲いていた。
初めましての方も、そうでない方も、こんにちは!!Transparenzの佐倉梨琥です!!
かれこれ、4回目の投稿です。そして、初の小説投稿です!!
この話は、中学生の頃にノートに1話だけ、殴り書きのようなかたちで、書き上げていたものをもとにして、加筆修正をしたものです。
思い入れの有るものなので、気に入って頂ければ幸いです。
学業の方もあるので、不定期的になってしまうと思いますが、またお会いできることを願って。