王子様の決意ーside千歳ー
これは全年齢向け総受け系BLです。
でも甘いイチャイチャしません。
通称いわおに『いわゆる普通のお兄さん』とは……ラトラ、めぎ、千歳、カンナによる4人組の動画投稿グループ。メンバー全員が兄であることから、その名前がつけられた。
中学時代の友人関係で結成された。元々ソロ配信者であったラトラが3人に声をかけたのがきっかけ。高校生や若い世代からの支持を集める話題の配信者グループ。
ラトラ いわおにのリーダー。千歳とカンナとは幼馴染。ファン第一主義者で、自分への愛に鈍感なところがある。ソロ配信時代はツンデレキャラだったはずだが。グループ内で個人ファンが少ないのがコンプレックス。一人称は「僕」
カンナ いわおにの男前枠。ラトラが好きでわかりやすく貢いでいるが、本人には気づかれてない。器用な為、努力すれば大体のことはこなせる。一人称は「俺」。
千歳 いわおにのちょっぴりSな王子様枠。ラトラは親友で彼のことをらーくんと呼ぶ。ずっと片思いを続けている。
王子様にこだわるのには理由があるとか。
一人称は「ボク」
めぎ いわおにの盛り上げ役。千歳とカンナとは違い、ラトラのことを友達として好き。よくソロ配信で自分のファンと漫才を始める。
面倒見がいい。
一人称は「オレ」
いわおに結成前ーーー
文字を書き終えたらーくんが、ペンの蓋を閉めて振り返る。
「じゃっみんなどのキャラやりたい??」
ホワイトボードいっぱいに、『性格』が箇条書きで書かれていた。
「キャラって決めなきゃなんねーの?」
めぎくんが手を挙げて首を傾げた。
「うん、僕は先に考えてた方がいいと思う。そっちの方が方向性も見えてくるし、先にきめてたらキャラ被りもしないし」
「ふーんそういうもんか。じゃ、俺決めるの最後でいいやバランス担当ってことで」
めぎくんはそう言うや否や、ソファーに寝っ転がってゲームを始めた。
相変らず自由人だ。
「俺は演じるの苦手だし……なるべく俺に近そうなやつがいい」
カンナくんはそう言ってホワイトボードとにらめっこを始めてしまった。
らーくんはそれを見て少し笑って、ボクに近づいてきた。
「ちーくんはどれにする?」
ホワイトボードを眺めるふりをする。
「ん〜、そうですねぇ、じゃあボク王子様枠で」
らーくんがボクを見た。
「えっちーくんが王子様?!」
「似合いませんか?」
「ううん、逆!すっごい似合うなって!確かにかっこいいし。うん、似合うよ!」
身長差から少しだけ上目遣いになるらーくんの目がキラキラと輝いている。
でも、それだけだ。
王子様にそれ以上のコメントはない。
「あっラトラ!これとこれどっちだと思う?」
「えっあーうん……これ?」
そのままカンナくんの隣でホワイトボードを見つめ始めた。
……これはらーくん覚えてないな。
ーー
ボクはずっとらーくんが絵本の王子様に目を輝かせていたのを覚えている。
幼稚園で迎えを待っている間、らーくんは絵本を読んでいることが多かった。一緒に見せてって言ったら、らーくんは喜んで場所をずれてくれて、読んでくれた。
「今日はなにを読んでるの?」
「人魚姫!僕好きなんだこの絵本」
でもらーくんが選ぶ絵本はどれも王子様が迎えに来るもので、王子様のシーンの読み上げだけ特に感情がこもってた。
「らーくんは王子様が好きなの?」
「うん!かっこよくて、王子様に出会うことで幸せになれるんだよ?素敵でしょ?」
そう笑ったらーくんに幼い心がきゅっとなって。ボクは初めての恋を知った。
だからボクはしってる。らーくんは王子様が好きだ。だからボクが王子様だったらボクのことも見てくれるはず。
覚えてない寂しさを心の中で消化させていると、めぎくんが飛んできた。
「んー?カンナも千歳ももう決まったん?えっ千歳王子キャラすんの?!絶対ドSだろ!」
「確かに。千歳は王子様だけどドSっぽさそう」
「ドSちーくんちょっと見てみたいかも……」
3人が一斉にボクを見る。
別に虐めて喜びたいとは思わないんだけど。むしろ甘やかしたい。
「えっ?ボクそんなドSキャラですか??」
「まぁないともいいきれねぇよな似合うし」
よし、カンナくんは後で締めよう。
「でもちーくんはかっこいいから王子様似合うと思う!うん、絶対!」
ボクは一瞬目を大きく見開いた、と思う。らーくんは気づかなかっただろうけど。
らーくんが言ったのはずっとボクが欲しかった言葉だ。
「ボクはじゃあ……らーくんといわおにのために頑張りますね♡」
らーくんのために。らーくんの王子様になれなくても、貴方が誰かと向き合えるようになるために。
らーくんの好きなことを守れるように。
ボクは頑張るね。そう心に決めたのだ。




