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放課後は、馨は今日もサッカーで忙しいみたいだ。
それに透も今日は部活があるらしい。夏休みの予定を決めないといけないとかで、文芸部に顔を出すと言っていた。
テスト期間を挟んだせいか、1人で帰るのは随分久し振りに思えた。
だけど、今日はちょうど良かった気がする。
「あら、おかえり」
帰宅すると、いつもより落ち着いた化粧をした和恵おばちゃんが迎えてくれた。
「ただいま。もう行くの?」
「今日はお店に行くのも遅くしてあるから、まだ余裕あるよ」
「分かった。とりあえず着替えてくるね」
もう二日酔いは大丈夫なんだな、と思いながら自室に入る。一応、黒いワンピースを選んで着替えた。この季節にはちょっと暑いかな。窓を閉めていた部屋では、瞬く間に汗が噴き出しそうだ。
鞄から携帯電話を取り出して見てみたけど、特にメールは届いてなかった。
私は姿見の前で服の乱れがないか確認してから、1階へと急いだ。
「陽菜もシックな服が似合うようになったわね」
全体を見回してから和恵おばちゃんは感慨深そうに言った。
「それ褒めてるの?」
「大人っぽくなったって言ってるの。きっと喜んでもらえるわよ」
「そうかな」
頷く和恵おばちゃんの顔は、とても優しかった。
私は再び太陽の下へ飛び出したけど、思いのほか暑さを感じなかった。