-Prologue-
処女作です。なので書き方が粗かったり、ストーリーがごった返している可能性があります。楽しんでいただけたら幸いです。
あなたは、人生の目的について考えたことがありますか? つまり、簡単に言うと、『生きる意味』です。自分という人間の存在価値、そしてこの世で自分が果たすべきことについて、じっくりと向き合ったことがありますか? という質問です。
私はあります。なぜ、どうして、何のために今自分は生きているのだろうか、そんなことを考えたりするのです。自分自身が生きる理由を探すことが、果たして自分に何らかのメリットをもたらすのかどうかは分かりません。だけど、無意識に考えてしまうのです。
いつも答えは一つです。
生きる理由なんて、ないんじゃないか――。そう答えが告げるのです。
つまりそれは答えが出ないという答えなのです。何のために私は生まれ、この世の理に従い時を過ごしているのか。見つけ出すことができないのです。何も感じないまま、ただ淡々と過ぎていく一日を見つめ、明日を迎えるような生活しかできないのです。
いつからこう考えるようになったのかは分かりませんが、きっとそれは気にするほどのことではないでしょう。こんなことを考えるようになったことが問題なのだと思います。
だけど、頭では分かっていても、考えてしまうのです。
では、あなたには、何故私がこう考えるようになったか、分かりますか? 『生きる理由を見つめ直すようになってしまった』理由です。分かる人にはすぐに理解してもらえるのではないでしょうか。分からない人には……無理に分かってもらおうとは思いません。何故ならそれがその人の生き方だと思うからです。
だけど、ひとつだけ、これだけは言わせてください。
そんなに、私は邪魔な者ですか? 生きていてはいけない者なのですか?
そして――。
私を蔑むことが、そんなに楽しいですか――?
「なあ、クーポン使って二個買うのと素直に一つ買うの、どっちがいいと思う?」
日曜の昼はファーストフード。それは俺らの常識といっても過言ではないほど見慣れた環境設定だった。もちろん何かを食べてばかりいると財布にも体にも優しくは無いので、ドリンクバーを頼んで過ごすのがほとんどだ。今日は珍しく昼食をとったのだが。
俺の親友、黒木充はデザートにクーポンを使うかどうか迷っていた。
「そろそろ自重したらどうだ?」
「今日までなんだよ使えるのが。だけど、かといって二つ食べきれるかというと自信がない」
「じゃあ俺が食う」
「だめだ」
なんと冷たい親友だろうか。コイツほどケチなやつはなかなかおるまい。
「ええい男は度胸だ、使ってやる」
ファーストフード店には大抵置いてある、テーブルの端にあるボタンを押す。
充はクーポンでショートケーキとレアチーズケーキを頼むと、床で腕立てを始めた。少しでも腹を空けようという無駄なあがきだ。腹筋の方が効果的ではないだろうか。
「今日はどうする?」
俺は充に意見を求めた。
毎週日曜にここへ来るわけじゃないが、ここへ集まった時はどこかを目指して街中を徘徊する時である。
基本的には買い物や別の友人の家に遊びに行ったりする程度だが、時には山へ行ってみ
たり遠い場所を目指して出発することもある。家にこもってゲームするより、外に出て徘徊
する方が気持ちいいという考え方の合致が、俺と充が仲良くなったきっかけだった。
「とりあえず買い物でもするか。ちょうど一昨日出た新譜も欲しかったし」
「よし。賛成だな」
天気もいいので出かけるには持って来いだ。俺も買いたいものがあったし、好都合だろう。
「じゃ、とりあえずそれは俺が食ってやる」
運ばれてきたレアチーズケーキをみて俺は言った。
「食ったら殺す」
笑顔でフレンドリーに言うから逆に殺気が引き立つ。その瞳の奥には煉獄の炎が渦巻いているのだろう。相変わらずケチなやつだ。
仕方がないのでさっさと先に勘定を済ませて外に出る。もちろん払うのは自分の分だけだ。
時刻はちょうど一時を過ぎたあたりだった。春の日差しはそこはかとなく気持ちのいいものである。車の通った後の排ガスさえ除けば。
自転車のサドルに腰かけ、充を待つことにする。ちゃんと食べきれるなら五分もかからない量だろう。
「さーて、どうすっかな」
思い切って外に出たものの、もちろん暇がつぶれる保証などどこにもない。サドルに座ってボーっとしていた。
「…あ、あの」
「ん?」
唐突に背中の方で声がした。自分に話しかけているのだと理解したが、何故話しかけられているのかは皆目見当がつかない。知らない女の子だったからだ。
「俺に用か?」
年は同じくらいだが、少しおびえた表情をしていた。俺ってそんなにごついのか?
「…あの、ここへは、どう行ったらいいんでしょう?」
何やらチラシを手に持っていた。見る限り洋服店のチラシのようだ。この店の場所なら知っていた。俺も利用したことがあったからだ。
「ああ、この店なら、この次の信号を右に曲がってまっすぐ行くと右手にあるよ」
「そうですか。…あ、あの、教えて頂きありがとうございます」
一つ気がかりだったのはそれが一般的な服を扱っている店ではなく、学生服の店だったことくらいだろうか。俺の学校では新学期を迎えて二週間がたっている。他の高校もそろそろ入学式は終わっているだろう。
「いや、別にいいけど君、入院でもしてたの? 今から制服を買うなんて」
「あの、いえ、えっと、はい、そ、そうです」
今の解答はどうとらえればいいのか。『いいえ』と『はい』が両方入った日本語というものを俺はまだ学習していないはずだ。というか、きっと未来永劫そんな日本語は存在しないだろう。
「どっち?」
「あ、えっと、…入院してました」
そうか。それなら仕方ないだろう。
「じゃあ頑張ってな」
「ど、どうもありがとうございました」
そういうと女の子は去って行った。
「大変だな」
もう少し早めに退院できれば入学式に間に合ったのだろう。ちょっと可哀そうだ。
「おいおい、ひどいぜ。先に行っちまうなんて」
充が走ってきた。どうやら食べ終わったようだ。ちなみにこいつの事を可哀そうだと思ったことは一度もない。
「おつかれ。よかったなクーポンつかえて」
「ゲフッ、流石に食い過ぎの領域かも知れない」
人間腹八分目がちょうどいいのに、無理して食べようとするからだ。たまに間抜けな生きざまをさらす友人をみるたびに俺は笑っていた。
「とにかく行こうぜ。買い物に」
二人は自転車に乗って走り始めた。
そよぐ風が頬をなでる。桜の花びらを散らせながらゆっくりと吹きぬけていく。
充は少し脇腹を押えているが気にしない。俺に譲らなかった罰だ。
その日は新譜を買った後、適当に街をぶらぶらして帰ったのだった。
この辺で自己紹介といこうか。
俺の名前は天崎和麻。これと言って特徴があるわけじゃないが、一応は高校二年生だ。
高校生活を楽しめているって言ったら、嘘になってしまうかもしれないが、かといって憂鬱なわけでもないぜ。友達もいないわけじゃないし、勉強も辛いわけでもない。部活動はやる気が起きないがな。面倒だし、キツイし、自由時間が減っていく気がして仕方ないんだよな。おっと、こんなこと言うと部活動を楽しんでいる各々の生徒にいろいろと言われてしまいそうだから、この辺にしとくよ。




