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第4章 慟哭からの離脱 3

 ぷしゅ。

 第二ブリッジのリフトドアが開き、ひとりの女性士官が入ってきた。腰まで届きそうな漆黒の長い髪、モデルを思わせる長身。清楚で可憐ないでたちは、ミルキー・エンジェルの顔といっても差し支えない。

 永井ミサキはブリッジに戻ってきた。

「ミサキ」

「ミサキ姉ぇ」

「リーダー」

 みんなの視線が一斉に集まる。誰もが彼女の復活を望んでいた。この窮地にシルフィードを指揮することが出来るのは、リーダーであるミサキしかいないのだと。

 そして……若干時間はかかったものの、ミサキはみんなの期待を裏切らずブリッジに戻ってきた。

 ミサキは凛とした佇まいで一歩一歩踏みしめるように奥に入ると、躊躇うことなくブリッジ中央に設えられたキャプテンシートに腰掛けた。

 背筋を伸ばしながら周りを見回した後、一度大きく深呼吸をすると、意を決したようにゆっくりと口を開いた。

「さっきは見苦しいところを見せてしまってごめんなさい。迷惑をかけましたが、もう大丈夫です。艦長職の重責はわたしには力不足だと思うけれど、精一杯頑張ります。だからみんなも、未熟なわたしを手伝ってください」

 一言断る。

 未熟とは宣言したが、逃げたりはしない。正面から受け止めるから、足りないところをフォローしてくれと頭を下げる。

 真摯で誠実な「お願い」を、いったい誰が断るというのだ?

「もちろん」

 優希が即答して快諾の口火を切る。

「力いっぱいサポートする」

「一緒に頑張りましょう」

「任せておけ!」

 間髪を入れることなく、クルーたちから次々に快諾の声がかかる。そのひとつひとつに「ありがとう」と返事をすると、毅然とした口調で号令をかけた。

「これより、地球圏に向けて航行準備を行います! まずはマクレガー少佐を指揮官に、エンジンの修理と点検を最優先課題とします。残りのメンバーは艦の一斉点検をお願い。地球圏到達後は連邦艦隊に合流し、参戦することになると思います。激しい戦いが予想されるので、現時点で出来る万全の整備と修理をお願いします」

 再びクルーに向かい、深々と頭を下げる。

 自分が引っ張るのではない、みんなを信じて動きやすい環境を作るのがわたしの仕事。優希の一言がミサキを完全に甦らせたのだった。

「心配するな。最高の状態にチューンしてやる!」

「艦長はそこで待っていて」

「大船……と言っても巡洋艦ですけど、大丈夫ですよ」

 マクレガーを筆頭に、クルー全員が機関室やそれぞれの持ち場に向かって駆け下りていく。たった一隻の巡洋艦が合流したところで、なんの戦力の足しになる? 数字だけを見ればその通りかも知れない。しかし、連邦軍のアイドルたちの存在は、数字やスペックでは表わすことができないほどに大きいのだ。


 ミサキがお願いしてから僅か3時間でシルフィードの修理は完了した。機関士のマクレガーたちやパイロットのニックたち、それと僅かな撮影スタッフ以外は全て若い女性、しかも腰かけ軍人といっても良いレベルだと思っていたミルキー・エンジェルのメンバーたちだったのに、驚くほどの手際の良さでメンテナンスを完了させていったのだった。

「うそっ? ホントに、もう終わったの?」

 頑張るとはいっても、所詮は素人の集まり。早くて半日、下手すりゃ1日近くかかると思っていただけに、予想外の早さにミサキは目を白黒させる。

「そりゃ、頑張ったモン」

 クルーを代表して、エヘンとばかりに胸を張りながら優希が答える。

「でも、3時間よ? 半日も経っていないのよ?」

 いくらなんでも早すぎない? という言葉をマクレガーが「それはな」と言って遮った。

「要は、適材適所じゃよ」

 これはミサキのあずかり知らぬことなのだが、聞けばメンバーの多くは貴重なオフや余暇時間を利用して、資格取得に意欲を示していたのである。ただそれら資格を軍に報告せず非公式のままだったので、取得したスキルと職務にミスマッチが生じて、その実力を発揮していなかったのだった。

「それぞれの得意な個所に当たってもらったのと、少々の頑張りがあれば、これくらいのことは出来るということじゃ」

 もちろん、エンジンの整備も万全じゃよ。最後にきっちり付け加える。

「だから、ほら」

 優希のかけ声を合図に、第2ブリッジの機器類に一斉に灯が点る。この瞬間、怯えて隅で小さく震えていた子猫は、手負いの獣へとクラスチェンジを果たしたのだ。

「全開航行だろうが連続ハイパードライブだろうが、問題なく対応できるよ」

 パイロットシートに腰掛けると、背後のミサキに向かって拳を突き立てる。

「了解」

 了承したとばかりにミサキが拳で返すと、涼子が、マクレガーが、ブリッジにいる全員が拳をたてて呼応した。

 準備は万端だと。

 ならば、言うことは一つしかない。

「これより、地球圏に向けて航行を開始します。マクレガー少佐、エンジン始動。沖田臨時准尉、ハイパードライブの準備をよろしく」

「承知した」「了解!」

 マクレガーと優希は同時に復唱し、シルフィードをハイパードライブさせた。一路地球圏に向けて。


配分を間違えました。

短いッスね~


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