異世界の招待状〜魔法世界の戦乱編〜004
6月12日午後4時30分 長浜一郎は公園に居た。勤務時間であるが、長浜は一人公園で只々、沈黙している。
長浜は毎日の日常に喪失感を持っいた。
年齢は26歳、既婚者で子供もいる。特に生活に困る事もない。
繰り返す日常。休日は家族サービスもする。トラブルも無く、悩みと呼べるものもない。
そんな毎日を淡々と過ごす。
ふと思う。
死のう……。
そう思った。
長浜は死ぬ事を考える事はなかった。健康で持病もない。
では、どうやって死ぬのか?わからなかった。
長浜は目的地も無く街を歩いていた。普通に疲れて公園があったので、ベンチに座ったのである。
そして空を見上げていた。
長浜は目眩をした。いや違う。辺りの空間があきらかに歪んでいる……そして紫色に輝いている。
この現象が何なのか考える暇もなく。紫色の光の中に一人の男性がいた。
長浜は美男子ではないが醜男でもない。光の中の男性は美男子であった。
それは今はどうでも良いのだが、思考は加速していて、様々な事を分析していた。
長浜の人生はまさにレールの上をゆったりと走って来た様な人生で、トラブルとは無縁と言っても過言ではない。
そして、紫色の光が消えて、美男子の男性は声を上げる。
しまった………。
長浜は目の前の男性が何を言ったのかは、わからないが、人と認識した。
自身に危険がない事が分かると長浜は声を掛けてみた。
貴方は日本人ですか?
間抜けな事を言う長浜。
え?ああ、日本人だ。
男性が答えてくれた。長浜は、このやり取りを可笑しくて、少し笑う。
あ!すみません!僕は長浜一郎と言います!
なぜか自己紹介をしてしまう。
おお……あっ俺は信条……信条隆だ…よろしく…。
不可抗力。信条隆は自己紹介されたので自分も自己紹介した。
宜しくお願いします!
長浜一郎の自殺願望はもう消えていた。
長浜は信条隆に名刺を渡すと会社に帰って行った。
後に長浜一郎と信条隆は深く交流するのだが、今はまだ運命の入口。
日常の平安から逃げてしまいたい時には運命のサプライズだったのだろうか。
季節は夏へと向かっていた。