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2/23

2 猫+木材=? 

「あははは!やっぱり聞こえてたんだね黒猫さん。無視するなんて嫌だなぁ」


 男が笑うよりも先に、私は『フギャァ!!』と叫び後ろに大きく飛んで距離を取った。コイツはヤバい。私たちのこと、何かを知っているし、絶対にご主人に合わせてはいけないんだ。直感がそう言っている。


「フゥーーー!!!」


 私は爪、牙をだして精一杯の威嚇をするも、所詮は猫の威嚇。あの男は何とも思っていないようだった。


「ジャマさえしなければ別に君を殺したりしないよ。ちょっと君のご主人様に会いたいだけなんだけど。いつもこの時間はアトリエにいるはずだよね?」


 私の後ろにある扉の向こうにはアトリエがある。この部屋はご主人が錬金術を行う場所で、中にはレシピ本や錬金釜…の他にご主人の脱ぎ捨てた服や食べかけのお菓子、どこで拾ってきたかわからない変な草などいろいろ置いてある。つまり汚い!

 この部屋を見られてしまうとご主人もきっと恥ずかしいはず!よって私はここを死守しなければならない…って、違うの、そうじゃなくてなんでこいつが私のご主人の行動パターンを知っているか?という事の方がよっぽど問題!でも私だってバカじゃないんだ!何回も繰り返して、大好きなご主人を殺される同じパターンを踏んでいるから、『私が残ってご主人が留守になった場合』というシチュエーションを作ってみた!これでコイツは今日ご主人と会えないはず。そうすれば帰るしかない。私はコイツがいなくなった後に急いでご主人を探して合流、二度とここには戻らないし、逆にうまくいけばコイツを空き巣として捕まえることができるのではないか?という新しいルートを作ってみようと思ったわけ。シロちゃん賢い!


「おかしいなぁ。ここ数年、ずっと君たちを監視してきたけどこの時間はアトリエにいる確率が99%なのに。…君がご主人を逃がしたの?」


「…」


 私は黙って睨み返した。

 数年間も監視をしてきた!?ずっと?そんなに前から仕組まれた事だったの?あのご主人はちょっと抜けているし、頭も弱いけど悪いことはしないし、ましてや恨みなんて買うような人じゃない。それなのになんでこんなヤバそうなヤツから狙われてるの!?


 パリーン


 私の意識が目の前の男に集中し、頭の中では疑問をまとめている最中だった。アトリエの窓ガラスが割られた音が聞こえて急いで私はアトリエの中へ入っていった。


 アトリエの中では全身黒ずくめの人間が数人、手にナイフを持って部屋の中を物色していた。人間たちは一瞬私へ目を配るも、相手にすることはなくそのままなにかを探し続けた。私は大きな錬金釜の上にある棚の上に駆けのぼると、男たちが何をしているのかを観察することにした。今までとは違う流れだったからだ。今回もまたご主人は殺されてしまうかもしれない。それでも私はいつか必ずご主人を助けたい。今は情報が少なすぎるんだ。こいつらが捜している物。目的がわかれば次の人生ではもしかしたら…ご主人を救えるかもしれない。

 私はそう思って男たちの行動をひたすらに観察した。

 人間の1人がご主人の脱ぎ捨てた洋服を手に取るもすぐに捨てた。脱いだ服に興味はないらしい。

 違う人間はご主人の残したお菓子のテーブルに近づくと、全て床に叩き落した。食べかけにも興味はないらしい。

 ご主人が拾ってきた草や素材を調べる人間もいたけど、すぐに見るのを止めちゃった。

 こいつらはなにが目的なんだろう?


 ガタっ!!


 そう思った瞬間、急に棚が崩れて錬金釜の中へボトボトと落ちていった。私はなんとか木の棒に爪が引っかかってぶら下がっている状態だが、今にも錬金釜の中に落ちてしまいそうだった。


「みなさん。この猫、油断してはいけませんよ。この猫は使い魔ですから。…いったんその場で動かないでください。私たちが何をしようとしているか探ろうと観察しているのかもしれない」


 私に話しかけて来た男が声を出すと、その場にいた全員が動かなくなった。入口にいたはずなのに、目の前の人間達に集中しすぎて、気配に全く気が付かなかったなんて…。


「お前の目的はなに!?なんでご主人を狙うの!?」


 私が声を発すると男は驚くどころか、嬉しそうに口を歪めながら答えた。


「ジャマなんですよ。あなたのご主人様がね。だから消えてもらう。ただそれだけです」


 狂気に満ちたその顔は背筋がゾワっとするものだった。ネチッコイ、心の奥の方から湧き上がってくるような嫉妬染みた声が私の耳にへばりつくような感じがした。


「普通の使い魔なら相手にしませんが、あなたは少し不思議ですね。いろいろ知りすぎているし、妙に勘が鋭い。()()()…。という事はないかもしれませんが、未来が視えている可能性があるあなたを野放しにすることはできませんので、ここで死んでいただけませんか?」


 未来が視えている…じゃなくて未来を体験ならしてるんだけどね、お前のせいで!と言いたかったけど私の情報を渡したくなかったのでとりあえず黙っておくことにした。


「木材と猫を調合したら、なにが出来上がるのでしょうね?」


 男はチラッと錬金釜に視線を送った後、両手で木の棒にぶら下がっている私へと手を伸ばしてきた。


(コイツ…正気じゃない!!)


 恐怖を感じた私が声にならない悲鳴を上げて上に駆け登ろうとした瞬間、男の両手に体をつかまれてしまった。

 暴れて逃げようとしても、噛みついても引っ掻いても男はびくともせず、私を錬金釜の真上に連れて行った。


「いつか必ず、…いつかお前を殺してやる…!!」


 これから自分がどうなるのか…考えただけでも恐ろしいが、私はまた時間を遡るんだと思う。またご主人と出会うその日に戻るだけ…。そう思うと、死ぬことへの恐怖よりも、目の前のヤツを切り裂きたい。という気持ちの方が勝っていた。

 精一杯睨みつけるも、男は返事を一切せず、ただ口元を歪めて笑いながら私を釜の中へ落とした。

 錬金釜の中へ落とされた私は、思った以上に粘度の高い液体に体の自由を奪われ、もがいてももがいても浮上することができなかった。

 窒息で苦しみもがいていた中、明かりが消えて夜の闇が世界を覆うように、目の前がゆっくりと歪み、暗くなっていった。


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