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アボガド売りの少年  作者: あまやま 想
日本帰国後
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時間は待ってくれない

 とうとう、年が明けてしまった。時間は待ってくれない…。まさか、半年も就職が決まらないとは思ってもいなかった。これが日本の置かれている現実である。もちろん、金村カナの至らない所が多い事もあるのも、なかなか仕事の決まらない一因であるが…。それを差し引いても、努力が報われない。


 一方、中国や韓国、東南アジアは発展著しく、好景気に沸いている。かつて、日本にもそんな時代があったはずなのに…。もう、日本にはそんな時代は二度とやって来ないに違いない。


 昭和三〇年代から昭和四〇年代の日本は、とても活気に満ちていたらしい。カナの祖父母の時代はとても恵まれた時代であったと、祖父母がよく話してくれた。頑張れば、かならず成果が出せた時代。今はいくら頑張っても現状維持が精一杯である。ましてや、頑張ってもマイナス成績と言う時代だ。


 父母の時代にはバブルがはじけてしまい、日本は終わりなき失われる時代に突入ししてしまった。かつて、何度か失われる時代から抜け出せるチャンスもあったらしいが、度重なる失政に世界同時不景気などが重なって、今に至っているらしい…。


 終わらない不景気に、少子高齢化という現実が重くのしかかる。この国に明るい未来があるかどうかは、本当に疑わしい…。勝ち馬に乗るべきか、否か、迷わずにはいられなかった。


 それからしばらくすると、ある会社の書類審査に通った。それはスペイン語力が買われた仕事である。中南米でスペイン語を使って交渉をまとめたり、商談をまとめたりするものだ。


 もし、ここで就職が決まれば、もう日本で生活することもなくなるかもしれない。それこそ、中南米で骨を埋めるぐらいの覚悟が求められる。実際に面接の実施要項にもそのことが触れてあった。


 ちょっと、国際協力や国際援助の分野から離れるが、世界を股にかけて働けることは大きな魅力である。こんなチャンスはまたとないだろう。


 私はこれだと思った。今、このチャンスをつかめなければ、もう後がないとさえ思った。私はもう一度だけ、親と真剣に未来のことを話すことにした。あの日、お互いにすれ違ってから、仕事の話はおろか、家にいてもお互いに話すことはほとんどなかった。


 一度ケンカしたぐらいで、お互い家にいながら全く言葉を交わしていないなんて、あまりにも不自然過ぎる。今こそ、お互いに言葉を交わしておかないといけない。もし、このまま海外で一生続けるような仕事をする事が決まれば、このまま言葉を交わす事なく、家を出て行く事にもなりかねない。


 よし、これまでの非礼を謝って、親と腹を割って話そう!

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