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アボガド売りの少年  作者: あまやま 想
日本帰国後
48/55

不安な日々…

 気がつくと日本に帰ってから四ヶ月が過ぎていた。六月に帰ったときは梅雨にも入っていなかったのに…。いつの間にか、夏が過ぎている。この年は夏の訪れが遅く、梅雨が七月末まで続いたから、なおさら夏が短く感じられた。


 九月は夏がこれまでの遅れを取り戻そうとしているのか、残暑がいつになく厳しく感じられた。


 十月になるとやっと秋めいてきた。ここ来て、ようやくあせりが生まれてきた。この時点で、もう三〇社以上に応募していたが、みんな書類審査ではじかれる。たまに書類審査を通過しても、面接ではじかれる。もう、誰も私のことを必要としてくれていないのではないか…そんなことさえ考えた。


 気を取り直して、まずスペイン語検定が十月末にあるので、それに向けて必死になって勉強した。ここで検定に落ちるようなことがあれば、これまでサルドノで過ごした二年間が否定されてしまう。


 私が受けるのは三級と四級である。スペイン語検定では連続した二つの級を同日に受けることが認められている。日常会話に困らないとされているのが四級である。三級だとビジネス会話に困らないと定義されている。


 二年間、サルドノで暮らしてきたのだから、最低でも四級は合格しないといけない。でも、ここはダブル合格を目指すぐらいの気持ちがないと未来も切り開けないだろう。


 それと並行して、就職活動も引き続き行っていた。しかし、多くは相変わらず、書類審査で落とされる。まれに面接まで行っても、面接で落とされてしまう。登ろうとしている山は本当に険しい。ある程度のことは覚悟していたつもりだが、まさか、これほどのものとは思ってもいなかった。


 すでに五〇社以上書類を出しているが、書類審査を通ったのはわずか三件だけだった。その面接に全てをかけてみたが、三件とも全滅と言う実に厳しい結果だけが残った。もう、この山に登るのを止めようとも思ったが、そのたびに父と母との嫌なやり取りを思い出すのであった。


 ここで妥協したら、父と母に笑われるし、二人のようになってしまう。私は二人のようになりたくない。


 一一月に入った。スペイン語検定はまずまずであった。受かっているかどうかを別にすれば、とりあえずやれるだけのことはやれたと思う。まず、やれるだけのことはやる。そうすれば、結果は後から付いてくる。結果がでないうちは、まだやらないといけないことをやれていないだけのことである。私は自分にそう言い聞かせた。


 ふと、サルドノでの日々がとても懐かしく思い出される。あの日々がかけがえのない貴重なものだったことに、もっと早く気付いていればよかった。そうすれば、私はもっとたくさんのことをやれたのではないか…。


 本当はもっとできたのに、自分で勝手に限界を決めていただけかもしれない。過去に「もし…」はないが、もし、もう一度、ボランティア集団活動の二年間がやり直せたら、もっと真剣に一生懸命、真摯に活動を取り組んでいただろう。


 そうすれば、今がもっと違ったものになったかもしれない。まあ、過去は変えられないので、せめて今と未来をよりよいものに変えていけるように努力していくしかない。そんなことを東京へ向かう夜行バスの中で考えた。この先、私はどうなるのだろうか…。ただ、不安で仕方なかった…。


 十二月末、スペイン語検定の結果が届いた。運良く三級も四級も合格していた。三級以上は二次試験もあるので、一次試験合格後に面接試験の試験対策もした。


 とにかく、三級に合格したことで、未来が大きく開けたことは確かである。スペイン語検定の四級は英検の四級とほぼ同じ扱いだが、スペイン語検定三級は英検二級とほぼ同じ扱いとなるので、全く扱いが異なる。

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