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私の使命

天使みたいな少女は、後ろを振り返るときにはその場から消えていた。



「どうしたの?」

「っあ、ううん。なんでもないよ」

「本当? 由希(ゆき)って昔からドジなところがあるから心配だよ」

「酷くない!?」



僕の言葉に二人で笑う。


こんな些細なことがこれ以上になく嬉しくて、さっきまで少しの間だけだったけど相手をして不安を払拭してくれていた少女に感謝する。



「そういえば、なんであんなにもかかったの?」

「あ……。ご、ごめんね」

「いや、別にそれはいいんだけど。どうしたのかなあ……って」



ぶっちゃけあと10分待ってもこなかったらもう一度電話をかけるつもりだった。


会えたときから繋いでいる手に思わず力がこもり、それは小さな感情の動きとして伝わる。


……自然と足も止まってしまう。



「心配だった」



付き合って1ヶ月もまだ経っていなくて、しかも仕事が忙しくて中々遊びにも行けない状況の中でやっとの思いで取れた休みと約束。

そんなときに、待ち合わせ場所には1時間待ってもこない彼女――心配しない彼氏がいるのかと聞きたい。


正直、あの少女が声をかけてくれなかったら僕は彼女にどれだけの電話と不安を向けたかわからない。


確かに怪しさいっぱいで最初は疑っていたけど、本当はそこまで怪しくないことは話していてわかったし、外国人なら仕方ないのかなとも思った。

正直、外国人であそこまで日本語がペラペラなのはすごいと普通に感心するし。



「ご、ごめんっ。本当にごめんね! 由希がそこまで心配していただなんて……!!」

「っ。そう、なんだ」



針に刺されたような小さな痛みが胸を突いた。



僕は、彼女を待っていたのに――...




私たち天使の仕事は、人命救助。


意味は文字通りで、天使は人の運命を元あったはずの場所に軌道修正させて人生を送らせることで、大天使様から報酬をもらう。


大天使様は慈悲深く、失敗連続の私にも同じ手を差し伸べてくれる。まさに神様だ。



「大天使様の恩義に報いるためにも、失敗は許されない……!!」



たとえそれが、彼の人生を変えることになろうとも。



「そのためにも、〝仕事〟を完遂させなくちゃいけない」



ポケットから真っ白なハンカチを取り出し、「彼女」へ声をかけた。





「すみません。ハンカチ……落としましたよ?」

「っえ?」



突然背後からかけられた声に驚いて振り返ると、そこにはつい見惚れてしまうほどの可憐さを魅せる、自分よりも数十㌢は低そうな女の子が立っていた。


クマのぬいぐるみも顔負けなかわいらしさに、思わず先程言われたばかりの言葉を忘れてしまう。


すると、不自然に思ったのか女の子は手に持ったハンカチをさらに向けてきた。



「これ、違いましたか?」

「! あっと、……違う、かな?」



〝かな〟もなにも、今日の私のハンカチの色は赤だ。

赤いベースの色に周りを囲むように白い花があしらわれた目を引くデザインのもので、いま女の子が向けているハンカチは花嫁の衣装みたいな純白の色だ。私のものじゃない。


明らかに違うからといって無碍にすることもできず、もしかしたら私の近くに落ちていてただたんに間違えただけなのかもしれないという可能性が脳裏をかすめてしまった。


そのためつい笑顔を浮かべてしまう。



「ごめんね、ありがとう」

「いっ、いえ! 私の方こそすみませんでしたっ。……では、これは誰のもの――」


――と、辺りを見渡す女の子。

私もそれにならい、辺りを見渡してしまう。


隣に立つ由希は何故かやけに戸惑っているみたいで目を彷徨わせていた。

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