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8 ギルド内での声掛け、ナンパ行為は禁止です

「こんにちは~。アリスちゃん!なにか私向けのお仕事ないですか?」


 私たちは冒険者ギルドに来た。どうやらルゥの用事というのは仕事探しのようだ。田舎のギルドだと思っていたけど、ギルドの中は予想以上に賑わっていた。種族も人間族だけではなく亜人もチラホラ。以前の世界でお客さんとして人狼族の人とかはアトリエに来店があったけど、こういうところで知り合った人だったのかもしれない。

 ルゥはギルドで働いてる人に用事があるらしく、私はギルドの中を歩いてみることにした。

 壁にはいろいろな張り紙がある。


 ・王都騎士団の演習によりポーションを求む

 ・臨時講師求む。魔法知識のある方。中央魔術学園(アカデミー)臨時講師

 ・宮廷錬金術士募集!万能回復薬(エリクサー)が最低でも作れる方募集!

 ・回復魔法が得意な方!臨時パーティーに入りませんか?希望次第では加入もOK!


 他にもたくさんあるけど、私は張り紙の文字を読むのに疲れて目が回ってしまった。こんなに多くの文字を一気に読んだことなかったし、文字が汚くて読みにくい。

 手近な椅子に座って、ボーッと遠目にルゥを眺める。猫だったころは基本アトリエで留守番だったから、こんな風にアトリエの外で活動している姿を見るのは初めてだ。アトリエの中と違って、大変そうだなぁ。というのが正直な気持ちだった。


「そこのお嬢さん、なにをしてるんですか?」


 …


「あれ?聞こえてる?おーい。そこの黒髪の女の子ー?」


「あ、ごめんなさい!私ですか?!」


 不意に誰かに声をかけられた。私は使い魔の時から基本的にルゥとしか話さなかったので私に話しかけるような人がいると思わなかったからだ。驚いた私は声がする方を見た。


(軍…服?)


 一瞬ドキっとした。そこには王国兵のようなガッチガチの鎧を着ているような兵隊ではないが、むしろそれよりももっと格上の士官や将校が身に纏うような白を基調としたコートを着る人間の男が3人。


「こんなところで、あなたみたいな若いお嬢さんがいると思わなかったから気になって声をかけたんだ。だれか、連れがいるのかい?」


「は、はい。友人の用事で一緒に来ました。…その、あなた達は誰ですか?」


 真面目そうな男が一人、その横でへらへらしているのが一人。私に話しかけてきた一番年上でなんか偉そうな感じの人が一人。軍隊の関係者なら、誘拐や密売なんかの組織みたいな怪しい連中じゃないとは思うけど…。


「お前っ…団長になんて無礼な!」


「やめろオスカー。彼女は当然のことを言っている。俺たちが悪い。…すまない。私はセドリック。この国の聖騎士団団長だ。この2人はオスカーとルカだ、2人とも気のいい奴なんだ。悪く思わないでくれ」


 聖騎士団…今まで一度も接触なんてなかったしアトリエに来たこともなかった。それがなぜこんなところで私と?

 それに聖騎士団といえば王国兵の上級ポジション。王族直属の部隊って聞いたことがあるけど…。生で見るのはそういえばこれが初めてね。


「私はシロナ。シロナ・ノワールよ。よろしく」


「シロナというのか。先ほどはすまなかった。気を悪くしないでくれ。何分、私たちも冒険者ギルドというのは初めてで作法もなにもわからなくて困っていたんだ。今日は依頼の進捗を聞きに来たんだが、どこに行けばいいのやらわからなくて、そんな時に君が見えてな。ルカが、君はなんとなく話しかけやすそうだから聞いてみよう、と言い出したんだが、不愉快な思いをさせてしまったみたいで申し訳ない。」


「すんませんした!!」


 隣のヘラヘラしている男が、セドリックに呆れた目で見られると気まずくなったのか、一礼をした。

 思っていたよりも、悪い人間たちではないらしい。まぁ、確かに王族直属の騎士団がこんな庶民のギルドに来ても浮くし、誰も関わろうとなんてしないよね。実際に私の周りには誰も寄ってこないし。私が話しかけやすそうっていうのがイマイチちょっと納得できないけど。


「別にいいですよ。気にしてないし。…依頼のことだったら、あそこじゃないですかね」


 一瞬迷ったけど、私はルゥがいるカウンターを指さした。もし聖騎士団で、今後ルゥの事件に役立ってくれるなら恩を売ってもいいと思ったし、意地悪して目をつけられてもまずい。それにそもそもよく見れば『受付』と書いてある。遅かれ早かれ気がついただろう。


「あ、ほんとだ!受付って書いてあるじゃないっすか!!それに受付嬢っぽい可愛い女の子もいるし!団長!俺先行ってますよ!」


 ヘラヘラ男は団長ともう1人を置いて上機嫌に歩いて行った。


「ルカ!お前待て!団長がいるって言うのに!!…はぁぁ」


 怖い顔をした男が伸ばした手は届くことがなかった。ため息をつきながら男は頭を押さえていた。

 わかる、ルゥが朝寝坊して昨日の服を脱ぎ捨てて行く度に私も猫なりに大変だったし、食べかけのお菓子が錬金釜に入った時なんて、「ちょっとくらい大丈夫でしょ」と言ってそのままポーションを作り続けているのを見て、ダメでしょ…って思った時だったり、どこにでも子供っぽい人間はいるんだな。


「ふふ…あははっ大変なんですね。騎士団さんも」


 私はオスカーと呼ばれた人と自分が似ていると思って笑えてきてしまった。王国兵が怖い印象だったから、騎士団なんて恐怖の塊だと思っていたから、こんなユルユルな感じとは思わなくて意外だった。


「いや、あいつが特段変なだけで他は真面目というか、…あー、団長も何とか言ってくださいよ」


「まー、お前とルカはちょっと問題児かなぁ」


「じ、自分もですか!?自分はあんなチャランポランな奴と違いますよ!この命、団長や王族、この国の為に使う覚悟で聖騎士やってますから!」


「はいはい、お前はちょっと重いんだよなぁ」


「あははっわかりますよ!私もこの命、主のルゥの為に使う覚悟はとうにできていますから!」


「ルゥ?…そのルゥというのは、今こっちに向かってきているお嬢さんのことか?」


 セドリックが私の後ろに視線を向けた。私が後ろを向くとルゥが大急ぎで戻ってきていた。


「あ、ルゥ!もう用事は終わったの?」


「シロちゃんは私の友達なんです!あなた達、シロちゃんに何か用ですか!?へ、へへ変なことしてませんか!?」


 ルゥは顔を赤くしながら、私とセドリックの間に小刻みに震える足で立った。怒っているような、ムキになっているような、ちょっと怖いといういろいろな気持ちが混ざった顔だった。どうやら私がギルドでチンピラみたいなものに絡まれていると思っているらしい。


「ふむ…。きみがルゥ。か…。友人思いで、若いのに立派な人だな」


 セドリックがルゥの目を見ながら、少し間をおいて何かに納得したかのようにうなずいた。


「当たり前ですよ!ルゥが守るって決めた人ですからね!」


「え?何を言ってるの?ちょっとよくわかんないんだけど…守る?え?」


「私はセドリック。聖騎士団団長のセドリック・ローゼンフェルトだ」


 セドリックがコートを軽く払い、姿勢を正すと胸に手を当て、ルゥに軽く頭を下げた。

 それを見たルゥは、『あわわわわ!!』と半泣きになってセドリックに飛びつき謝っていた。

 オスカーも一瞬どうしたらいいのかわからず困っていたが、セドリックの「助けてくれ!」という言葉を聞いてルゥをなだめながら引き剥がそうと必死だったが、ルゥが泣きながら抵抗したためうまく引き剥がせず、セドリックの立派なコートが鼻水と涙でベチョベチョになっていく姿を私は面白くて見ていた。


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