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アボガド売りの少年  作者: あまやま 想
本編1【赴任から最初の一年間】
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独立記念日

 任地へ帰ると、九月一五日の独立記念日の行進で町中が盛り上がっていた。このパレードは子ども達が総出で参加するので、九月に入ると授業は全く進まなくなる。ようやく、教科書が届いたと言うのに、これを今年は使わずに来年使う、と校長はパレードの後の式典の後に言っていた。


 一八二一年九月一五日にスペインから独立したサルドノにとって、九月一五日は特別な意味を持つ。中米列島や南米大陸の中でも、特に早くに独立を達成したサルドノは独立にたいして大きな誇りを持っている。


 独立記念日のパレードに向けて、九月一日から児童の中から選抜されたパレード隊は授業を抜け出して練習する。中学校の音楽の先生がわざわざ来て指導するほどの手の入れようである。ちなみにこの町では小学校が午前中にあって、中学校は夕方から授業を行うので、中学校の先生は授業をさぼっている訳ではない。


 残された子ども達や先生は国家の練習やパレードの飾り物を作る作業をするため、授業がほとんど進まない。こんな状況で算数の授業をやろうともいえないので、カナも一緒に国家の練習やパレードの飾り物を作っていた。本当はこんなことをしている場合ではないのだが、まだ赴任したばかりであまり強く言えないと言うのが本音だ。


 そんな状況を見かねて、中には算数の授業を行ってくれる先生もいた。先生が一方的に授業を進めて、児童はただ黒板を書き写すだけの授業で言いたいことは山ほどあったが、カナはそれをグッとこらえて、いい所だけをひたすらほめる。とにかく、まずは受け入れられるように人間関係作りに腐心する。


 そして、迎えた九月一五日、どんな山奥の小さな町でもこの日は町中が盛り上がる。子ども達のパレード隊も盛り上がる。まずは選抜楽器隊が先導して、パレード隊を盛り上げる。それから、選抜からもれた児童が一年生から順番に学年ごとの隊列を作って、町中を練り歩く。


 一通り、街中を練り空いた後、学校へ戻ってきた児童たちを町中の大人たちが待ち構える。それから、狭い校庭にて記念式典が開かれる。市長や教育委員長、校長の挨拶、子ども達の出し物を披露していく。子どもの時から腰を激しくふるダンスを踊る子どもたちを見て、カナは頭を殴られるような衝撃を受けた。


 まあ、そうは言っても、独立記念日が終わってからも、九月はサルドノにとっては特別な月であり、毎朝全校集会がある。毎日、全校集会で一時間目がつぶれる。確かに独立を勝ち取ったことを喜び、独立のために犠牲になった人々のことを偲ぶことも大切であるが…。一ヶ月も、毎日国家を歌い、校長先生が独立に関する偉人の話をすることをする必要があるのかと疑問を思った。


 この国において、フランシスコ・モラサン将軍は特別な存在である。サルドノのピーラ紙幣にも肖像画が使われている。校長の講話にもフランシスコ・モラサンはよく出て来る。アメリカの初代大統領ワシントンのような方と言えば分かるだろう。

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