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【完結】地球の提携先で、同郷の女の子(猫)とスローライフしたい ~チュートリアルが妙にしつこい件~  作者: 夢ノ庵


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第23話(最終話) 戦闘より生活の方が楽しそう

 財布は、チュートリアルが『注意』を出した物をあえて買った。


 爪の痕は付きやすいらしいが、店主さんに勧められて香ってみたら、革財布と思えないウッディーな深い香りに、惚れた。

 値段は150ドルだった。少し考えはしたが、ほぼ即決だった。

 併せて小銭入れも、今後の事を考えて買っておいた。


「お財布、買えました?」


 先に猫用品を買って、入口を出たすぐの所にいたレイアに声を掛けられる。


「うん。凄く気に入ったのが買えたよ。150ドルもしたけど」

「150ドルですか? どんなです?」


 レイアが言うので、薄紙に包まれた財布を早速お披露目する。


「これ、香りが凄く良いんだ。それに、他の革より柔らかい」

「わたしこれと同じ物、以前ここで120ドルってお勧めされましたよ?」

「えっ? あぁ……予算を先に、正直に言ったのはマズかったかな……」

「大きい予算を先に伝えると、言い値は上がりやすいですね。カナタさん、商売あんまり上手じゃないです」


 グサッ。

 俺の心に鋭い槍が突き刺さったように感じた。

 120ドルの物を、言われるがままに150ドルで買ってしまったのか……


「でも、カナタさんは良い人なので仕方ないです。これからはお買い物、わたしもサポートしますねっ!」


 それは、ありがたいと言えばありがたいが……

 半年前まで猫だったレイアより生活力が下、という事実。俺は苦笑いせざるを得なかった。


 *


「あっ、カナタさん、レイアさん。昨日はお疲れ様でした」


 ギルドに入ると、カウンターから明るい声が飛んできた。ルリィさんだ。

 俺たちを見つけるや、カウンターから走って俺たちの所まで来る。


「今日はお買い物ですか?」

「はい。昨日の稼ぎで、衣服と財布を」

「わたしは子猫のおもちゃ買いましたっ!」

「あらあら、それは素敵ね」


 レイアが飛び上がって言った言葉に、ルリィさんは笑顔で応えた。


「カナタさん。この街のお店は大抵夕方5時には店を閉めてしまうので、買い物は早いうちが良いですよ」


 と、ルリィさんが言う。


「あー……飲食店はどうなんですか? 昨日の男酒場とか」

「酒場は夜11時か、遅くて12時が一般的ですね。普通の飲食店は夜9時が多いです」


 街の事情を聞くのに、生活者ギルドほどピッタリなところはない。


「ところでカナタさん。宿は決まりましたか?」

「ああ、それを報告しに来たんでした、宿屋街の『ひだまり亭』って所です」

「ひだまり亭さんですね。それではこちらで登録しておきますね」

「ルリィさんっ、カナタさんに『ゴトロリの森』の説明をしてあげて欲しいです!」

「あら、もう次のお仕事ですか? 熱心ですね、では今資料を持って来ますので、掛けてお待ち下さい」


 そう言ってルリィさんは掲示板の方へと歩いて行った。

 俺はレイアと顔を見合わせ、近くの空いている丸テーブルのイスに腰掛けた。


「はい、お待たせしました。これが『ゴトロリの森』常設依頼の概要です」


 A4より少し大きい紙に、地図と説明書きがある。

 なになに……ふむふむ……なるほど。


「つまり、ゴトロリの森からゴトロリが街に来ないようにするのが、主な目的なんですね?」


 俺が言うと、ルリィさんは大きく頷いた。


「はい、その通りです。ゴトロリは、この森で自生する魔物ですが、森の入口まで出てくると、街にも入ってきます」


 ルリィさんが地図を指さす。

 見ると、森の端から街まで、そんなに距離はない。


「街に入られると大変厄介なので、ゴトロリの生息ラインを森の奥まで押し戻す。そんな依頼ですね」


 なるほど。全滅が狙いなのではなくて、生活圏に入り込まないようにする予防措置か。


「なかなか受けて下さる方がいなくて、積極的なのはレイアさんくらいですね……」

「ちなみに、ゴトロリ討伐は証明部位の切り取りが必要ってレイアから聞いたんですけど、どこを?」


 俺が言うと、ルリィさんは一瞬目を閉じて固まった。

 少しの沈黙の後、懸命に、という感じの声で言う。


「……ゴトロリの、尻尾を切ってきてください。あぁ、想像するだけで私ダメです」

「尻尾ですね。それを持ってくれば、ここに書いてあるように1本で10ドルですか?」

「はい。ギルドとしては、森の奥まで狩り尽くす訳ではなくて、特に森の入口を入念に処理して頂きたいです」

「ルールは分かりました。今日のうちに短剣も買おうと思っているんです」


 俺がそう言うと、ルリィさんはふうっと息を吐いた。


「カナタさんは、冒険者ギルドと掛け持ちされる予定ですか?」


 問われるも、冒険者ギルドに行ったこともないので未定だ。


「まだ何も考えてはいません。ただ将来的に、もっと広い世界に行きたいとは、思っています」


 そう。レイアと共にスローライフ。子猫たちと共に。

 レイアがこの街が良いなら、この街だけでも構わないかも知れないし、そうでないかも知れない。

 まだまだ何も決まっていない俺の第二の人生だ。ゆっくり決めていけば良い。


 俺はルリィさんにお礼を言って、レイアと共に外へ出た。

 ルリィさんに言われて、冒険者ギルドも覗いてみたい気になった。スライムくらいなら俺でも倒せそうだ。


 ゴトロリをあれだけの数退治したから、生き物を殺す事にも、少しだけ慣れた。

 ゆくゆくはドラゴンとか? いや、無理だろうな。俺とレイアと子猫たち。戦闘よりは生活の方が楽しそうだし。


(了)

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