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村の前で立ち往生?3

このさきグロテスクな表現があるのでそういうのが苦手なヒトは回れ右したほうがいいかもしれません。

ギルドランク

冒険者の実力を示す基準のようなもの。

当然そこにはあらゆる事情が介入している。

ありとあらゆる贔屓と差別も、もちろんある。


Sランクであっても、Aランクの実力しか持たないものもいるし。

Bランクであっても、Sランクの実力を持つものもいる。


これだけでもギルドの意向の結果だ。ギルドに服従し、貢献した冒険者はSに、実力があってもギルドに従わない冒険者はBランクに。


不平等はどこにでもある。実力だけが評価されるわけではない。財力、地位、どこであれそれらの力は大きい。特にギルドの頂点にいる10人のギルドマスターは、ギルドにおいては神とすらいえた。


ギルドマスターがすべて悪い人間というわけではない。

ギルドは国に属していない。

が、国の影響をまったく受けないわけではない。


多数の国の冒険者達が、各々投資をしてできあがった巨大資本、それがギルドである以上

投資者の意向に沿うのは必然だった。


中でもギルド創設に直接関わった100人の冒険者の意見はギルドマスターであっても無視できないレベル。


そこで多くの特定の贔屓が発生した。差別が、迫害が生まれた。


彼らは、ただ自分の思うがままやった。


欲望のため

正義のため

誰かのため

何かのため


名目上は英雄が創始者となっているものの、既にいない英雄に彼らは敬意を払わない。


彼らは決して止まらなかった。


対立が起こるのは必定の流れ。


東と西にギルドは分かれた。


東のギルド、アーク


西のギルド、タイタニア。


対立は、そこまでも根深く、執拗だった。

既に東西でまともな情報交流はない。


西のギルド、タイタニアにある中央ギルド、ウェンディア。


そこには、勇者の召還を感知する魔術具があった。魔術具とは、この世界の魔力で動く道具で、様々な事象を引き起こすことができる。

ウェンディアのギルドホームの地下深くにある巨大な魔石と、魔石に繋がる小さい魔術具の集まりが、ただ一つの機能を成している。

魔石と呼ばれる核を軸に動いているその

魔術具は、ある村から莫大な魔力の流れを感じた。

ルビー色の強い輝きを放つ魔術具を見たその日その場にいたギルドの魔術師たちは、慌てて解析とギルドへの報告を開始した。

無論西のギルド、『アーク』にこの事実は一切伝えられはしない。発見は速やかに内密に処理されていく。


観測された魔力は莫大。

ただ莫大とはいえ、歴代で観測されたものたちと比べると実は大したことはない。

勇者や魔王、魔人や聖女達が引き起こしてきた本物の奇跡に比べれば瑣末なことといえる。

しかし観測された魔力は、今まで一度も確認されていないありえない魔力だった。


この世界には、三つの魔力

エーテル、マナ、アルマが存在している。


だが、感知された魔力はどれにも該当しなかった。

前代未聞の事態に急いで会議の準備すら始められている。


議題には勇者召還もあげられた。

ほぼ同時刻にある城の王族が勇者召還をしたという情報を得られたからだ。

勇者召還に対して様々な組織が動き出し始めたのも丁度この時期。

もっとも全体から見てギルドは、この勇者を見つけたのは遅いほうだ。

召還の魔力を感知したのではなく、召還した人間の情報を元に発見したのだから無理もない

既に東方に潜伏しているある組織は、勇者召還ばかりか、どこにいるのかすら掴んでいる。

東方の天使達も召還と同時に詳細な場所までとはいわないものの、大体の位置を掴んでいる。

もっとも東方のものが西方へやすやすといくことはできないため、天使もその組織も動いていない。

が、西方の組織は違う。

ギルドは、『勇者』を連れてくることを冒険者達に依頼の形で通達した。

詳細な場所もわからず、容姿、性別すら不明である。そのため迷走している冒険者も少なくない。しかし、少し手馴れた冒険者であれば、『神能』や『黒髪などの特徴的な容姿』を目安に捜せばいいことに気がつき、情報を収集している。

網の目のようにはりめぐらされた情報ギルドのネットワークを用い、行われる効率的な捜索

により見つかるのは時間の問題といえた。

倒れた少年の知らないところで世界はゆっくりと動き始めていた。


______________________________






光裕は意識を失い

、白い空間にいた。



まるで夢のような世界


だが、光裕は見たのは夢は夢でも悪夢の類だった。


白い世界の向こう側には、黒い世界が広がっている。


それを光裕は見ていた。



光裕の視界に二人の仲のいい姉妹が映っていた。



姉妹はある日この世界に召還された。


召還された場所は、『地獄の森』

おしくも光裕と同じ場所だった。


なんとか命からがら森を抜けて

この村にたどり着いた。

しかし、村は魔族の住処だった。

加えて魔族は人間を奴隷としか考えていなかった。当時魔王は、西方、東方すべてを手中に収めており、人間は魔族の奴隷同然の扱いだった。


人間である彼女達は、差別と肉欲、食欲の混じった好奇の目にさらされる。



姉は妹をいつも庇っていた。



ある日魔族の兄妹が、姉妹に近づいてき。


なれなれしく話しかけてくる兄妹を邪険にすることも出来ず、せめて妹だけは守ろうと震えを隠して妹の前に立つ。


不意に魔族の兄は、姉の股ぐらに顔を近づけていた。


この村では、別に珍しいことでもなんでもない。誰もそれを止めようとする者はいなかった。


理解できない恐怖に震える妹の手を強く握り、覚悟する。


濡れた音と、吐き気を催すような生理的嫌悪が沸く中、スカートの下に顔を埋める魔族の男。それをいやらしい笑みで見る魔族の妹。


下手に暴れて、相手の機嫌を損ねることは出来ず仕方なく

姉はなすがままだった。


羞恥と恐怖に怯える時間が続き、魔族の男が顔を引っ込ませようとした瞬間、男の顔が、前ぶれなく反転し深く突きこまれた。


――その音を妹は忘れることが出来ない。


形容できない肉を食い破る音があたりに響き渡る。


抉るような痛みが、少女を襲った。


牙が、深く姉の腹の下に突き刺さる。血が吹き出し、押さえ切れない悲鳴が少女の口から一瞬漏れる。姉はこの状況でも気高く慈悲深く愚かだった。


女性の象徴である子宮をぐしゃぐしゃに貪られ、嚥下していく魔族。


あたりは血となにか分からない液体で汚れている。


周りの魔族達はそれを見てなんとも思わなかった。むしろ囃し立てるものさえいる。

異常の出来事を観察する異常な世界で惨劇は続く。


そのまま姉の足にかぶりつく。


妹の目の前で生きたまま足から食われていく姉。肉を咀嚼する生々しい音が響く。それでも懸命に笑顔でいようとする姉がこの場合はかえってよくなかった。


死ぬ間際、最後の顔がなくなってしまうまで妹は姉の顔から目を逸らせない。


自分の目の前で生きながら喰われていく最愛の姉を見て、妹がなにを思ったのか、それは妹自身にしか分からない。


いずれにしても

引きつった笑顔のまま、じわじわと足から頭まで生きながらに喰われていく心優しき少女は、残酷なまでのトラウマを妹に刻み付けた。


姉のがんばりも報われず、最後は姉を喰った魔族の妹に魔術の炎で焼かれ、妹も生きながら喰われた。



自分を安心させるために恐怖を抑えて必死に満面の慈愛の笑顔を浮かべようと生きながら喰われた姉。


妹の目には、いまだにその光景が思い浮かぶ。


死んだいまでさえ




光裕はその光景を妹と同じように見ていた。死の恐怖はいまだ消えていない。




魔族の男の顔と妹の顔が光裕の目に映っていた。


それはまさしく光裕を殺したアリシアとその兄である門番の男に瓜二つ。


否。

魔族の寿命はえてして人の数千倍。見た目だけではない。


まぎれもなく本人。


あれらは

人喰い鬼に相違なし。


光裕は、少し理解した。


理解して、ある感情を抱いた。


死を惨劇を前にしてしかし、光裕が抱いたのは怯えではなくまったく別の感情だった。


炎。

それは小さな篝火のようだったが、やがては大きくなり、ついには光裕の身を飲み込むほどに成長する。殺される時に見た地獄の炎。


――怒


姉妹が無残に喰い殺される姿を見て光裕に喚起される感情は、またたくまに燃え上がる。


光裕の視界がその炎に塗りつぶされる。


黒い炎が目すら焼き尽くす勢いでついには光裕の体の内側すら焼いていく。


言葉が聞こえる。怨嗟に満ちた言葉が聞こえる。


血でまみれたあの魔族が憎い、優しかった姉を蔑んだ魔族が許せない、意味の分からない理屈で姉を犯した魔族が許されたことがありえない。

姉を殺したあの魔族の姉妹が憎い、憎い!!

コールタール状の憎悪と絶望がゆっくりと足元から這い上がってくる。光裕は不思議とそれに抗おうとは思わなかった。


――報復を


――報いを


血は血でしか購えぬ。血をよこせ、血をよこせッ!



姉を殺した奴らが憎い。

奴らが生きていることが許せない。


殺せ、殺せ、


この身をすべて魔族の血で満たせ!!



___________________________

______________

_____



燃え盛る灼熱の炎は触れるだけで射線上の地面をガラス化させ、空気を呼吸すら許さない地獄へと変えていた。

体をあっさり覆い、尽くす炎。


アリシアと残っていた彼女の兄は、光裕の敗北を確信していた。


そう、敗北である。


【フレイムミラージュ】

炎の幻想という名が示すとおり、大地が焼け付くような赤き炎は、すべて幻だった。



アリシアは光裕に対していくつもの嘘をついた。


殺すと宣言したことや

人間を殺しても誰にも罪に問われないということ


実際はそんなことはありえない。地域ごとに多少異なるものの、殺人は罪であり、《闇の神殿》に公式、非公式問わず裁かれる。昔はともかく今は、迂闊に殺人など犯せない。当然そんなことをするつもりはなかった。


アリシアが見たところ、光裕はあの白の双姫に似ている女性の容姿なものの、それ以外にはなんの危険も感じられなかった。


とはいえドラゴンすら捕食されてしまうこともある、地獄の森を1人で抜けていたり、魔族の村に人間1人が立ち寄るなど、あまりにも怪しかったために

アリシアは、カマをかけ、なおかつ試した。


命の危機であれば、ほとんどのものは本音をだす。

スパイだとしても死ぬわけにはいかないだろう。そのときは本性を現すはず。


もし危険な相手であれば、容赦なく殺すつもりだった。しかし、実際は、被害ゼロ。怪我をしたものもいない。


ゆっくりと倒れていた門番の1人が無言で起き上がる。

人ではなく、魔族である彼らの治癒力は、切られた腕が一晩経てば、くっつくほどのものだ。

痛みに気絶したとはいえ、回復はたやすかった。もっともそもそも門番は、気絶する怪我などおってはいないのだが。


アリシアは光裕を見た。

「っ!」

ぷいっ!と顔を思わず背けた。


アリシアは、さっき光裕の股間に手を入れたことを思い出してしまい、羞恥に顔を赤く染めた。


(ううっ、……セクハラされた………)

嫁入り前の大事な体なのに

アリシアはそんなことを思った。

(私の好みは、オークとか、オーガなのに……)


(ちょっと痛いけどこれでアイコよね)


光裕を殴った兄同様理不尽な理由で殺されかけた光裕

を見てとりあえず、落ち着くまで縄で縛ってもらおうと思い、兄に声をかけようとした



倒れていたはずの光裕は、虚ろな表情で立っていた。

「えっ!?」

アリシアを含めて全員が混乱していた。


事実、光裕は死を味わい、幻想とはいえ確かに死んだ。


一度完全に死んで立ち上がるなど魔族でも無理だ。


だが、目の前の中性の容姿の男は、死を苦にもせず、立ち上がっている。


(化け物……っ!)

アリシアは1人毒づいた。


既に光裕に意識などない。


焼け焦げた体。

皮膚は溶けて、骨すら見えていた。


「蘇生した……こんな人間がいるなんて……」


どこか唖然としたような少女の声は光裕には届いていない。


表情を失った光裕は、既にぼろぼろになっている。がなぜかその喉が動いた。


「エクストラスキル、オン」


言葉とともに光裕の体に黒いもやが集まっていく。


光裕はそのままおもむろに地面に手を当てる。


すると体から黒いもやが地面に広がり、おおいつくす。


そのもやの中に手を突き入れる


もやのなかから骨が現れる。


人骨だ。


ソレを見て、アリシアとアリシアの兄の目が変わる。どこか怯えの色さえあった。

残された門番はわけも分からず、仲間の二人に困惑する。



骨はまたたくまに姿を変え、やがて

光裕の手には、黒いナイフが握られていた。


そのナイフからは禍々しい気配が漂っている。


光裕が駆ける。


その先には、自身を焼き殺した悪魔の少女。


「っ!!」


アリシアは声にならない悲鳴をあげた。





命の危機を感じ、詠唱を破棄して魔術を唱える・

魔術の名前は、【ファイヤミラージュ】

光裕を一度沈めた呪文であるがゆえに、アリシアはその呪文に頼った。


もう一度


現れた炎には、さきほどの大きさはない。がしかし、倍以上の速度を持っていた。


幻であるがゆえに速度も思いのままの炎が、空気を焼け焦がしながら瞬きの間に直線の軌跡を刻む。


回避しようと光裕が、斜め後ろへと飛ぶものの、あっさりと捉え、既に目の前へと迫っていた。


接触の際、音もなく、ただ早い豪速の焔が、光裕の身に着弾する。

――光裕の目の前で赤い火花が散った。


「えっ!?」

炎が、その動きを止める。


驚くアリシアにかまわず

ナイフが、幻の炎に触れた瞬間、炎が見る見るうちにその体積を小さくしていく。

そのため炎は、光裕を焼き尽くすことはなかった。



「私の魔力を吸い込んでいるの!?」


光裕のナイフに幻の炎が吸い込まれていく。



やがて炎はすべて跡形もなく光裕のナイフに飲み込まれる。



光裕がナイフをアリシアに向けた。


(なにかわかんないけどまずい!!)

直感を信じ、その魔族の身体能力全てを使い思い切り後ろに飛ぶアリシア。

光裕との間に一瞬にして10メートルの距離ができあがる。


この距離では、拳も剣も、ナイフだってもちろん届きはしない。


受けでもなく、攻撃でもなく回避を選ぶアリシアは正しい。


だが、少女は間違っていた。光裕の放つ攻撃はいわば幻影。後退程度で回避できるほど甘くないことは光裕自身が知っている


次の瞬間、幻の炎は、ものすごい速度で、アリシアを襲った。


瞬きすら許さない超速の一撃に、アリシアはその距離をなすすべなく詰められる。


「が……っ!?」

着弾し、激しく燃え上がる炎に身悶えるアリシア。

しかし、そんなことで消えないことなど彼女自身がよく分かっている。

どこまで逃げても追いかける炎に一瞬にしてアリシアの身が焼かれる。

あまりの激痛、生きながら焼かれる痛みに、死にはしないものの、

みるみるうちに精神力を磨耗させ、やがてあっさり地面に倒れ付し気絶する。


「アリシア!!」

妹が倒れ、かけよる兄。


アリシアに気を取られている門番二人を尻目に光裕は、背を向け、一気に駆ける。

光裕はそのまま素早くその場からの離脱を選択した。

「くっ!?」

気がついたとき、既に光裕の姿は、はるかかなたにあり、気絶したアリシアを置いていくこともできないため光裕を逃がしてしまう結果になった。


が、理由はそれだけではない。


思い出していた。


光裕が持っていたあのナイフの漆黒の刀身を見て、思い出した記憶があったのだ。


それはまだ人ではなかったころの自分の記憶。


思い出し、思わず苦い表情をしてしまう魔族の兄。

そしてさらに思い出す。



――あの姉妹を殺したのは、丁度この場所だったことを。


_______________________

_________________

_________


森の中に入った光裕に追いすがる魔族は一人もいなかった。



《地獄の森》



精神力も体力も限界だったのだろう。


光裕の意識は朦朧としていた。



_________来て!



いつしか聞こえてきた声に導かれるまま光裕は、森を歩いていた。


不思議と声に導かれた道では、魔物に一体も会わない。


やがて声が途絶えたと同時に、導きも終わる。


体力の限界だったのか、光裕は、その場に倒れ付す。

書けば書くほど未熟が浮き彫りになっていく

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