ep8
人体欠損表現あり。
残酷な表現となるのか判断がつきませんが、苦手な方はスルーでお願いします。
光が消えると、オリオンの手には一丁のリボルバー式の拳銃が握られていた。
「あ、あんたそれどうしたのよ……」
「ああこれか? これは銃っていってだな、まあ簡単に言えば弓が発展したものだ」
「違う! そんなこと聞いてるんじゃない! その左腕と左目のことよ!」
「ああそのことか。罪人の腕を切り落とす刑罰とかってよく聞く話だし、やっぱまずかったか?」
見やると、オリオンの左腕は肩から先が消失しており、本来左目があるはずの場所は窪んでいる。
「そうじゃない。なんでそんなことになってるのか聞いてるのよ!」
「簡単に言うとだな、この銃を作るにあたって材料として使ったからだ。対象取り、情報解析、実行っていう工程があるとどうしてもラグができるからな、それならそういう機能をもった器物を作れば楽になるかと思ったんだ。だけど犬の力を付与するにはどうしても自分の肉体を材料にしなきゃいけなかったみたいだ。具体的に言えば、対象取りに左腕、情報解析に左目だな。だからこの銃はどんなに距離が離れていても、俺が対象を認識できれば絶対に当たる。当たるという事象が確定してるんだ」
そうオリオンがまるで何でもないことのようにさらっと言い放つ。
実際オリオンにとってこの程度のことは、左腕がないからせっかくリボルバーなのにファニングができないなーとか、眼帯はドクロと鍔のどっちがいいかなー、ぐらいにしか思っていない。
実は身を削ってそんなものを作らなくとも十分すぎるスペックを持ち合わせているので、完全に意味も無く身を削っただけなのだが、例えそれを知ったとしてもそーなのかーわはー、で終るであろう程度にはどうでもいいことなのだ。
「ばか! 戻しなさい。今すぐ元に戻しなさい。そんなことしなくたってあたしが守ってあげるって言ってるじゃない!」
「だが断る、パート2。つーか、俺はセレネに守られたい訳じゃない。そもそもそんなのまっぴらごめんだ。この世界で魔物に対抗して生きていくには俺は弱すぎて、それじゃどうしようもないから力が欲しかった。んで、そのための材料がたまたま左腕と左目だったってだけだ」
あえて伝えることはしないが、全てにおいて優先されるべきはセレネの目的であり、その過程で自分の体が欠けることなど考慮に値しない。
オリオンにとって、それは当たり前のことなのだから。
「それに俺がしたいのはセレネと酒を飲むってことだけだからな。それには右腕があれば十分だろ」
セレネの目的――アルテミスの名を捨てること――のために必要だった、とは決してオリオンは言わない。
言えば必ずセレネが気に病むだろうということはオリオンも理解している。
だからこそ自分が弱いからだ、としか言わない。
「ばか……」
そう呟きながら、セレネがオリオンを抱きしめる。
「そんなことされて、あたしはあんたに何を返せばいいのよ……」
オリオンの小細工など女神たるセレネに通じるはずがない。
むしろ女神でなくとも理解できるのだが、オリオンにとっては自分が身を削ることなど当然のことなので、なぜばれてしまったのか本気でわからない。
「あー、セレネが何を勘違いしているかわからんが、これは本当に自分のためにしただけだ。だからセレネが気にすることじゃないし、なにも返してくれなくていい」
「……ばか」
抱きしめる力を強めるセレネの髪をそっと撫でる。
セレネと共にいたいということも、身を削るのも、自分が勝手に決めてやっただけのことなのだ。
その責任を誰にとってもらおうともオリオンは思っていない。
「ねぇ……」
「ん、なんだ?」
「これ、本当に元に戻す気はないの?」
抱きしめる腕を放し、オリオンの無くなった左目をそっと撫でる。
「あー、無理だな。たぶん創造神のやつもこんな犬の使い方は想定してなかったんだろ。どうやら不可逆みたいだし。さっきも言ったけど、俺の目的には必要ないものだから別にどうでもいいさ」
「そう……。あんたがそういうならあたしも何も言わない」
「そう言ってもらえると助かるよ」
「あたし頑張るから。頑張って国を興す。そうしたらずっと一緒にお酒飲みましょうね」
目尻をやや濡らしながら、セレネが笑う。
「そうだな。誰にも邪魔されずにとことん飲もうぜ」
それにつられるように、オリオンも笑みを浮かべるのであった。
軽い気持ちで人体欠損を選択するオリオン。
これってヤンデレになるのでしょうか?
正直ヤンデレは抑えてない分野なので判断ができません。




