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アボガド売りの少年  作者: あまやま 想
18年後の世界
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53/55

創設百周年

 そして、現代に至る訳である。別にいきなり本題に入ってもよかったのだが…。


 何しろ、あれから十八年も経っていて、ボランティア集団協力隊の青年隊員として行っていた頃とはすっかり別世界になってしまった。私自身、四〇歳を過ぎて、もう青年隊員ではなくシニアボランティアでなくては行けない歳になった。


 結婚して、名字も金村から糸島になってしまったし…。これに加えて、急に夫やら娘やら息子やらが出てきたら訳が分からなくなる。


 それ以前に、いつ日本へ帰ってきたのか?…となるだろう。確か、海外で骨を埋める覚悟で行ったはずだろう? それがいつの間にか日本へ戻ってきて、ちゃっかり結婚して、家庭を築いてやがる…って感じだろう。


 私自身がこれまでの十八年分の日記を整理していて、そう思うのだ。これを読んでいる第三者なら、なおさらそのように思われるだろう。


 まあ、何も引っ越しだけが物思いにふける理由ではない。今年、ボランティア集団協力隊の前身組織である青年海外協力隊が、創設されてからちょうど百年の節目の年と言う事で、全国各地で記念イベントが開かれていた。


 その一環で、全国の旧・青年海外協力隊およびボランティア集団協力隊経験者の大懇親会が東京で開催された。


 また、これを機に全国各地にいる約六万人の経験者が何らかの形にて、途上国で現地の方と寝食を共にした体験談を語り、ボランティア集団協力隊をより身近に感じてもらおうと言う企画が実施される事となった。


 会社に勤める者は会社で、教員は子どもに、どこにも所属していない主婦や学生は地域にて体験談を語る事と決まった。そこでカナは近辺に経験者が他におらず、娘や息子の通う学校で海外経験の語り部を探していた事から、子どもの通う学校で体験談を話す事となった。


 それにしても、最近は内向き思考がますます進んでしまい、日本さえよければ、他の国々のことなんてどうでもいいと言う人々がほとんどになってしまった。テレビのワイドショーに出ている専門家気取りの人が「心の鎖国化」が問題になっていると言っていた。珍しく言い得ているとカナは思った。


 日本はもともと石油などの天然資源がなく、人だけが財産の国である。人々に高い教育を行い、優秀な人材を育て上げ、勤勉で真面目な国民性で高い品質の工業製品やきめの細かいサービスを世界中に輸出して栄えてきた国である。


 何も資源がないので、石油や鉄鉱石などの天然資源や様々な食料を輸入して足りない物を補う。そのような中で、我々日本人は生かされていると言うのに、最近の若者は世界のことに全く関心がない。根拠もなく、日本は日本だけでやっていけると、信じて疑わない人も多い。


 そのような状態であるから、ボランティア集団協力隊の青年隊員及びシニアボランティアへの参加希望者も、募集定数の半分も満たない有様である。かつての国際協力機構が青年海外協力隊事業をしていた頃は、希望者が殺到して、なかなか青年海外協力隊に慣れなかった時代もあったと言うのに…。


 カナは自分のような小柄な女性でも、発展途上国から必要とされている事があることを一番に子ども達に伝えたかった。


 それと、日本は世界の国々と仲良くやっていかないと、テレビも、携帯も、車も、プレイステーションなどのゲーム機も…何もかもが使えなくなる事を、小学四年生に分かりやすく話す事にした。


 伊織の担任とも何回か打ち合わせしたが、大学卒業してすぐに正規採用された世間知らずの上、親方日の丸に守られていれば安泰と未だに信じて疑わない四〇代の女性である。


 まあ、こんな人達しか教育界にいないというなら、日本全体が内向きになるもの至極納得の話だ。さりげなく、ボランティア集団協力隊の在職参加を進めてみたが、


「私には家庭もあるし、仕事もあるから無理!」


とすげなく断られてしまった。在職参加制度を使えば、二年間の派遣期間が終わった後も元の職場に戻れるし、家族随伴もできると言う夢のような制度なのだが…。


 興味のない人にいくら話した所で、猫に小判なので無理に進める必要もない。


 本当は教育者が実際に経験した事を、直接子ども達に語るのが一番なのだが…。日本の教育界も世も末である。だからこそ、旧・青年海外協力隊およびボランティア集団協力隊の経験者は伝えなければいけない。


 それが底のないバケツで水を汲むような不毛な作業であったとしても…。底のないバケツについた一滴か二滴ほどのしずくだけが唯一の希望だ。


 子ども達の前で話している時、子どもたちの目はキラキラと輝いていた。この中から一人でもいいから、海外に興味を持ってくれればそれでいい。そうすれば、まだ日本も捨てたものではない。

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