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3 ご主人との出会い

「…かはっ!!んぐ!…ぜはっ!!はー、はー…」


 寝ていた私はその場に飛び起きた。

 いつもはご主人が死んで、魂がリンクしている私も静かに死ぬ。というパターンだったけど、殺されたのは初めてだったし、こんなに苦しいものだったなんて…。

 とりあえず周囲を見渡してみると、そこは見覚えがある場所だった。

 木漏れ日のある森の中。大きな木の根元でお昼寝をしていて、ご主人と出会う私の記念すべき日。


「苦しかった…。やばい…あいつがあんなヤバいやつだったなんて」


 私は呼吸が落ち着いてくると再びその場に倒れこむように横になった。

 大きな深呼吸をすると、そっと目を閉じてさっきの光景を思い出す。


(…ご主人に会いに来るあの男。ご主人のことを知っているの?どこかで面識があったってこと?…大柄な人間が複数。あれは明らかになにか目当てのものがある感じだった。物取りってわけじゃなくて、ご主人の()()()()()()()を探してたんだ…。…ご主人、また守れなくてごめんね)


 この世界で、今度こそご主人を守ろうと決意するために死ぬ直前のことをなるべく覚えておこうと思いだしていたら、急に寂しくなって涙がこみ上げてきた。

 木々の隙間から見える青い空が滲んで見えてくる。

 私は指で涙をぬぐいながら悔しさに任せて泣き続け…泣く?


「…ん?ゆび?」


 私は目を腕でこすり、指を見る。


「んなっ!!なんでぇーー!!?」


 叫び声が静かな森の中に響いた。そうだ。今はご主人と契約前だ。喋れるはずがないんだ。それなのに喋れている。しかも指、手、腕…なんなら足も!?

 私は自分の手で顔、髪、胸、お尻、足、お腹など様々なところを触りまくった。


挿絵(By みてみん)


「人間だ」


 一通り自分の確認が終わると、私はその場に腰が抜けたように座り込んでしまった。こんなの、転生してきた中で初めてだった。いつも普通の猫に生まれ変わるのに、なんで人間に生まれ変わってるの?しかもこの格好…、錬金術士?なの?


「ダメだ…理解が追いつかない。なんでいきなりこんな姿に…これじゃあご主人の使い魔に…っ!!!」


 そうだ、人間じゃ私はご主人との使い魔契約ができない!この世界で私はご主人の使い魔になれないの!?どうやってご主人のサポートをしたら、どうやって守ったらいいの!?


「あわわわ…と、とにかくご主人のアトリエに行かないと!今日ご主人と初めて会う日なんだからとにかく行かないと、って!?ふにゃあぁぁ!!!」


 私は立ち上がり歩き出そうとするも、バランスがうまく取れなくてその場に倒れこんでしまった。


(あ、歩けない…)


 今まで四足歩行だったのが急に二足歩行になって、うまくバランスが取れなかった。

 私は生まれたての動物のように足をプルプルと振るわせながら木をつかみゆっくりと立ち上がり、進んでは転んでを繰り返しながらご主人のアトリエがある方へ進んでいった。

 人間て、なんて不自由な生き物なのかしら…。




 しばらく進むと、なんとなくふらつきながらも歩く事ができるようになってきた。

 だいぶ服は汚れてしまったし、髪もボサボサ。顔も泥まみれ。

 そう言えば、初めてご主人に会った時もアトリエの中がホコリまみれで体が白くなっちゃって、それを見たご主人が私を『白猫』と勘違いしてシロって名前にしたんだよね。いつも私、ご主人に最初会う時汚いじゃん。

 そんな事を思い出しながら歩いていると急におかしくなって口元から笑みがこぼれだした。


(変なの。猫の時はこんな事おもったこともないのに。人間になったからなにか変わった?のかな)


 ご主人のアトリエまでもう少し。私は慣れない筋肉を使って限界が来そうな足と腰にムチ打ってフラフラとしながらゆっくりとした上り坂に足をかけた時だった。


「ちょ、ちょっと!!あなた…大丈夫ですか!?」


 私の後ろから、聞き覚えのある懐かしい声が聞こえた瞬間、身体がビクンっと大きく揺れた。

 声がなんとなく、まだ幼いというか、若いというか…。なつかしい声だった。


(ご主人…)


 私は振り返ろうとしたものの、うまく足を踏ん張れず、その場に崩れるように倒れてしまった。

 後ろを見ると、傾いた陽の光が逆光になって見にくいが、そこには確かに私のご主人がいた。


「あーー!!ちょっと、フラフラじゃないですか!どうしちゃったんですか?…立てますか?」


 駆け寄ってきたご主人は私に手を伸ばしながら困ったような顔をしていた。初めてアトリエで私と会った時と一緒だ。『お外に出ていってもらうのはかわいそうですし…私の使い魔になってくれませんか?』と言われた他の世界で見せていたあのちょっと困った顔と同じだった。


「…?」


 手を差し伸べるご主人を見上げていると、急に涙があふれ出してしまって、私はその場でわんわん泣き出してしまった。




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