現在
目をあけた
そこには白い壁、白い布、右手には点滴と名前のしらない機械、それと花瓶に入れられた少しばかり萎れた花がある。
とっさには自分が何故ここにいるのか分からずにたたずんでいたが、しばらくすると自分のおかれている状況がわかってきた。
「ここは病院か…」
「俺は助かったのか…」
そうつぶやいた。そしてベッドから反対側を見ると窓があり、外の天気は事故が起きた日と同じように雨が降っている。外を眺めていると、ドアの外の廊下からコツコツと足音がだんだんと部屋に近付いてくるのが聞こえてくる。足音の人物は部屋の前で止まりドアノブを回す。
ガチャ
そこには白衣に身をつつんだ看護婦がいる。花を持っているところからどうやら花瓶の花を替えに来たらしい。
彼女がドアを閉めこちらに向き直った瞬間目が彼女とあい、彼女の目は大きく開かれ手に持っていた花を落とした。花が床に落ちた音で彼女は我に返り『先生〜〜』と叫びながら廊下を駆けていった。
どうやら彼女は静かにするという病院のルールが分からないらしい。そんなふうに考えていると今度はドタドタ走っている音が廊下から聞こえてくる。ドアが勢いよく開くとさっきの彼女と隣には少し腹がでている医者がたっている。さっきの反応といいこの医者といい単なる事故に巻き込まれたとは違う雰囲気に俺は
「どうしたんですか?」と尋ねた。
『慎也君が目が覚めたって聞いたから』
そう医者は息を切らせながら言った。
「それにしては慌てすぎじゃないですか?」
彼の返答は自分が想像出来る範囲から逸脱していた。
『君は丸3年間意識がなかったんだ…』