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中
――その村は、古より飢饉の際には神へ人柱を捧げていた。
神が祀られている山奥の洞窟へ定められた贄が赴き、その中で自分以外の名前を巻物へと書き連ねる。
巻物へ記すことで、その名前の人物は神の贄から除外され、次の贄を求められるまで災厄からも逃れられるという。
いつからか贄を求められることが無くなり、そんな因習は永らく忘れられていた。
しかし、先日土砂崩れにより唯一の道路が封鎖されたことにより、幾人かの年寄りが口にした。
――贄を捧げれば、神が助けてくれるかもしれない。
何を馬鹿な、と若者は口々に叫んだが、古老達は聞く耳を持たなかった。
御伺い、とは名ばかりの祈祷により、半ば強制的に村で最年少の少女が贄へと選ばれた。
最年少、とはいえ永らく子に恵まれていなかった村の中での事。
十六歳になったばかりの少女は、拒否することすら許されなかった。
心を絶望に染めながら、少女は筆を手に取り。
――そこで、声を掛けられたのだ。