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第8話 皆さん、緊急依頼ですっ!

 さっき飛びかかってきたイルリアは、何と言うか、不承不承撫でられている、みたいな空気だったが。

 他の2匹は撫でるとにゃー、また撫でるとにゃーと鳴き、可愛いったらない。


「可愛いですか? わたしの子供たち」

「うん、可愛い。イルリアのツンデレっぽいのも可愛い」

「つん……? あっ、そうでした。この子たちの食べ物持ち帰ってたんでした」


 そう言うとレイアは、手に持っていた袋から魚を取り出した。

 さっきレイアが食べてた、川魚の塩焼きではない。蒸し焼きか? 焦げ目がない。


 レイアが右手の方に進んで、キッチンのコーナーへと進む。

 3匹の子猫たちも揃ってその後ろに付いていった。


 それ程広くない家だからか、それとも蒸し焼きだから尚更なのか、家の中に魚の香りが漂い始めた。

 レイアは、本人気付いているか分からないが鼻歌交じりに、キッチンに向かって立って何かしている。


「あっ、ごめんなさいカナタさん! どこでも腰掛けてくださいね」


 チラッとキッチンから、立ってぼんやり周りを見ていた俺に視線を向けて言った。

 子猫たちの事を考えてたけれど、よくよく考えたら一人暮らしの女性の家の中だった。

 あまりマジマジとあちこち見るもんじゃない。


 座れそうなのは、壁に寄せてある樽くらいのものだった。


「この樽、座っちゃっても大丈夫?」

「はい、中身は砂なので、倒れません。どうぞ使ってください」


 俺は膝丈くらいの高さの樽に腰掛けた。


 と、食事の準備ができ上がったようで、白い丸皿を片手に、レイアが屈んだ。

 皿の上には丁寧にほぐされた魚の身がふわっと乗っていた。

 のが見えるや否や、子猫たちが皿に殺到した。食事はサバイバルだな。


「これからどうします? お仕事は、生活者ギルドで決まりな感じですか?」

「仕事は、そうだね。ただレイアも『力が物を言うことも多い』って言ってたから、今後鍛えていって、冒険者ギルドも……とは思う」

「ギルドは掛け持ちできるので、いつでも気乗りした時に冒険者ギルド行けば良いですよ」


 ニコッと笑みを投げてくれた。思わず俺も微笑んだ。

 と、ピコンとアレが鳴った。今度は何があるって?


『注意:冒険者ギルド営業時間 午後5時まで』


 ……こんなうざいチュートリアルがあるゲームだったら、ゲーム機投げてるところだわ。

 ん? でも冒険者ギルドだけ書いてあるってことは、生活者ギルドはまだ大丈夫なのか。


「生活者ギルドって、もうすぐ夕方だけどやってるの?」

「あ、はい! 生活者ギルドは夜11時までやっています。あ、そう言えばカナタさん身分証無いので、今日のうちにギルド行っておいた方が良いかもです」

「ギルドへ行けば身分証が手に入る仕組み?」

「はい、そういう仕組みです。しかもその身分証、実物はこれですが」


 と、レイアはポケットから財布を取り出し、その中からクレカサイズな金属質のカードを取り出した。

 その券面は日本の運転免許証に似ていた。顔写真がモノクロで入っていて、名前の表記もある。


「この身分証は国を超えて使えます。少なくともこの大陸の国全てで通用すると教わりました」

「へえ、国も超えるんだ。凄いね、それ」

「ギルドは各国をまたいで活動していて、そのギルドが証明するからだー、って言ってました、教えてくれた人が」


 レイアはよく分かってないのか、ちょっと首を傾げて苦笑いを浮かべ、差し出していた身分証をしまった。


「カナタさん、早速ですが生活者ギルドに行きましょう。早い方が良いです」

「うん、それじゃあ行こうか。あ、子猫ちゃんたちのご飯は」

「もう食べ終わっちゃってます!」


 まだ皿に集まってるから食べてる最中かと思いきや、よく見ると魚の身はもう無い。みんな必死に皿を舐めてる。


「場所とか分からないから、案内をお願いしても良いかな」

「もちろんです! じゃあ出掛けましょう!」


 また行ってくるねー、とレイアは皿に集まる子猫たちに言い残し、俺たちは家を後にした。


 *


 生活者ギルドは、結構大きな建物だった。3階建てくらいに見える。

 ドアは無く、入口は開放的だ。中に入ると、ふわりと食事の香りが漂っていた。


「あれ? 職員さんのお食事の時間?」

「いえ、ギルドの『料理講座』の実習の時間ですね。わたしもお世話になりました」


 料理の講座があるんだ。それ受けたら自炊もできるし、俺もタイミングが合えば受けたいな。


「ほらあそこです。奥の」

「おー湯気が上がってる。あ、男性もいるんだ」

「はい。料理はみんなの基本ですから!」


 うーん、耳が痛い。

 地球時代、まともに自炊できなかったから出費が増えて、お金貯まらなかったんだよな。


「料理講座は初心者向けからプロコースまであるので、カナタさんも必要なら使うと良いですよ!」

「へえ、プロまで使うんだ、ギルドの料理講座」

「中級者向けまでは無料で受けられるので、単に一食浮かすためだけに来る人もいます」

「自炊……うーん、作りに来る、それも自炊だけどなんか違うね……」


 俺もそうならない様に気をつけなきゃな。


「皆さん、緊急依頼ですっ! ゴトロリ大丈夫な方いませんか?!」


 ついさっきまでのほほんとしていた空気を切り裂く、女性の鬼気迫る声。

 俺がその声の主の方を向くと、黒縁のメガネを掛けた女性が、青い顔をし息を切らせ、ギルドの入口に駆け込んできたところだった。


※第10話までは毎日21時10分更新予定です。続きもよろしくお願いします。

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