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アボガド売りの少年  作者: あまやま 想
本編2【後半の1年間】
34/55

不完全燃焼をぶつけろ!

ようやくデング熱から復活したカナは、病気で動けなかった分を取り戻そうと精力的に動く。

 十二月一日、この一年間の総括として、算数隊員の会合が首都・アプラヒク郊外のサルドノ国立教育研修センターで行われた。このとき、今まで全員がやっていた一月の模擬授業研修は一年目の隊員だけが行うこととなる。


 そこで翌年の一月に行われる後輩隊員の模擬授業研修のために、私達の代の中から二人が模擬授業を行うことになった。そこでこれまでの不完全燃焼をぶつけるべく、私が模擬授業を行うことにした。もちろん、テーマは日々の活動の中心に据えている「割り算」である。もう一人は同期の大ベテランである本山茂吉さんが「講習会の進め方」についての説明を行っていた。


 また、この一年間の総括として、様々な反省が出た。特にこの年に多くの隊員が任地で行った「算数オリンピック」について注目が集まった。また、任地での研修会をどのように計画して、どのように実施するとうまくいくのかについて、様々な意見が出た。


 藤木文生君も健軍圭子もそれぞれの任地で行った算数オリンピックについて、得意気に語っていた。何より、今、小学校算数教育の隊員で最も熱い話題である。後輩隊員たちもやりたいと思っている方が多い。実際にこれからの展望で算数オリンピックの実施を考えているとほぼ全員が答えた。


 実のところ、カナは先発方式の算数オリンピックではなくて、全員参加型の算数オリンピックはできないものかと考えていた。確かに先発方式だとできる児童のやる気を高める効果はあるが、一方で選抜されなかった子や配慮を擁する子へのやる気を下げてしまう副作用もあるように思われた。


 ただ、全員参加させるとしたら、時間が足りないんだよな…。どうしたら、いいものか? だったら、個人ではなくて、団体で競う形にするか…。しかし、算数で団体で競うのは、どんな方法があるだろうか…。悩みは尽きない。


 何回も会合に参加していくうちに隊員の関心の多くは「算数オリンピック」と「研修会」に集まっていることに気付いた。本来、もっと大切にされないといけない「日々の活動」がちょっとおろそかにされているのではないかと少し不安になった。


 やはり、算数オリンピックにしても、研修会とか勉強会にしても、根底にあるのは日々の積み重ねである。日々の活動の話をそっちのけで、イベント事ばかりに気を奪われるのは功名に焦っているとしか思えない。それはそれで危険な事である。サルドノ人の国民性から言って、見てくれのよさで物事が進んで、実際は何一つとして身になるものは残らなかったと言う事はごまんとある。


 カナはさすがに心配だったので、そのようなことも後輩隊員に対して、事例報告の際に話しておいた。しかし、全体としてあまりいい反応ではないようだ。


 何より遠山アドバイザーが首を振っていた事が心配である。遠山さんは力のある方でそれなりに実績も残されているが、自分の手柄をいかに立てるかしか考えてない節がある。確かにそれでうまくいった事もたくさんあるとは思うが、それだけにあらぬ恨みもたくさん買っていると聞く。春川事務員は頷いて話を聞いておられたので、この方は分かっておられると思った。


 まあ、事務所関係者で一人でも理解して下さる方がいらっしゃるなら、大丈夫だろう。

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