第20話 また呼ばれた:ゴトロリの兄ちゃん
窓から差し込む明るい光で目が覚める。
壁に掛けられた時計を見ると……今は午前8時少し前。
昨日はあれからシャワーだけ浴びて、あとは遅くまで頑張ったものな。
朝ご飯、何時までか聞いてなかったな。俺は置き付けのパジャマを着替えて1階に降りる事にした。
そう言えば服も買わないと、替えがない。幸い1日目でお金が得られたから、かなり選べそうだ。
*
取り放題のパンとスープに、小さなハンバーグも取り放題だった。
俺の時間はもう遅いのか、全て冷めていた。けれど美味しかった。
食事を終えると、宿屋の女将さんが俺のテーブルの所にティーカップを持って座り込んだ。
「あなたね? ゴトロリの兄ちゃんって」
うわ。情報早い上に、変な二つ名が早速確定で付いた。
「ゴトロリ、どうやったらそんなに簡単に退治できるの?」
一瞬言うべきか迷った。俺が稼げる秘伝の情報になるかも知れないからだ。
が、そんなのは、女将さんの反応で杞憂だと一発で分かった。
「えーと……ひっくり返して、喉の所をグッと」
「ゴ、ゴトロリに、触るの?!」
女将さんはイスごと後ろに飛び退くように下がる。
「は、はあ。触らないと、殺せませんし」
「てっきり槍でつついたとかって思ってたわよ。あなた勇気あるわねぇ」
勇気の問題か?
噛み付いてくる訳でも、体当たりしてくる訳でもないアルマジロだったが……
「ゴトロリは、補助金は出るんだけど駆除が高くてねぇ。緊急だと1匹で60ドルもするのよ」
「飲み屋に出たゴトロリは、はち……いや、100匹でした。良い仕事になりました」
「あそこでしょ? 『男酒場ルイス』。街中だからって油断したんでしょうね、入られちゃったのね」
女将さんは顔をしかめて、とても嫌そうな顔で言うと、そそくさと席を立った。
なんだっけ、絶対的な嫌悪生物? チュートリアルが言ってたな。
女将さんのこの反応、ギルドの雑な100匹認定、酒場の店主の怯えっぷり。
地球のアレに匹敵するか、それ以上に嫌われているのが肌で分かる。
ひとまずそのゴトロリのおかげで大金は入ったが、使っていればいずれ無くなる。
レイアには、ギルドの受付業を勧められた。それはある意味、地球の延長のレジ業務だ。
少しは、違ったことがしたい。
せっかく第二の人生をもらったのだから、またレジ打ちで一日潰れる人生はごめんだ。
「カナタさーん♪」
お、レイアだ。
「やあレイア、おはよう」
「おはようございます、カナタさん。ゆっくり休めましたか?」
「うん。お陰様でHPも回復したし、MPも増えたよ」
「えいち……えむ?」
レイアがキョトンとした顔をする。
ああ、ステータスが転生者全員に見える訳でもないのかな。
そう思った瞬間に、ピュイ、と音が鳴り、俺の視界の端にステータスウィンドウが立ち上がる。
――――――――――――
【ステータス】
名前:相沢 カナタ
種族:人族
レベル:4
HP:126 / 126
MP:20 / 20
筋力:60
敏捷:60
耐久:60
魔力:10
知力:60
幸運:9999
レベル経験値:1,056 次のレベルまで 960
スキル経験値:13
状態異常:
・チュートリアルモードON
スキル:
・経験値再配分(A)
・言語理解(SS)
・味見の達人(B)
称号:
世界の端に辿り着いた者
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「レイア、昨日神父さんからもらったレンズで、この辺り見てみて欲しい」
「えっ、はい……あれ、薄青い板がありますね、透明で後ろも透けて見えます」
「これが俺の、えーと、昨日見た魂の履歴の完全版」
俺もステータスウィンドウに視線を合わせ続ける。
これ、一度見てから視線切ると、消える。
配分の時は、何度もピュイピュイ言わせて立ち上げ直した。
改めて俺も数値を眺めてみる。
うん。寝ても上げた数値は保持されてる。問題なし。
スキル経験値の546を、出来るだけ平均して分配していった結果が、これだ。余り13。ちょっと気持ち悪い。
10の位がひとつ上がるごとに、ステータス値獲得が重くなっていく仕様だった。
魔力だけは、地球にその概念すらなく、俺の初期値も0だったものだから、控えた。
「それでカナタさん、今日はどうします?」
「いや、レイアの予定は? 俺、レイアの足は引っ張りたくないよ。仕事とかあるんでしょ?」
「そこは大丈夫ですっ! わたしもゴトロリの依頼を度々受けてて、お金持ってますから!」
そう言って、レイアは胸を張った。
「ゴトロリの……ああ! レイアも頑張ってくれたのに、俺が全額受け取っちゃったよ!」
しまった。
共同で働いたのに、流れで全額受け取った上に、カードに5,000ドル入金までしてしまった。
「それも気にしないで下さいっ。ゴトロリの森の依頼が常設であって、お金が要るならそれを受ければ良いだけなので」
「ゴトロリの森?」
初めて聞くワードに、俺はつい復唱した。




