自称神と会いました。
俺は死んだ。死因は些細な問題なので割愛しよう。死んだという事実さえ伝わればそれでいい。
だがこの現状はなんなのだろう。
死んだはずの俺は確かにここにいて、そしてそんな俺の目の前にいる男。
いかにも怪しげで、例えるなら塔の頂上にいる即死耐性を持たないような男。
こいつはもしかして――
「ご名答。いかにも君たち人間のいう神という存在だよ」
神ね。チェーンソーがあればバラバラにできるのだろうか。
「残念ながらバラバラにはならない。それよりも君はおかしな人間だね。無神論者の多い国民だということ差し引いたとしても、この状況に疑問を持つのが普通だとおもうのだが」
苦笑いを浮かべながらそんなことを言ってくる自称神。
ご期待に沿えず申し訳ないが、一度確かに死んだ身ではあるし、それ以前に俺のような重度に二次元をこじらせた人間にとってこの程度のことは驚くに値しない。
むしろヲタクなめんなと言わせてもらいたい。
「君が、いや君達というべきかな。君達のような人間がこのような状況に耐性があるということはよくわかったよ。それはさておきだ、まあ予想はついていると思うのだが、君には所謂転生というものをしてもらう」
転生ね……まあこの自称神の見た目から目的を推測するに、人間が必死にもがく様を見たいとかそんなところだろうか。
悪趣味といってやりたいところではあるが、こいつからしてみれば自分の生み出した存在を適当な運命に放り投げることなど、小説を書くこととたいした差などないだろう。
転生することは決定事項なようであるし、それは逆らいようがないはずだ。
「理解が早くて助かるよ。君に転生してもらう世界なのだがね、アルハイム戦記というゲームの世界だ。その世界の一員として君には転生してもらう。君は何かを成し遂げてもいいし、何もしなくてもいい。自由に生きてくれてかまわない」
何もしなくてもいいね……。
ゲームの世界に転生させられる以上――どういった立場に転生させられるかは知らないが――なにもしないでいられるということはないだろう。
ましてまったくの未プレイゲームの世界だ。
少なくとも何の特技もない平凡な俺には生きること自体何かをすることになると思うのだが。
「まあ大体その通りだと思ってくれてかまわない。ただ楽しませてくれることを期待しているよ」
どんな行動が楽しませるになるのかは知らないが、それはお約束の転生特典にもよる。
わざわざ転生などさせて楽しませろという以上それなりのものをくれる考えていいのだろうからな。
「当然そういった特典はあるとも。平凡な人生を歩まれてもつまらないからね。そうだな……君の望むものをひとつだけあげようじゃないか」
ゲームの世界で貰いたいものね。
まあそんなものはひとつしかない。
「犬をくれ」
「ふふふ。初めて口を開いたのがそれだとはね。言質をとりたいのは分かるが、今まで思考と会話してきた以上私に誤認させようとしてもそれは無理な話だよ」
無理な話なのは先刻承知の上である。
しかしながらそれ以上に必要な特典など思いつかないのも事実である。
よって結論=犬くれ。
「まあいいだろう。折角だからより使いやすいように調整したものをきみにあげようじゃないか」
まさか本当に犬をくれるとはな。
なんでも言ってみるものである。
「さあ、これ以上ここで話すことはないだろう。最後に、楽しい人生であることを期待しているよ。ではよい人生を」
コンピュータは常に、プログラム内で一定のメモリエリアを確保して、実行に絡んで計算した結果や入力された値を、これらメモリに格納する。イメージとしては、作業の進行に従って、幾つものメモを残している状態を想像してすると分かりやすい。
チート行為では、これら実行中のプログラムが確保中のメモリエリアに他のプログラムから干渉、その内容を書き換えることで実行される。先の比喩に則れば、作業中に作られたメモに他人が改竄を加える行為に当たる。これらの行為は、広義ではクラッキングとして扱われることもある。
チートwikipedeiaより
犬はメモリエリアに干渉するプログラムのフリーソフトの名前という設定です。
簡単に言えばチートを作り実行するソフトです。