柚布伊 如月
晴れ渡る青い空にはギラギラの太陽が鎮座していて、グラウンドを飛び回る青い熱風が私の顔を舐めた。
教室の効きすぎたクーラーで寒くなった身体を少し窓を開けてひなたぼっこしていら、外気と室内の温度差で気持ち悪くなった。
「柚布伊さん」
気持ち悪くなって顔をしかめる私をさっきまで大声で喋りまくっていた女子グループの一人が呼ぶ。
「クーラーつけてるからそこ閉めてくんないかな?」
「あぁ、そだね。うん」
と返事をしつつ窓をぴしゃりと閉めるとさっきの女子は満足そうにありがとう、と言った。
それにしても私はどうも夏が好きになれない。
屋内にいれば効き過ぎたクーラーが体温を奪い、外に出ればヒートアイランド現象が私から水分と活力を奪っていく。
夏だからと思い切ってショートにして少し後悔している髪を撫でて席に着くと、始業のチャイムが鳴った。
休み時間のざわめきは次第に薄れ、そのせいでクーラーの効きがより強まったように感じる。
次の時間は学活で授業はしないから楽なんだけど、一体何をするのだろう。
と考えていると担任の先生が教室に入って来たので私は起立、礼と号令をかけた。
「はい、あぁいいすね。みんないますね」
面倒くさそうに出席を確認したあと藤永先生はミディアムの髪を指でかきあげる。
「あー今日はですねこの時間で文化祭の話し合いをしますんでぇ、ちょっと柚布伊さんいいすかぁ?前に来て下さーい」
急なことに少し戸惑いつつ私が教壇まで行くと先生は続けた。
「まぁ、みんなも知ってると思うんですけど三年は模擬店を出店することになってますよねぇ。そんでですね、今日は三年四組は何をメニューにするかを話し合って欲しいんですよぉ。司会は柚布伊さんでいいすねぇ?じゃあどうぞ始めて下さーい。」
と言うと、藤永先生は教室の扉に手をかけた。
「私いなくても大丈夫すね?この時間は私職員室にいるんでメニュー決まったら報告に来て下さーい。じゃ、あと柚布井さんに頼むんで」
言い終わると同時に扉は閉まる。
話を丸投げされて、いきなり司会を任されても何をしたら良いのか分からないので教壇でマゴマゴしていると、クラスメートからポツポツと案が聞こえてきた。
とりあえずそれらの案を私が黒板に書き連ねていく速度より意見の出るスピードの方が早く、司会と言うよりかは、書記みたいな感じだ。
案にはかき氷やたこ焼き、焼きそば、クレープなどのメジャーなメニューがほとんどだった。
これで一通り意見が出揃ったようなのでこの中から多数決でメニューを決定することにした。
「じゃあ1人一回だけ手、挙げて下さい。じゃあクレープがいいひと」
17人か。
「次、焼きそばは?」
15人。
「かき氷は何人?」と私は人数をチョークの先で数える最中に1人で何回も挙手してるやつがいることに気づいた。
38人クラスだから残り6人しか手が上がらないはずなのに、14人挙げてる。
「1人1回です。聞いてました?」
と私が言うとシンと静まった空気になり、なんだか居心地悪いから続けて多数決を取った。
「じゃあ最後、パエリアは?」
35人挙げてる。とりあえずパエリアにメニューは決定したみたい。
「じゃあパエリアに決定しました。異存はないですね?」
と聞いても各々近くの人と雑談をしていて反応はなかったので、模擬店の企画用紙のメニュー欄にパエリアと記入した。
丁度チャイムが鳴りそのままクラスは昼休みにおちた。
私は企画用紙を持ち職員室へと向かった。
廊下には我先にと食堂へダッシュしてる生徒が多くいて、何回もぶつかりそうになる。
ヨロヨロとその特攻隊をなんとかかわしつつ、職員室へと辿り着いた。
職員室のなかはクーラーがかなり効いていて廊下との温度差が以上にひらいていた。
その温度差で微かに蜃気楼でも見えるんじゃないかと考えながら職員室内を見渡すと藤永先生が弁当を食べているのを発見した。
先生は私を見つけると箸を置いた。
「お疲れさま。柚布伊さん。んで、早速なんだけど放課後に職員室に来てね。」
口にものを含み藤永先生は腰に手をやり伸びをしながら言う。
わかりました。と言うと藤永先生はまた弁当を食べだした。
私は職員室をでて教室へと戻った。