第9話 状態異常:チュートリアルモードON
ゴトロリ? 俺がいぶかしむと、ピコンといつもの音が鳴る。
『情報:ゴトロリ この世界での絶対的な嫌悪生物』
嫌悪生物。名前からしても、黒いアレの亜種みたいな存在だろうか。
俺はレイアに目を向けた。レイアは、キラキラと目を輝かせている。
「カナタさんっ、ゴトロリ出没はチャンスです!」
と、言った。
「ゴトロリって……」
チュートリアルのことは言わない方が良いらしいので、嫌悪される生物だと知らないふりをして聞く。
「ゴトロリは、この位の大きさの、ダンゴムシみたいな生き物です」
レイアは手をちょっと広げて大きさを示す。
縦横を示してくれたが、ちょうどティッシュ箱くらいの大きさ、と言ったところか。
「ゴトロリの大きさは分かった。けど、なんで緊急依頼なんて掛かってるの?」
「みんなゴトロリが嫌いで、けど増えるのが早いので、緊急で駆除する依頼が入るんです。緊急依頼はたくさんお金がもらえます!」
レイアが飛び上がりそうな程にウズウズしているのが手に取るように分かる。
「そっか。今日の宿代から稼がないといけないから、依頼を受けられるなら受けたいな。どうすれば良い?」
「カナタさんはギルド登録がまだなので、わたしの名前で受けておきます! お金は全部カナタさんに!」
「いや全部は」
俺が言いかけた時には、既にレイアは青い顔したギルド職員と思しき女性の下に駆けていた。
ティッシュ箱サイズの、ダンゴムシか。虫とは言え、それだけデカいと俺のステータスで大丈夫か?
と思うや、俺の視界の左側半分に、ピュイっと音がして、ウィンドウが立ち上がった。
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【ステータス】
名前:相沢 カナタ
種族:人族
レベル:1
HP:25 / 26
MP:0 / 0
筋力:15
敏捷:9
耐久:12
魔力:0
知力:26
幸運:9999
レベル経験値:0 次のレベルまで 156
スキル経験値:3
状態異常
・チュートリアルモードON
スキル:
・経験値再配分(A)
・言語理解(SS)
称号:
世界の端に辿り着いた者
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……色々ツッコミどころが多いステータスだな、俺。
比較が出来てないから詳細は不明だが、全体的にステータスは高くないのが一目瞭然だ。
レベル経験値は0。けれどスキル経験値とか言うのが3ある。
これはアレか、スライムと戦ったおかげで貯まった……のかな?
と、状態異常? チュートリアルモード、って、状態異常扱いなのか。
今のところチュートリアルはうざいが、悪さはしていない。
状態異常と言われると少し引っかかるけれど、今のところはとりあえず放置だ。
スキルを使って、スキル経験値を筋力に変えたいな。変えられるのかな。
思った途端にピロロンと新しい音が鳴る。更にウィンドウ。
『スキル発動:スキル経験値を筋力に変換します。変換量を指定してください __ 」
ここは一旦確認的なステップが入るんだな。大事な場面なんだろう。
ただ、スライムを一度蹴飛ばした程度で経験値が入る世界なのだから、今回は筋力全振りでも全然構わないだろう。
俺は「3」という数字を念じた。下線が入ってる位置に、3と数字が入る。つくづく便利だな。
数字の入ったウィンドウが消える。同時に、かすかにキューン……と上昇する音が聞こえた。
これで、ステータスに変換されたのか? あまり実感は無い。まぁ3程度だからこんなものなのかも知れない。
ステータスのウィンドウに目を戻すと、筋力の項目は15から18に変わっていた。
「カナタさん?」
俺は虚を突かれて思わず飛び上がった。
「あ、ああごめん。依頼は受けられたの?」
「はいっ。通り2つ向こうのレストラン通りからの依頼でした。すぐに駆除して欲しいとのことです!」
「すぐにか。俺、特に手袋とか網とか持ってないけど、手ぶらでも大丈夫?」
俺の問いかけに、ニコッと笑みでレイアが答える。
「特に汚い生き物とかではないので、手づかみで大丈夫です。何故かすごく嫌われている生き物ですけど」
凄く嫌われる理由が気になるけれど、レイアがこう言うからには多分大丈夫なんだろう。
「じゃあ、早速行こうか」
「はいっ、道案内します!」
こうして俺は、レイアのおかげで受注できた初のギルド依頼に臨むことになった。
と、歩き出した瞬間、ピコンと鳴る。
『注意:ゴトロリは集団で行動します
推奨:複数人での対処』
……複数人? 俺とレイアの2人で足りるのか、これ?
※第10話までは毎日21時10分更新予定です。続きもよろしくお願いします。




