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第4話 推奨(強):チュートリアルの事は言わない

「それに魔物って、倒すと良いことがあるんですよ?」


 俺の横から、少し小首を傾げてレイアが言った。


「魔物を倒すと、魔物を作ってた成分が、結晶になるんです。魔力結晶、なんて呼ばれます」

「へえ、スライムでも?」

「はい。スライムでも、小さいですけど結晶が出来ます。魔物も動物も、この世界では魔力を持っているから、全部そうなります」


 魔力を持ってると、死ぬとその魔力が結晶になるんだ?

 よく分からないメカニズムだけれど、ひとまずそういうものとして受け取っておこう。


「それで、その結晶はお金になるんです! なので、騎士団の人たちも、危険度の高くない魔物はあえて残してるんです」


 レイアが嬉しそうに言う。もう俺の前に回って、後ろ歩きをしながらぴょんと跳ねた。


「結晶が、お金に? その結晶って何かの役に立つものなの?」

「はいっ! 魔力が集まった物が結晶なので、魔導具っていう、魔力で動く道具類の動力になるんです」

「あぁ、なるほど。魔物を狩れば、エネルギーの塊で金銭価値のある物が手に入るわけか」


 今後は、魔物は魔物と割り切って狩っていくスタイルに変えていかないといけないかも知れない。

 何せ、手ぶらでこの世界に転生した俺は、この世界のお金を持っていない。これでは飯も食えない。


「そう言えばレイア、俺は今あのハスティナ? の街に行こうとしているわけだけど、レイアがいれば入れてもらえそう?」

「この街、というより王国自体が、地球からの生き物を受け入れるための国になっているので、誰でも入れますよ!」

「へえ、国単位でチュートリアルなんだ」


 俺が独り言のように言うと、前を歩くレイアはキョトンとした顔をした。


「ちゅーとりある?」


 あれ、レイアにはチュートリアルモードは無かったのかな。

 と、不意にピコンと音が鳴った。既に目の端にウィンドウが現れている。


『推奨(強):チュートリアルの事は言わない』


 ……なんだこの推奨内容。しかもわざわざ、『(強)』まで付いてる。

 引っかかるが、今はトラブルに巻き込まれたくない。推奨に従っておこう。


「カナタさん……?」


 レイアからすればあさっての方向に視線を向けていた俺だったので、レイアの視線に少し焦った。

 けれど、今はチュートリアルの事は言わない方が良いらしい。俺は笑った。自分でもわざとらしいと思えたが。


「あはは、ごめんごめん、こっちの話。今って、時間どの位? 時間は、地球と同じ?」

「はい、提携先なだけあって、地球と同じ24時間制です。季節もこの国にはあって、春夏秋冬、穏やかですけど変化します」

「そっか、24時間が変わらず24時間で、季節も日本と同じなら、過ごしやすそうだね」

「過ごしやすいです! 今、時間は」


 と、レイアは履いているズボンのポケットから、懐中時計を取り出した。

 銀色のそれをレイアは開いた。俺の位置からでも文字版が見える。時計の規格も、地球と同じ規格だ。


「今、4時半を少し回る頃ですね。カナタさん、お腹空いたりしてません?」

「ん? ああ、言われれば、少し空いたかも。喉渇いたな、さっきの戦闘で」

「それじゃ、街に急ぎましょう! 街に行けば、飲食店がありますから」


 そう言うとレイアはニコッと俺に笑顔を向け、ハスティナの街の方に向いて、歩を早めた。

 手加減はしてくれていて、俺が軽く走る程度のスピードに合わせてくれている。

 さっき俺の所に来る時は、こんなもんじゃなかったからな。猛スピードだった。


 *


 少し走ると、程なく城壁の前にまで辿り着いた。

 石作りの城壁で、誰でも入れるという割には門はかなり大型の門だ。

 今は開かれているが、城門は分厚い木でできている。


 そして、入口には、細く長い金属の槍を立て金属のヘルメットをかぶった、いかにも門兵という人が立っている。


「ザクロンさん、さっきはありがとう!」

「ああ、レイア。お目当ての人物が、その人か?」

「うん、わたしの勘、間違ってなかった!」


 ザクロン、と呼ばれた門兵さんは、俺の方を向いた。


「地球の人、ようこそハスティアナ王国へ。名を聞いても良いか?」

「はい、俺は相沢カナタと言います」

「アイザワ・カナタ。この世界では、名字は使わない方が良い。貴族と間違われると面倒だぞ」

「あ、そうなんですね。カナタと言います、よろしくお願いします」

「ああ、カナタ。俺はザクロン。騎士団の一員だ。末席だがな」


 ザクロンさんが手を差し出してきたので、俺はその手を握り、握手をする。

 ヘルメットから見えるザクロンさんの髪色は金髪だ。顔の彫りも深い。

 元々この世界の人なのか、あるいは欧米系の人が地球から来たのか、見た目では区別出来なさそうだ。


「それじゃカナタさん、行こっ! もう喉カラカラじゃないですか?」

「ああ、うん。喉はカラカラだし、だいぶお腹も空いたよ」

「わたしの行きつけの食堂があるので! 今の時間ならまだ混んでないですから、付いてきてください!」


 俺はこうして、ハスティアナ王国王都・ハスティナに足を踏み入れた。

※第10話までは毎日21時10分更新予定です。続きもよろしくお願いします。

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