花屑
千春、91歳ーーーーー
千春は91歳になった。
妻のさくらは6年前に老衰で他界した。
娘の愛は、製薬会社の社長を継いで、婿養子を取り、3人の子を授かった。
孫3人に囲まれ、千春は幸せな日々を送っていた。
「あれ、おじいちゃん、どこにいくの?」
出かけようとする千春に孫の一人が話しかける。
「おばあちゃんのお墓に顔を見せに行ってくるよ。あと彼氏に会いに行くんだ」
「彼氏ってなに?おじいちゃんおもしろーい」
孫はけたけたと笑った。
お墓につくと、まず、さくらの墓に大福と桜の花を手向けた。
さくらは今日も笑っているような気がした。
そして、その後、暁の墓に向かった。
墓には、暁 享年17、と書かれており、墓は雑草でぼうぼうになっていた。
千春はゆっくりと雑草を抜き始めた。
年老いた体は、それだけで息切れてくる。
大方雑草を抜くと、さくらと同じように、大福と桜の花を手向けた。
そして、老人は目を閉じた。
千春は眼を開けた。
とても幸せな長い夢を見ていたような気がする。
千春は自分の手のひらを凝と見た。
若く、張りのある肌は、老人のものとは違う。
でも、この手は本当に自分のものなのだろうか。
どちらが自分なのか、わからなくなる。
老人が、今の千春の夢を見ているのか。
それとも今の千春が老人の夢を見ていたのか。
その2つは、区別があっても、絶対的な違いはないと思えた。
第13話よろしくおねがいします。




