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【完結】地球の提携先で、同郷の女の子(猫)とスローライフしたい ~チュートリアルが妙にしつこい件~  作者: 夢ノ庵


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第15話 推奨:目の前の神父を▼※殺┼#

 目の前にまかれた小瓶の水。恐らく聖水とかそういう性質の物なんだろう。

 それに反応して、チュートリアルは文字化けし、混乱してるかのようにウィンドウを連打してきた。


 神父さんは、チュートリアルモードというのが悪性だと、そう言っている。

 そして、聖水に困惑しているのもまた、悪性な存在だとすれば、納得は行く。


 俺が考え込んでいると、神父さんは俺の足下の石床に、チョークのような物で線を引いた。

 俺を囲むように、ぐるりと一周の円。更にその外周にも円を描いた。

 二重円の隙間に、不思議な記号のような文字のような、俺も『把握』できない何かを書いている。


「それではカナタさん。あなたに向けて聖魔法を放ちます」

「魔法を? その、痛かったり苦しかったりは……?」

「全くそういう事はありません。……あなたには」


 最後の一言に重みを乗せてるのがハッキリ分かった。


「あなたはただそこに立っていてください。その円からは出ないで下さい」

「は、はあ……」


 神父さんが俺から2歩離れた所に、こちらを向いて立った。

 俺に向けて真っ直ぐ手を伸ばし、言った。


「魔性の存在よ、去れ。――ホーリー・バニッシュメント」


 二重円の上に、ウィンドウとも違う白い文字列だけが浮かび、消えた。


【Holy Banishment】


 その直後、光が俺の視界を満たした。驚いたが、苦痛はない。

 むしろ、暗澹たる地下室の空気が、綺麗に洗われる。そんな感触だった。


 ウィンドウに目を向ける。いつもは落ち着いた薄いブルーのウィンドウなのに。

 光にさらされたウィンドウは、文字化けしたまま赤く色づいていた。

 赤いウィンドウが、たくさん。ちょっと危険な感じに思えてくる。


「カ、カナタさん! さっきの板と違う、文字が崩れて、色も……! それに、何枚も……!」


 レイアの声が地下室に響く。

 聖魔法の最中、チュートリアルのウィンドウは誰の目にも見えるらしい。


「えっと、これは何と言うか、この世界に来た時にもらったモノ?」

「これは呪いです」


 俺が上手い言葉を紡げずに少し適当に答えたのに被せて、神父さんが断言口調で言い切った。


「えっ、呪い?!」


 俺より先にレイアが反応する。


「ええ、レイアさん。彼にはひどく重い呪いが掛かっている。私の解呪魔法が全く効いていない。間違いない」


 言葉を句切って言う神父さんのその口調からは、焦りのようなものを感じ取れた。


 神父さんが手を引くと、光がすうっと消えていき、元の暗闇に戻った。

 聖魔法の光が強かったから、さっきよりもうんと暗いように思えてしまう。


「あのー神父さん、お言葉ですが……」


 呪いだ、と言われても……。

 食事の仕方に口出してきたり、推奨だの非推奨だのとうるさいけれど。

 ゴトロリの正しい駆除の仕方のヒントになったのは、間違いなくチュートリアルのメッセージだ。


「何かね」


 神父さんの視線が厳しい。見下すような、忌み嫌うものを見るような、冷たい視線。


「このチュートリアルって、この世界に転生する時に『補助』として付けてもらったものなんです」

「ほう。それで?」

「それでって……俺の転生を助けてくれた存在が、俺の事を思って付けてくれたんです。悪いモノとは……」

「それでは聞こう。君の転生の手助けをした存在は、絶対的な善であったか」


 詰問するような厳しい口調が飛んでくる。

 絶対的な善かと言われても、ほんのひととき、声だけ交えただけだしなぁ……


「善かどうかは、正直分かりません。でも」

「ならばその存在自体が悪性だったのだろう」


 神父さんが俺に真正面に向き直り、1つ咳払いをした。


「私は教会諸派の中でも厳格派に属する。それ故多少偏った物言いになるかもしれないが」


 と、神父さんは1度目を伏せ、一呼吸置いて、言った。


「そもそも転生者など、あってはならないのだ。教義の上では、命を終えた者は、天に召されるまで静かに待つものだ」

「そ、そう言われても……俺も転生したくて転生したって訳でもないので、なんとも……」

「穢れた者よ。神は何故地球という星と提携などなさったのか。しかし偉大なる神はお見捨てにはならない。あなたは聖国を目指しなさい」

「はっ? 聖国?」


 話が飛びすぎて追いつけない。思わず俺は素っ頓狂な声になってしまった。


「ええ。私たち教会を統べる法王様がおられる、神にもっとも近い国だ。聖国が有する秘宝を用いれば、呪いの引き剥がしも出来ると伝わっている」

「は、はぁ……ちなみに、呪われたままだと何か不都合があるんですか?」

「呪いは魂をむしばむ。その代償は必ずやあなたを不幸にする」


 必ずや、ねぇ。

 どうもこの神父さんは、頭が固いらしい。

 厳格派全体がそうなのか、この神父さんだけの信念なのか知らないが……

 俺の事、初対面で穢れた者呼ばわりするし。良い感じはしない。


 ……とは言え、魂をむしばむ、か。

 気にならないと言えば嘘になる。


「カナタさんが、呪われたままなんて……」


 一方でレイアは今にも泣き出しそうな声だ。


「レイア、俺、呪われてるらしいけど、レイアとはさよならした方が良い?」

「えっ?! そんなこと……」

「だってほら、神父さんはこう言ってるし、レイアに迷惑は掛けたくないし……」

「神父様っ! 呪いというのは、呪われてる人だけでなく他人にも迷惑を掛けますか?!」


 レイアが食いつくように言った。必死の声だった。

 その瞬間――俺の視界の端で、赤い板が一枚、すっと増えた。


『推奨:目の前の神父を▼※殺┼#』


 ……文字化けしてるのに、一番不穏な一文字だけは、しっかり露わにしてきた。


 やっぱりこのチュートリアル、単なるガイドじゃない……正直背筋が冷えた。

 この『推奨』に従ったら最後だと、本能が叫んでいる。


 俺は反射的にレイアを背に庇い、神父さんを見据えた。

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