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10 詐欺じゃないよ。合法です。

「いや~。シロちゃんの提案、すごいねぇ。わたしびっくりしちゃったよ。まさか、あんな方法をすぐに思いついちゃうなんて」


 大きな錬金釜に薬草などの素材を入れて、ゆっくりとかき混ぜながらポーションを調合しているルゥは感心しながら呟いた。

 昨日の夕方から作り続けて丸1日。今70個ほどのポーションが出来上がった。セドリック騎士団長からは、なるべくたくさん頼みたい。と、あればあるだけ買い取る!という約束があるので、ひたすらに作ればそれだけ儲かる。ルゥには悪いけど、今は寝る時と食事以外は休まず働いてもらっている。

 ポーションには4種類ある。

 治癒薬(ポーション)

 上級治癒薬(ハイポーション)

 月霊薬(ルナポーション)

 神霊薬(エリクサー)

 ルゥが作れるのはポーションのみ。世界線によってはハイポーションも作れるようになる世界もあったけど、素材が集まらなかったり、作る理由がないっていうのもあるからあまり上達はしなかったわね。

 ポーションで回復できるのは体力、切り傷や打撲みたいな軽度の怪我だけ。大怪我になってくるとハイポーションが必要だし、もっと重傷になったり、病気になるとルナポーション以上が必要になるわ。

 今回はあくまでも『演習』という事だから、騎士団の人数分くらいのポーションは最低限用意させた方がいいわね。


「はいはい!錬金術士様はキリキリ働く!どんどんかき混ぜてドンドン作ってください!作っただけ全部売れちゃうんですから!」


「ひ、ひぇ~~~!!シロちゃんて、なんか師匠みたいっ!もう腕が痛いよぉー!!」


「泣き言は言わない!騎士団に恩を売るチャンスなんだから、死ぬ気でかき混ぜて!」


「か、かき混ぜればいいってわけじゃないんだよぉー!!もぉ無理!死んじゃう!!ちょっとくらい休ませて!」


 そういうとルゥは床に座り込んでぐったりとしてしまった。さすがに今日も約7時間、ずっとかき混ぜていればこうなるか…。多分、ルゥが作るポーション2年分以上は今日作っている気がする。さすがに疲れたか。

 私はぐったりと魂が抜けかけているルゥを見ると、『さすがに悪かったか』と思い、お茶を淹れることにした。


「休憩はちょっとだけですよ?まだまだ作るんだから!」


「ふ、ふぇえぇぇ~」


 台所から声をかけると、ドアの向こうの方から今にも消えそうな声が聞こえてきた。

 私は昨日、セドリック騎士団長相手に取引を申し出たのだ。取引と言っても別にやましいものではないし、合法だ。しかもルゥの知名度も今回の件で上がるだろう。今までの世界にはなかった出会いも増えれば、生き残るきっかけに繋がるかもしれない。そう、私は昨日セドリックにこういったのだ・・・・・・


 ~~~


「ねぇ、セドリック騎士団長。私とひとつ、取引をしませんか?」


「取引?君と私が?」


 視線だけチラっと私の方へ向けて、脱力したままセドリックは続けた。


「いいかい?明後日までに団員の人数分以上のポーションがいるんだ。多めに見て100は欲しい。調合できるのは明日1日。これでは今から数人の錬金術士が名乗り出てくれない限り作ることは難しい、なんていうのは僕でもわかるよ。でも実際はどうだい?オスカーにも確認してもらったが、ふたを開けたら今のところ0。ギルドが何を考えているのかは知らないが、これではもう間に合わないだろう。それでもシロナ。君にはこの状況を打破できる方法があるって言うのかい?」


「ええ、あります。このくらいなんの問題ありません」


「こっ、小娘!お前団長に」


「かまわない。続けてくれ」


 オスカーが食ってかかってくるのをセドリックが制止する。


「だ、大丈夫なの?シロちゃん。騎士団の人相手にそんなこと言って…」


「大丈夫よ。任せといてルゥ。…単刀直入に聞きます。セドリックはルゥの作るポーションは信用できませんか?ランクDで、ギルドからもお断りされるような駆け出しの泣き虫でなんかポンコツでこのぽわーっとしたおとぼけ錬金術士はダメですか!?」


「ひどいシロちゃん!そんな言い方をしなくたっていいのに…」


 私はルゥを指さし、ルゥがどれだけ下っ端なのか。どれだけダメそうな錬金術士なのか!?という事をわざと強調しながら言った。彼女は真に受けてショックな顔をしているが今はそれにかまっている時ではない。


「そ、そりゃあ…。ごほん!ギルドから任せることができない、という錬金術士を全て信用する、というのはちょっと勇気がいるというか、なんというか、なぁ?」


 大きな咳払いのあと、気まずそうに眼が泳ぎ、オスカーの方を見ながらなにか言いたそうな顔をしているが、それに気が付いたオスカーはわざと視線を外して、セドリックを見ないようにしていた。

 言わずとも、オスカーも気持ちは同じ、という事だ。

 そりゃあ、Dランクで、今日会ったばかりの小娘錬金術士を信用できるわけない。でも、私は何回も、ルゥがポーションを作っているところを見ているし、一番簡単な治癒薬なだけあって、失敗するところも見たことがない。依頼を受けることさえできれば、ルゥは結果を残せるんだ。ここからが口説き落とす本番…。


「じゃあ、ルゥに頼んでみてくださいよ。100本作ってくれって。それで、依頼の報酬は今の1.2倍もらえませんか!?」


「そ、それができないから困っているんだろう。100本でも200本でも、作ってくれるのであれば1.2倍でもなんでも報酬を出そうじゃないか!そんなことができるのであれば、の話だがな!」


「できますよね?ルゥ。指名制度を使えば今から予約を受けてすぐ作ればいいんじゃないですか?」


 私は壁の張り紙の中から一枚、くたびれてボロボロになりかけているものを指さした。

 指名制度…依頼者が担当する冒険者を選ぶことができる制度。簡単に言えば、あなたは以前いい仕事したからまたお願いしたい。評判がいいから頼んでみたい。という時に使う指名料が必要なちょっと割高な依頼方法だ。


「あぁーー!!確かに!他の依頼でも指名依頼と、通常依頼で出している人いるし、大丈夫じゃないかな!」


「指名…制度?そんなものがあるのか?」


「まぁ、私も今セドリックたちと会う前にそこで読んだんですけどね。これを使えば、ルゥ個人に頼むこともできるし、ギルド経由で合法ですよね?」


「そうなのか?オスカー、問題はなさそうなのか?」


「自分が読む限り、問題はなさそうです。依頼料が少し高いですが、予算の範囲かと思いますし、言われた通りこの方法以外は残されていなさそうですね…」


「ふむ…」


 セドリックは腕を組んだまま目を閉じて考えに耽っていた。

 彼は、『100本でも200本でも、作ってくれるのであれば1.2倍の報酬額を出そうじゃないか!』と先ほど口走っていた。金額についてはもう認めるしかない。あとは、ポーションの出来次第…。という事だ。


「これは私からの提案なんですけど、いいですか?」


「なんだ、まだあるのか?」


「明日の夕方、誰かルゥのアトリエに来てもらってポーションの出来を見てもらうというのはどうでしょうか?実物を見てみれば、ご納得もできると思います。本数も最低100本、ルゥなら作れると思いますので、品質に納得出来たら明後日納品。という形でどうでしょうか?」


「…まいった。降参だ。シロナ、君の勝ちだ」


「だ、団長!?それじゃポーションをこの錬金術士に頼むんですか?!」


 セドリックは両手をあげて苦笑いをした。それを見たオスカーが驚いて声をあげる。


「若い二人が、ここまで言ってくれているんだ。頼みのギルドはまったくもって使えない。だったら2人に賭けようじゃないか。オスカー、悪いが指名依頼の手配をしてきてくれないか?」


「は、はい。…了解しました」


「あ、シロちゃん、わたしも行ってくるね。依頼の受付手続きがあるから。ちょっとまっててね」


 オスカーの後ろを歩いていついていくルゥの姿を手を振って見送りながら私は席に残った。


「シロナ、君は何者だい?ただの友人…にしてはそこまであの若い錬金術士を信用できるのか?仮にも聖騎士団が相手なのに、もし失敗したら、とか思わなかったのか?」


「思わないかな。ルゥはポーション作りで失敗したことないですし、ちょっと頼りないところもありますけど、本当はすごい錬金術士…になると思ってるんですけど…」


 受付の方に行って何やらあのチャラい騎士団員とオスカーとルゥが言い合っている。ルゥがちょっと半泣きでチャラい男に文句を言っている姿を見ると何となく内容は想像がつくが…なんとも威厳を感じない。


「君は不思議な子だな。その若さで私たちを相手に物怖じしない姿勢。商売のセンスもいい。何よりも友人を信じきるその姿勢。騎士として惚れ惚れした!一人の友人として、これからも何かあればその時は頼めるかな?」


 セドリックは私に握手を求めてきた。少し悩んだけど、きっとこれはいい方向に進む未来よね。騎士団長が友人、となればルゥにもちょっとは威厳がつくかしら?程度でこのときの私は考えていた。


「ええ、こちらこそよろしく。セドリック騎士団長」


 ~~~


 これが昨日のギルドでのやり取りだ。まぁ、うまいこと言って割高でポーションを売って、さらに指名料まで取るというこのぶんどり作戦。

 この世界ではまだ15歳そこそこだけど、何回も時間を遡りながら長いこと生きてればね、このくらいの駆け引きはどうってことない。そもそも騎士団と揉めても揉めなくても結局斬首刑の未来なんだから。出来ることはやっといた方がいいでしょ。

 騎士団と言えばさっきオスカーが来て、ポーションの質も確かめて帰った。市販の物と変わらないし、本数も明日には100になる見込みで、このまま依頼を続行したい。という事で正式に納品が決まった。

 これであとはひたすらに作るのみ…。


(あ、ポーションを飲ませれば腕の疲労も取れて体力も少し回復してあと50本くらいは作れますかね…)


 私は出来上がったポーションをひとつ、こっそりとルゥのカップに注ぎ込んでアトリエに戻った。


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