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アボガド売りの少年  作者: あまやま 想
本編2【後半の1年間】
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語学フォローアップ研修と国外旅行

 また、十二月五日から一週間はスペイン語のフォローアップ研修が行われた。これは希望制だったので、私は喜んで参加した。サルドノに来てから一年半…。日々の生活や仕事で何とかスペイン語を使えるようになったが、知っている単語や文法でなんとかやりくりしている現状がある。


 とてもじゃないが、文法やスマートな言い回しにはほど遠い。ここでもう一度、スペイン語を正しく学び直すことはとても重要であり、大切なことである。そうすることが今後より円滑に仕事を進めていく上で大きなプラスとなる。


 一週間の間に文法や語法を正しく学び直したり、プレゼンテーションや討論の仕方を教えてもらったりしたおかげで、今まで何となく使っていたスペイン語が少しだけマシになったような気がした。


 デング熱の後遺症のせいか、体がまだ疲れやすく、研修が終わると対して予習や復習もできないまま寝てしまったのが、唯一の心残りであったが…。それでも参加してよかった。


 さらにこの一週間で算数隊員以外の隊員と接することができたので、他業種のことを知るよい機会ともなった。スペイン語で他業種のことを聞くと、とても勉強になった。また、うまくいけば、本業にも応用できると感じた。


 それから一週間ほど任地へ帰って、家の大掃除や年末年始にずっと家を空けることになることを大家さんであるベレン先生に告げた。それからブランカさんの所へ行ってからフォローアップ研修のことを話した。


「カナ、フォローアップ研修に出てよかったね。スペイン語がまた一段と上達しているよ。それに、この一年間、スペイン語の練習を頑張った成果も出てと思う」


 ブランカさんは本当にほめ上手である。ブランカさんの所へ行くと失った自信が取り戻されるから、本当に不思議である。私もこんな人になりたいなあと、いつも思った。


 他にも同僚の先生達の家に年末年始の挨拶をしに行くなどして過ごした。これでプライベート面の締めくくりをすることができた。


 十二月末はこれまでの一年半の頑張りに対して、自分へのごほうびを用意することにした。思い切って、メヒコへ任国外旅行に行くことにした。これは隊員の同期の里子と前から計画していたものである。歳が同じで一番気兼ねせずにいられる彼女と一緒に旅行へ行こうと話していたのだ。


 そうは言ったものの、計画を立ててくれたのはほとんど里子である。私がデング熱で倒れている間に進めてくれたのだ。私がしたことと言えば、飛行機の手配をしたぐらいである。


 メヒコはサルドノと違って、とても発展している国である。中南米一の経済規模は伊達ではない。サルドノと違って、道路はきちんと舗装されているし、街には超高層ビルが数え切れないほどあった。人々の生活の様子もほとんど先進国と変わらない。


 今から十年ほど前までは旧・国際協力事業団が協力隊を派遣していたが、国としての事業が民間移管された際に、メヒコは隊員派遣対象国から外された。もう、あと何年かすれば、先進国入り確実と言われている。メヒコシティーでは万博開催に向けて、街がとても活気づいていた。


 この雰囲気は、成熟しきった日本にも、援助慣れのため自発的発展の望めないサルドノ、どちらにもないものだ。


 それでいて、ティオティワカン遺跡やオアハカの古い町並みなど、世界遺産がたくさんある。マヤ文明からスペイン植民地時代、そして現代の近代的な町並みがうまく調和している。観光資源も多く、観光産業もとても発展している。また、経済成長もとても著しい。


 その証拠にアメリカやヨーロッパからたくさんの観光客が来ていた。里子とカナは実際にティオティワカン遺跡でドイツ人の家族と会っている。里子が大学時代にドイツ語を習っていたため、ドイツ語を交えながら、スペイン語で話していた。カナはドイツ語なんて分からないので、ただ頷く事しかできかった。


 観光資源はナコク遺跡以外に特になく、世界の経済成長から完全に見放され、国際援助でやっと成り立っているのサルドノとはとても比べ物にならない。同じ地球で暮らしているのに、どうしてこのような差が生まれるのだろうか。バスの車窓には大きなサボテンがずっと写っている。それをぼんやり眺めながら、私はメヒコとサルドノの違いについて考えていた。

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