6 体温が恋しい
人の体温が恋しくなる…。それは人間も猫も同じだった。
昨日、私はルゥのお手伝いをする、という約束でこのアトリエに住むことになった。使い魔としてではなく、同じ人間としての生活は初めてだったから、驚きがいっぱいだった。
お風呂もびっくりした。熱い湯に入ることが怖い。しかも頭からルゥは水をかけてくるし、服が汚れているからと洗濯も教えられた。いつもなら舐めれば済むのに、正直人間とは面倒な生き物だった。夜寝る時はいつもの窓辺で寝ようと思ったけど、明らかに体のサイズが合わないし、なにより猫の時よりも寒い。ルゥが使っている布団というものが温かくて心地よかった。
でも、私はやはりルゥの足元が一番温かくて好きだ。今もこうしてルゥの布団に潜り込んで体を丸めている。
ルゥの体温を感じるし、ルゥのにおいがするし、ルゥの音が…、声がする。私はご主人が大好きなのだ。
ただ、たまに欠点なのは…
「いだっ!!」
猫の時からたまにくらっていたこの寝返りキック。思っている以上に攻撃力が高い。人間の体になって受けてもそれなりに痛い。
でも、未来のことを考えるとこのくらいは全然我慢できるし、むしろ幸福感すら覚える。
私はルゥの足元からお腹、胸、と上に向かって進み、布団から顔を出してルゥの顔を見ると、彼女と目が合った。
「な、に、を、しているのかな?シロちゃん?」
にっこりと笑ったルゥの顔は可愛くなかった。それどころか怖かった。一瞬で怒っている事が分かると私は急いで布団から抜け出そうとするも、ルゥに捕まれて身動きができなくなった。猫の時はヌルヌルとかわすことができたし、もっと俊敏に動けていたのになんと脆弱な身体…。
「ちょ、ちょっと朝のルーティンを…」
「そんな日課があるわけないでしょ!!まったく。小さい子や動物じゃないんだから自分のお布団で寝ないとだめだよ」
動物なんだけどなぁ。もともと猫だったし、前はこうやって一緒に寝てたから大丈夫なものだと思ってたのに…。人間同士になると一緒のお布団で寝るのはよくないのかなぁ。
「ごめんなさい。|使い魔だった時前は同じように寝てたからいいんだと思って。」
下を向きながらしょぼんっとした私を見て、ルゥはちょっと考えて少し困ったように、私の頭を撫でながら優しく言った。
「まえ?うぅ~ん。そうか。シロちゃんは一緒に寝たいタイプの子なのかな。それなら、ちゃんと寝る前に一緒に寝ようって言ってくれれば一緒に寝るから、今度はいきなり潜り込んでこないでね?」
「う、うん!ありがとうご主人!私、朝ごはんの用意をしてくるね!!」
私は自分でもわかるくらいにやけた顔で笑うと、嬉しくなって部屋を飛び出していった。
◆◇◆◇◆◇◆◇ルゥ目線◆◇◆◇◆◇◆◇
「行っちゃった…。それにまたご主人って。変わった子だなぁ」
部屋の外に飛び出していくシロを見送ると、ルゥはぽつりと呟いた。
(急に足元に何か気配がした時は何かと思ったけど…シロちゃん、昨日のお風呂の時や洗濯の時とかもちょっと普通じゃないんだよなぁ。どんな生活してきたんだろう?)
ルゥはクローゼットから着替えを取り出しながら、シロのことを考えていた。お風呂のことを知らない。洗濯もできないという事も不思議だし、以前は他の錬金術士の手伝いをしていたというし、正直謎の多い子だと思っていた。
「まぁ、あまり人のことを悪く考えるのはよくないよね!シロちゃんはいい子だし!これから仲良くなって、もっとお互いのことを知っていけば大丈夫だよ!うん、そうしよう!」
ルゥは着替えが終わると考えていたことがうまくまとまらず、半ば投げやり気味に部屋を出て、シロのいる1階へ向かった。




