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アボガド売りの少年  作者: あまやま 想
本編2【後半の1年間】
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風向きが変わった瞬間

藤木文生の任地で行われた算数オリンピックを現地の教員に見せたことをきっかけに、カナの任地・サンホセでも現地の教員もようやくやる気になった。

 不思議なもので、物事と言うのは一度動き出したら、私があれこれ動かなくても物事がどんどん進んで行く。地区教育事務所長が毎日のように学校に来るようになり、活動校の校長もやる気になった。


 それにつられて、今まで通りにやればいいと言っていた保守的な先生達も一回ぐらいは話にのってみようかと言うようになった。


 これまで何をやっても何一つうまくいかずに、なんども任期短縮して日本へ帰ろうとしていた…。それでも海外ボランティア集団協力隊の在外事務所職員を初め、同期の本山茂吉【職務:小学校算数教育(当時三九歳)】、健軍圭子【職務:小学校算数教育(当時三一歳)】、、佐土原里子【職務:保健看護指導(当時二五歳)】、藤木文生【職務:小学校算数教育(当時二三歳)】他の四人に支えられて、ここまでやって来れた。それが今ようやく一つの形になった。


 もちろん、まだ何一つ形となっておらず、ようやくこれまで話し合いのテーブルにもつかなかった人達が話し合いのテーブルについてみようと言っただけのことではあるが…。これまでの一年を思えば、それはとても大きな一歩であると言っても過言ではないだろう。


 そんなこんなで珍しく一枚岩になった教員達は、連日のように職員会議をするようになった。話す内容は初めてのクラセ・アビエルタ(授業参観)をどうやって成功させるかについてである。


 全員がどうにかして成功させようと必死だった。また、一人でも多くの保護者を学校に呼ぶために、私もこれまでクラセ・アビエルタを成功させてきた先輩達の体験談をいろんな所から引っ張り出した。そして、成功例から先生達にいろんなアドバイスをした。


 今までは午前中に学校の仕事が終わった後、家で何もせずにのんびりと本を読むか、インターネットをするか…。もしくはナコク県最大の都市であり、県庁所在地であるアラソナスまで行って、おいしいチーズケーキを食べながらインターネットをするかである。この店はインターネット回線が割と太くて、任地に比べるといくぶんかサクサクとネットサーフィンができるので重宝している。


 しかし、そんな半分死んだような生活はもう止めだ!


 今は昼からの時間で先輩隊員からの成功談を電話で聞き出したり、インターネットからこれまでの小学校算数教育の隊員が残した事例報告書を読み出したりしている。その中からサンホセの特性にあった事例を掘り起こして、他の先生方に事例案として報告する毎日である。


 ようやく海外ボランティア集団協力隊の本分とは何かを思い起こるに至った。これまでの半分死んだような生活をカナはとにかく恥じる…。だからこそ、これまでの分まで動かなければいけない。そんな思いがカナを奮い立たせる。


 子ども達にどう言う招待状を書かせると保護者がたくさん学校へ来るのかとか、学校からも校長名で便りを出すといいとか、日本でなら当たり前にやっていることをやるように進めた。


 これまでだったら、私がいくら言ってもほとんどの人が言う事を聞かなかったのに、競って私にいろいろと聞いて来るようになった。流れが変わると、こうも変わるものなのか? 先生も児童もこれまでとは全く違って見える。


 心持ち一つでこんなに変わるなら、どうしてあんなに腐った日々を送って、問題の先送りをしていたのだろうか。くじけることなく、もっとたくさんコラボレーションをすればよかった。そうすれば、このような日をもっと早く迎えていただろうに…。


「カナ、この授業をどう進めるといいかな?」


「ここの教え方はこれでいいのかな? カナ、今からここの授業をやるからさ、ちょっと見てくれない?」


などと、あちらから聞いてくれるので本当にうれしい限りである。


 ふと朝、目が覚めるたびにカナは「あれは幻だったのではないか…」とか「たまたま気まぐれを起こしていただけでは…」と不安になることもあった。そんな時は自分のほっぺをつねって、これが紛れも無く現実であることをつねった痛みと共に受け入れていた。


 まあ、この変化はうれしいとは言え、心のどこかで現地の教員をまだ信じきれていない部分があったのだと思う。

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