藤木君の大活躍(1)
まわりのボランティア集団隊員は活動をどんどん進めていく中、カナは取り残されており、焦っていた。一方で藤木は算数オリンピックをするため、どんどん活動を進めていく。そこでカナはあるお願いを藤木にする。
七月中旬、藤木君から改めて、八月にニウロクで行う算数オリンピックと日本文化紹介を手伝うように電話で頼まれた。確か、一ヶ月前に首都で会った際に
「必ず、手伝いに行くからね」
と言ったはずなのに…。私の任地での活動は全く進んでいない。もう、自分の任地を投げ出して、毎日他の人の任地の仕事を手伝って回ろうかなと思うほどだった。それぐらい気が滅入っていた。
そんな気持ちがあったからか、毎週一回行われる市長と地区教育事務所長への活動報告の際に
「他の人はどんどん活動を進めているのに、私は何も進められないでいる。何もできないなら、私はここにいる意味がないので、もう日本へ帰ろうと思っている」
と思わず言ってしまった。
それを聞くなり、市長も地区教育事務所長も
「そんなことを言わずに、あと一年、最後まで頑張ってくれ」
と言う。そこで私は
「じゃあ、サンホセでも算数オリンピックをやりましょう」
と言ったら、二人がとたんに黙り込んだので、私は頭に来た。そして、こらえ切れなくなり、泣きながら市役所から飛び出したのだ。二人が何か言っているのを無視して…。
次の日、地区教育事務所長が学校にやって来た。
「カナ、申し訳ないんだけど、もう一度だけ、算数オリンピックについて説明してくれないかしら…」
なんて言う。私はうんざりした。もう何度も説明したのに…。算数オリンピックとは子ども達がみんなで力を合わせて計算を解いたり、カードに書かれた計算を解いたりしてからゴールに向かって全力で走ると言ったものである。
しかし、教育事務所長に何度説明しても、それは全く伝わらなかった。そもそも彼女にそんな概念がないのだ。
どうすればいいのか悩んだあげく、一つの考えにたどり着いた。何度も説明しても分からないなら、実物を見せればいいと言うことに…。そして、幸いなことに実物を見せることができる機会がせまっていることに…。
「…と言うわけで、藤木君、大変申し訳ないんだけど、ニウロクの算数オリンピックに私の任地の教員を二、三人連れて行ってもいいかな? きっといい戦力になってくれると思うよ」
「いやいや、戦力にはちょっと…。でも、そうやって教員同士の交流の場を作ることはいいことかもしれないね。まあ、ニウロクの近くにいる隊員には全て声をかけてあるから…。隊員だけで八人は来ることになっているし、僕の任地の教員とも算数オリンピックの準備や当日の進行については、いろいろと話を進めているから、カナは何も心配しなくていいよ」
思わず、電話をブチっと切ってやろうかと思ったが、さすがにそれは大人げないのでこらえた。とにかく、また彼の話にのることで前回と同じように活動を盛り上げるきっかけをつかみたかったのである。




