第5章 艦隊決戦 3
ドライブアウトして、太陽系外縁に到達したシルフィードのブリッジは、モニター越しに広がる連邦艦隊の劣勢を見て騒然としていた。
「なんなんだ! あのデカ物は!」
ブリッジに顔を出していたニックの叫びが、クルー全ての驚きを代弁をしていた。ディラング軍の超巨大戦艦の持つ威圧感は圧倒的だった。
予期せぬ敵艦隊の遭遇から、命からがら逃げ延びたシルフィードだったが、マクレガーたちの懸命の修理により、どうにかここまで戻ることが出来たのである。
「あの時の反応とぴたり一致しますね」
騒然とするブリッジの中で、ひとり冷静に優希が分析する。
暗黒のエーゲ海に逃げ込むべく敢行した、最後のハイパードライブ突入直前に感知した大質量物体が、恐らくあの超巨大戦艦だったのだろう。
ただ予想とはるかに違ったのが、その超巨大戦艦のもたらす影響力である。
「出てきた相手が悪すぎる」
連邦軍にしてみたら、ドライブアウトしてきたのが戦艦百隻であった方が、まだ戦い易かったのではないだろうか? その禍々しい威圧感に圧倒され萎縮してしまい、実力以下の力しか出せていないのだ。反対に、絶対的な象徴として繰り出したディラング側は、物量的劣勢を跳ねのけるだけの心理的優位に立っていた。
「このままではいくら連邦の方が物量的に勝っているといっても、勢いのあるディラング側に圧倒されてしまうぞ」
優希の懸念に同調し、パイロットのシンも危惧する。いや既にそれは危惧ではなく現実のものになっていた。
「大まかだけど、両艦隊の戦力比が出たわ」
CICに詰めていた涼子がデーターを持ってきた。
「開戦当初は連邦のディラングの戦力差は、およそ倍の開きがあったみたい。ところがあの大型戦艦の出現以降、連邦とディラングの損耗率が桁違いに変わってしまい、今では拮抗寸前にまで差が詰まってきているわ」
「と、言うことは……」
ミサキが尋ねる。
「このまま戦闘を続けれていばシン中尉の言う通り、さほど待つまでもなく戦力比は逆転。そうなれば連邦に勝ち目はなくなるわ」
持っていたデーターを見せて冷徹に答える。
「そんな……」
「でも、これは事実よ」
スクリーンに映る超巨大戦艦の攻撃力がそれを肯定していた。
要塞といってもいいほど巨大な艦に、ハリネズミのように突き出した無数の砲門。そこから繰り出される大出力のブラスターの網は連邦艦隊を寄せ付けず、その膨大なエネルギーで近寄る艦を確実に屠っていた。
そうしている間にもまた一隻、連邦の駆逐艦が宇宙の塵と化してしまった。
「で、どうするね?」
同じくブリッジにいたマクレガーが尋ねる。
「このままのこのこ参戦していったとしても、さっきの駆逐艦と同じ運命じゃ。クルスト提督はそんなことを望んでいないじゃろう」
もっともな答えだ。加勢というにはあまりにも非力なシルフィードだが、身を挺して自分たちを逃がしてくれたクルスト提督のためにも、絶対に勝って報いなければいけない。
でも、どうやって?
「シルフィードの火力は、巡洋艦としてそれ程充実しているわけじゃないわ」
反芻するようにミサキが呟く。
「本来ホーネット級巡洋艦は、持ち前の機動性で敵艦隊をかく乱するために開発されたからね」
涼子が後を引き継いだ。
「砲雷撃戦のようなノーガードの殴り合いには向いておらん」
マクレガーが言い切った。
確かにその通りかもしれない。ではどうすればいい? 持ち味の機動力を活かしつつ、効果的な一撃を与える方法とは。難しい命題に優希を含めブリッジにいる全員が黙り込んだ。
機動力を生かして敵の懐に入り込むのは可能だろう。どが、その後をどうする?
主砲の一斉射撃。いや、ダメだ。シルフィードの主砲では、フルチャージでもあの分厚い装甲板を貫くことなど到底不可能、せいぜい牽制程度の威力しか期待できない。もっと強力な火力。例えば稼働中のエンジンを直接ぶつけるくらいの。
……
…………
………………
!!!
まてよ。
エンジンを直接ぶつけるのは突飛だが、エンジンの全エネルギーを直接ビームとして撃ち込むのはどうだろうか? オメガ融合エンジンの強力無比な出力をビームに転換出来れば、相手の装甲板を貫くことは十二分に可能だろう。
しかしそんな強力なエネルギーの放出は、主砲の砲身がもたないし、そもそもコンバーターも動力回路も通した途端に融解してしまう。水鉄砲でプールの水を一気にぶつけるのが無理なのと同じで、砲如きで撃ち出すことなど根本的に不可能なのだ。
大出力なエネルギーを放出するには、それに見合ったもっと大きな砲身が要る。せめて、フライトデッキくらいの……
フライトデッキ!!!!
「出来ます! 必殺の攻撃が、シルフィードで!」
思わず優希は叫んでいた。
短いけど、キリが良いので




