外部評価システムの導入
また、前回のお祭り騒ぎで終わった反省を踏まえて、常に藤木君や遠山アドバイザーと連携して、外部から客観的に評価してもらうシステムを導入した。
これはアリソス現地コーディネーターが作ったもので、サルドノの人が評価して欲しいポイントや、ボランティア集団事務所がサルドノの教員に身に付いて欲しい能力などを相対的に評価できるように作られた尺度である。これを用いることで常に適度な緊張感を教員が持てるように工夫されている。
これを評価するのはコネや縁故関係による雇用関係にあることが多い勤務校の校長や市町村の教育委員長でも、そこに派遣されている協力隊でもない。勤務校の校長と教育委員長は評価観点を知らない状態で項目にチェックをするだけである。協力隊も同じものに評価観点を知らない状態でチェックをする。
ボランティア集団事務所のアリソス現地コーディネーターと遠山アドバイザーがそれらを集約した上で、校長や教育委員長への聞き取りを行う。それから、尺度に応じた点数評価を行い、点数評価が高い学校へはボランティア集団事務所から資金援助や人的派遣を継続的に行うシステムである。
それにしてもシブチンで悪名高いボランティア集団事務局本部から、よくそのような予算を取って来れたものである。何気に遠山アドバイザーのすごさを思い知らされた。いや、もしかしたら、もっと上層部の春川事務員や太田次長、屋形原所長あたりが動いているのかもしれないが…。
ようやく、「適度な緊張感」と「外部評価」の二つが隊員活動を円滑に進め、現地の人を変容させる原動力になると気付いた。もちろん、ボランティア集団事務所ではずっと前から分かっていたことだが、これまで適切な評価基準や評価者の選定などにとまどっていたらしい。
口で言うのは簡単だが、客観的な評価や他者の変容を促すことはとても難しいらしい。しかし、このシステムが開発されたことで、隊員やボランティア集団事務所の支援がなくなった後も、現地の人達だけで活動できるようになる筋道が一層つけやすくなるだろう。
隊員がいなくなった後は、元隊員がいた学校同士の校長と教育委員長による相互評価で代用するらしい。また、コネや縁故関係による悪い力が働かないように相互評価は他県の学校と行うことや、教育省に第三者評価機関を作るように働きかける予定となっている。
少なくても、隊員がいなくなって、また昔に逆戻りすることは大幅に減ることが期待された。
また、今回は私からの提案ではなく、現地の教員からの提案であることがとてもよかった。ようやく、私が背中を押すだけの段階を終え、現地の教員が自ら進め、分からない時に隊員へ聞いて来る段階へ移ったことになる。ここまで実に長かった…。そう思うだけでも感慨深いものがある。
ただ、活動校の教員も一枚岩のようで、実は一枚岩ではない。とりあえず、クラセ・アビエルタまで様子を見ると言った教員も多い。ニウロクの活動を見た四人はとても積極的だが、一方でいまいちやる気の感じられない教員も当然ながらいた。
まあ、それも仕方がない。全てが一斉に変わる訳もないし、人の数だけ人の歩みがある。子ども達も同じだ。さっそく、新しいやり方にハマってきた子どももいれば、今いちピンとこない児童もまだまだ多い。さあ、ここからが第二のスタートラインである。
まずはクラセ・アビエルタを成功させて、全ての教員に成功体験を味わってもらうことが大切である。彼らにも自信をつけてもらい、前進の流れを加速させないといけない。そうしないと、この小さなともし火すら消えかねない。




