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アボガド売りの少年  作者: あまやま 想
本編1【赴任から最初の一年間】
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藤木君の大活躍(2)

 この間に県都のアソラナスで、サルドノ国内で一斉に行われる教員研修の地区研修の講師担当者を集めて、国の研修担当者が直接指導することになった。我々、隊員も手伝うことになった。教員の指導力向上には欠かせないし、集団事務所としても隊員活動を啓発するいい機会となるらしい。


 もちろん、同じナコク県にいる藤木君もアソラナスに来た。ここでわたしは安全のため、藤木君にダブルの部屋に泊まらないかと提案した。彼は一瞬嫌がったが、私に根負けしたようで渋々受け入れてくれた。このような出張のときは宿泊費も出たが、微々たるものであった。


 集団事務所は治安の問題から公務の際に安宿には泊まらないように言っておきながら、手当が足りないため、隊員が自腹を切っていることには見て見ぬ振りしていた。そこで隊員は自分を守るために、複数で出張するときはダブルやトリプルの部屋を取って、安くていい部屋が取れるように工夫していた。


 ただし、それは同性同士の話である。できれば、異性との相部屋は避けたいところである。それでも避けられない時がある。そんな時、真面目で信頼のある藤木君のような男性は女性隊員から安心される。


 隊員はこのような思いをして、自分なりに身を守っているのに、アドバイザーや団体事務所職員達は日当も宿泊費もそれなりに出るので、いつもいい部屋に泊まる。そんなので、下々の気持ちが分かるわけもない。


 アドバイザーや団体事務所職員の多くが旧・国際協力事業団時代の青年海外協力隊経験者なのに、おいしい思いができるようになってからは冷たいようである。今の制度では、ボランティア集団協力隊員が団体事務所の正職員やアドバイザーになる道は閉ざされており、ここにも見えない対立が見受けられた。


 この講習会はサルドノでも五本の指に入る講師が担当するものであったので、一週間の間で私達はほとんどすることはなかった。むしろ、講習会を聞いて、勉強になったほどである。


 その後、藤木君は事務所の遠山アドバイザーやアリソス現地コーディネーターとも話し合いを重ね、現地の教員によるクラセ・アビエルタ(授業参観)も一緒に行うこととなった。


 このように活動がうまくいっているときは、話がどんどん広がっていく。実にうらやましい話である。このニウロクにおける藤木君の活躍ぶりをみて、サンホセの教員が少しでもいい刺激を受けてくれればいいのだが…。


 そんな中で市長と地区教育事務所長がニウロクの算数オリンピックを見に行きたい人を募ったところ、カンディダ先生、カレン先生、ベレン先生の三人が行くことになった。三人は算数の授業の際にいつも私を迎え入れてくれる上に、「何かあれば、何でも言ってくれ」と言ってくれるので、何かを指導するときもとてもやりやすかった。


 あと、今回は珍しく地区教育事務所長もやる気になっており、彼女もニウロクに一緒に来ることになった。まさに私の狙い通りとなったので、とりあえず安心した。


 八月一日、首都・アプラヒクで私達の中間報告会が行われた。これまでの一年間を振り返り、残り一年間をより有意義に過ごすために行われるものである。今回から年に二回行われる安全対策研修と一緒に行われることとなったため、私達の中間報告会を事務所関係者だけでなく、隊員やシニアボランティアも希望すれば、誰でも聞けるようになった。


 まさか、こんなに多くの人が聞きに来るとは思わなかったので、いい加減なプレゼンテーションを作ったことを後悔した。どちらかと言えば、今回はニウロクで行われる一連の行事の準備および最終調整のために来ているようなものだった。


 それは藤木君も同じであった。一年間を振り返り、残りの一年をより有意義にすることが報告会の目的なのに、なぜか算数オリンピック開催に至るまでの経緯と開催の意義ばかり話していた。報告会がおわってから、遠山氏とアリソスさん、それと今回の行事に協力・参加する隊員八名と最終調整のための話し合いを行った。

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