20 北の森の迷宮
私たちは森の中を歩いていた。
私とルゥの他に男が2人。オスカーとルカだ。彼らには騎士団の服を脱いでもらって町で売っていた安めの防具と服、装備は騎士団で使っている剣に近いものを買ってきた。
「こんなので、本当に奴さん釣れるかねぇ」
「自信はないけど、多分来ると思います」
ルカは既に飽きたように大きなあくびをしていた。
「それにしても、よく二人が私たちと冒険に行くことを団長さんが許してくれたね」
「それもそうですね、セドリックは大丈夫だったのですか?」
「いや、案外とんとん拍子だったぜ?嬢ちゃんに作戦があるって言うなら勝手にしろ。って感じで俺ら二人で護衛に出ていいってことでさ。いやー、今日副団長も来る日だったから憂鬱でたまらなかったから、森で散歩なんてこんな楽な任務…いやー、助かったぜー」
副団長?そうか、団長がいるなら補佐として副団長がいてもおかしくない…か。
今まで見たことないけど、どんな人なんだろ?っていうかこのお気楽男がそこまで嫌がる副団長ってどんな人なのか気になるな…。
「シロちゃん、もうすぐ見えてくるよ!北の森の迷宮」
ルゥが先頭を歩くオスカーのもとへ小走りで走ると、大きく手を振っている。
私たちがなぜ今北の森の迷宮へ向かっているのか?というのは今朝早くに遡る…。
~~~~~数時間前~~~~~
「アリスちゃん!おはよう!」
「だからアリスちゃんはやめてって…はぁ。はいはいおはよう。こんな早くからどうしたの?」
彼女は目を輝かせている、ルゥを見て諦めたようなため息をついた。なるほど、アリスちゃんというのは公認ではなくルゥが勝手に呼んでいるあだ名なのか。気を付けよう。
「おはようございますアリステラさん、ちょっと申し訳ないのですが、この書簡を読んでいただけますか?」
私はオスカーから今朝預かったセドリックからの手紙を手渡した。内容は簡単、オスカーとルカを王都から来たCランクの冒険者ってことで、一時的に私たち2人とパーティーを組んで北の森の迷宮へ探索へ行く。という事にしてほしい。という内容だ。ギルドが管理している北の森の迷宮や迷宮には騎士団といえど、無許可で勝手に出入りしていいものではない。だが、誘拐犯を捕まえるためのおとり捜査、という点でギルドに協力してほしい。という内容が書いてある。
アリステラさんは書簡を読み終わると、あたりに目を配りまだほとんど冒険者がいないことを確認する。
「わかりました。この内容であればギルド長も拒む理由はないでしょう。今不在なので後で私の方からギルド長へこの書簡は渡して内容も伝えておきます。私は何をしたらいいですか?」
「ひとつだけ、ご協力いただきたいのですが、私たちが北の森の迷宮へ王都の新米冒険者2とパーティーを組んで素材採取に向かった。となるべく多くの冒険者へ、不自然にならないようにふれまわってほしいんです」
「冒険者へ?…それはどういう意味ですか?」
「そのままの意味です。冒険者はあらゆるネットワークを持っていますし、どこに私たちの話が広がるかわかりません。彼らのネットワークの先に、今回の誘拐事件の犯人、もしくは末端に繋がる可能性があるなら。という事でお願いしています。私たちもそれを踏まえておとり捜査に協力しているのですから」
普通であれば、冒険者へ伝えてね、というと冒険者の中に誘拐犯がいる。と思われがちだし、誰でも安易に想像がつく。だからあえて、冒険者の交友関係、さらにはその先の方にいるかもしれない。という含みのある言い方で伝えることにした。
まぁ、昨日の3人組の冒険者が99%犯人だという事は前世の経験上わかっているけど、ドストレートに言う訳にもいかないし、うまくごまかせたんじゃないかな。
「そうですね。理にかなっていると思います。失礼しました。私の思慮が足りなかったと思います。失礼をお許しください」
睨みつけるような眼差しは、私が理由を説明すると少し目尻が下がったように思えた。誤解…いや、私の言い訳をあらかた納得してくれたようだ。
「いえいえ、別にそんな気にしていませんので大丈夫です。それではよろしくお願いします」
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と、いう事が朝にあった。今頃はギルド内でアリステラさんが世間話に混ぜて話している頃だろう。昨日の3人組がこの話を聞いて食いついてくれれば御の字だ。
「ついたぁ~!!」
ルゥが先頭で声をあげた。木々の向こうには森には不釣り合いな大きな門が見える。
この先は私も未経験の場所だ…。気を引き締めていかないと。
私はゴクリ、と喉を鳴らしながら3人のあとについていった。




