ep6
唐突に三人称に書き方が変わります。
しばらくこの書き方で書いてみますが、いつ一人称に戻るかわかりません。
ご了承のほどよろしくお願いします。
国興しなどという無茶振りをうけ、まずオリオンとセレネがしたことというと……。
「やっぱ栗焼酎はハーフロックが一番だな」
「そうね、ロックだとちょっと香りが強すぎるし、かといって水割りだと味気ないものね」
酒宴を再開することだった。
◇◇ ◇◇
「そうだ、王都に行こう」
飲みなおして一時間ほどたった頃だろうか、まるでどこぞの鉄道会社のキャッチコピーのようなことをオリオンが唐突に言い放つ。
ちなみに、今まで飲みながらしていた会話で国興しについてのことなど話していない。
しかし、口には出さないだけでオリオンとてなにも考えていなかった訳ではない。
自分に出来る事、出来ない事を一人考えていた。
まあ、この冗談めいた言葉は、脳と口が直結しているのか、これおもしろくね? と思ってしまったら最後口に出さずにはいられなかっただけなのだが。
「急になによ?」
脈絡がないのはいつものこととばかりに、さして気にした様子も無く問い返すセレネ。
当然元ネタを知る由も無いので突っ込みは無し。
ただ、冗談めいた雰囲気は感じ取ったのか、冷めた目で睨みつける。
一週間という短い間ではあるが、自分を蔑ろにしているオリオンの、良く言えば素直、悪く言えば単純な思考を読むことなど、女神であるセレナには簡単なことだ。
「国を興すっていっても、一番問題なのはどう考えても住民の確保だろ? 俺の力を使えば衣食住を揃えるのは簡単だけど、そもそも人がいないと始まらないない。それでだ、とりあえず人がいるところにいればなんかいい案がうかぶかなーってな」
思ったよりも冷たい反応に焦ったのか、オリオンがあわてて弁解する。
正直いって穴だらけの、案とも言えない様なものなのは、この世界に転生してからというものその時間のほとんどをセレネとの酒宴に費やし、この世界の知識などほとんど持っていないのだから仕方ないだろう。
「結局今の時点ではなんの案も無いのね……。まあ確かにあんたの言うことにも一理あるわね。とりあえず行動してみて、後のことはその時に考えましょう」
どんなにオリオンのもつ力が強大なものであろうとも、国というものは国民がいてこそのもの。
そのぐらいはセレネも理解している。
そしてセレネ自身も、忘れられた神であることから、人を集めるという伝手というものをもっていない。
そういった意味では、二人とも総じて無力と言って差し支えないだろう。
「正直言えば、どう考えても無茶すぎるから諦めたいところではあるんだがな」
「駄目よ! わたしは、どうしても、この名を、アルテミスの名を、捨てなきゃいけないの! そうじゃなきゃ……わたしは……」
「……すまん」
オリオンの迂闊な発言にセレネが声を張り上げる。
「わかればいいわ……。でもこれだけは覚えておいて、わたしは絶対にあきらめない。必ず国を興してアルテミスの名を捨ててみせる。そして……」
「わかった。もう無理だなんて二度と言わない。何があってもセレネに協力するよ」
「ならこの話は終りね。さっ飲みましょ」
「ああ、そうだな」
一瞬重い空気になりかけた二人だが、そんな空気を有耶無耶にすべく、今まで以上にピッチを上げていく。
オリオンとセレネ、二人の国興しはこうして始まった。