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アボガド売りの少年  作者: あまやま 想
本編2【後半の1年間】
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サマカタクの算数オリンピック

 一〇月二〇日、私はサマカタクで行われた算数オリンピックの手伝いで、サマカタクへ来ていたサマカタクには同期の圭子がおり、圭子が


「算数が得意な子だけでなく、苦手な子も楽しめる全員参加型の算数オリンピックがやりたい」


と言っていたので、手伝うことにした。私自身、全員参加型の算数オリンピックに興味があったのだ。私が住んでいるサンホセはサルドノ西部にあり、サマカタクはサルドノ東部にあるため、バスで十五時間かけて移動した。十五時間も連続で移動はできないので、それこそ前日からの大移動である。


 しかも直行便がないので、まずはサンホセから国道に出るまでの五キロほどはハイエースのマイクロバスに乗る。早朝早起きしてから、眠気まなこをこすりながら、バスでうとうとしながらも眠らないようにしながら…。それから国道で大きなハイデガーバスに乗り換えてサルドノ第二の都市オルデナプスまでバスで三時間揺られる。


 オルデナプスでバスを待つために一時間ほどバスターミナルで待つ。そう言えば一年ほど前、サルドノに来てから任地へ赴任した直後の頃、藤木君と久々に再会した時に思わず泣いてしまったな…。あれから、もう一年が経つのか…。あれから一年、今では一人でバスに乗り継いで、どこにでもいくことができる。それに何かあれば現地の人に負けないぐらいのスペイン語でまくしたてることができる。


 ああ、私、曲がりなりにも成長したな…。そう思いながら、次のバスの時間になったので、首都・アプラヒク行きのバスに乗る。ここからバスで揺られることさらに五時間かかる。アプラヒクに着く頃にはもう夕暮れである。この日は集団事務所横の宿泊所で一晩休んで次の日に備える。


 この国には空港が三つしかないため、国内の移動手段はバスに限られる。協力隊員は旧・国際協力事業団時代にサルドノで起きた大規模な自動車事故により、三〇年ほど前から禁止されているのだ。


 次の日、また朝早く起きてから、今度はサマカタク行きのバスに乗る。また、五時間ほどバスで揺られる。いつもと違ってサルドノの東部へ向かうバスに乗るのは初めてなので、何だか新鮮である。外の景色も西部と違って、日本の水田のような景色が広がっていてびっくりした。


 東部は西部と違って、低地が広がっていて雨が多いらしい。山がちで雨が少なく空気が乾燥している西部とは全く別世界であった。東部と違って、じめじめとしていて蒸し暑い。


 サマカタクの算数オリンピックは大盛況であった。やはり、クラスから選ばれた人しか出られない大会よりも、全員が参加できる大会がいい。ニウロクとサマカタクのそれぞれの算数オリンピックを比べて思う。


 サンホセに戻ってから、サマカタクの算数オリンピックについて説明した。また、これまでの日本文化紹介でよく使われている日本文化紹介ビデオをサンホセの教員に見せた。これもまた大好評であった。


 こうやって、様々な手を使って、現地の教員の士気を盛り上げて、あと八ヶ月間できる限りのことを精一杯頑張っていこうと毎日のように考える。泣いても笑っても、あと八ヶ月である。もう、ここまで来たら最後まで突っ走るしかない。

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