大阪駅
春、若者が希望を胸に進学する季節。
春、若者が希望と夢を胸に就職する季節。
列車が大阪の梅田に着きました。
駅の名前は大阪駅です。
15歳の少年少女たちが、中学校を卒業して親元を離れ、多くの同学年の子たちと引率の先生に連れられて大阪に来ました。
大阪で就職するためです。
人が多くて、引率教師と離れないように気を付けながら、多くの少年少女が人の多さ、賑やかさに目を奪われていました。
県ごとに纏まり、学校名が入った旗を持ち、二列になって先生の後を歩きます。
大阪駅では歓迎と書かれた横断幕がありました。
西日本の貧しい家庭の少年少女たちです。
食い扶持減らしの意味での就職、高校への進学が出来ないための就職です。
大阪で就職し、大阪に根を下ろすしか仕方がない少年少女たちです。
通された部屋でも、歓迎と書かれた大きな紙が貼られていました。
ここが福岡県の集団求人制度に於ける就職先へ少年少女たちを委ねる場所でした。
ここで話を少し聞き、話が終わると就職先の担当者が名前を呼びました。
呼ばれた子が担当者の元へ行きます。
工場への就職が圧倒的に多く、その工場から担当者が迎えに来ていたのです。
商店への就職の場合は、商店の店主が迎えに来ています。
宮川四郎は、工場へ就職します。
仲良しの幼馴染、松本三郎は料亭への就職です。
「呼ばれたけん。」
「おう、また会いたか。」
「おう。」
四郎と三郎は、大阪駅で別れました。
四郎が就職した会社は大勢を乗せることが出来るバスを使って、就職した少年少女たちを乗せていきました。
三郎が就職した店は店主が一人で迎えに来ていて、就職したのは三郎一人でした。
四郎は「頑張って働き、家にお金を送りたい。」という希望を胸に、三郎は「板前になって店を出して、親を大阪に呼んで楽させたい。」という夢を胸に……
大阪での第一歩を踏み出したのです。