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月と太陽と  作者: くさき いつき
第2章 家族
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1

 眠りが浅いのか深いのかよく分からない。

 今日は目覚まし時計が鳴る前に起きた。壁にかかっているカレンダーを見て日付を確認する。見るまでもなく分かっていたことなのに。

 溜め息は蝉の鳴き声にかき消された。

 1階に下りると、今日も和恵おばちゃんが迎えてくれた。


「おはよう」


 でも、声はかすれていた。


「どうしたの? 酒焼け?」


「うーん、あんまり大きな声出さないで、響くから」


「変なお客さんにでも絡まれたの?」


 一応気を遣って声のトーンを低くする。それでも顔をしかめる。そんなに辛いなら無理せず寝てればいいのに、とは思ったけど口には出さなかった。


「いや、常連さんなんだけどさ、つい話が弾んじゃってねぇ」


 スナックのママをする和恵おばちゃんは、たまに二日酔いで死んでいる。


「今日、大丈夫なの?」


「うぅん、薬は飲んだから多分……」


「あんまり無理はしないでよ」


 とりあえず水を渡して、朝の身支度をすることにした。寝坊しなかったと言っても、朝の慌ただしさには変わりない。

 お母さんは……今日ももう出掛けてるよね。どんな時でも平常運転できる母親は逞しいと思う。

 私もさっさと出掛けることにしよう。

 立ち止まっていたら、また余計な心配をかけちゃう。

 和恵おばちゃんに小さな声で、いってきます、と言ったらひらひらと手を振ってくれた。もう声を出す元気も残ってないみたいだ。

 外に出ると、今日も強い日差しが降り注いでいた。

 じっとりと汗がにじむのを感じながら歩き出すと、ちょうど隣の家の玄関も開いた。


「おはよう」


 でも現れたのは透だけだった。


「おはよう。馨は?」


「今日から試合に向けて朝練だってさ」


 そうか、もう期末テストも終わったもんね。こんな暑い最中、走り回っているのかと思うと、本当にサッカーが好きなんだなって思う。


「試合の応援に行かないとね」


 笑顔を浮かべれば、透も微笑んでくれた。まるで暑さを感じさせない涼しげな笑顔だ。実際、汗1つかいている様子がない。


「馨の試合も気になるけど、まずは文化祭の出し物をどうにかしないとな」


「ああ、確かに。今日のHRで決められたらいいけど」


 自分のクラスの雰囲気では騒がしくなる一方で、まとめるのに一苦労しそうだ。


「うちのクラスじゃ何も意見出なさそうだな」


 特進は別の意味で大変そうだ。確かにあのクラスがお祭り騒ぎしている様子は想像できない。だけど、透の表情は明るく楽しそうに見えた。


「うん、今日もがんばるとしますか!」


 気合いを入れたら、突然どうしたの、と笑われてしまった。


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