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大魔術師サマの後始末

作者: 八神シュウ

 隣国ミラージュ国では、アンドリュー第二王子とソリッド国の元大魔術師メリンダさまとの結婚パレードが行われていた。



「本っ当に仕事が出来ない人だったなぁ」


 ジェイミーは散らかったソリッド国魔術師塔の中にある一室で愚痴を漏らす。そこはメリンダに与えられた元研究室の個室だった。多分、メリンダには、どこに何があるのか分かる仕様なんだろうなと、ジェイミーは溜め息を吐いて、近くにあったポーションの入った瓶を手に取る。


 メリンダ・ノクターン。領地を売却し、王都のタウンハウスと伯爵の称号のみを持つ没落貴族のご令嬢だ。亡くなった彼女の父親が、攻撃魔術を作り出す優秀な魔術師だったので、宮廷貴族の扱いを受けていた。

 そんな優秀な魔術師なら、没落しないだろうと思うが、国から承認されていない、攻撃魔法に使えそうな材料を片っ端から買い集めていた。研究申請をすれば、それらは経費で落とせるのだが、何故かそれをしなかった。研究内容を横取りされるのを恐れたのか、面倒くさがりなのか、既に亡くなっている本人に聞くことは出来ないが、きっと後者であろうと、メリンダを思い浮かべながら、ジェイミーは頭を掻いた。


 メリンダも優秀な魔術師だった。彼女の得意分野はポーションとよばれる回復薬作り。

 ポーションは、外傷を癒やし、疲労回復や栄養補給の効果がある。冒険者だけでなく、一般人にも身近な薬だ。

 メリンダが作るポーションは、従来品よりも効力が強く、即効性があり、冒険者だけでなく、労働階級の人々にも人気となり売上が倍増した。その腕を買われて、学生時代に彼女に魔術師塔の個室の研究室が与えられた。学生に個室が与えられるのは異例中の異例。その後、卒業と同時に大魔術師の称号を与えられ、魔術師塔に迎えられる。これからも、彼女は栄光の道を歩むのだろうと、誰しもが考えていたが、その予想は外れた。


 仕事ができないのだ。


 正しくは、メリンダは仕事を抱え込んでしまう。


 父親譲りなのか、責任感の強さからなのか、メリンダはとにかく仕事を渡したがらず、更に他の魔術師との協力関係が上手く築けないでいた。

 その為、メリンダの作り出すポーションのレシピがほぼ秘匿状態だったので、解析が得意な魔術師に成分を調べてもらい、何の薬草や鉱物が使われているのかは分かっている。

 成分が分からず、副作用が出た際の対処法がない物を一般流通することはありえない。

 そういった安全性の面が、メリンダには若干抜けているようだった。たまたま、薬草を届けに、彼女が調合している現場に居合わせた魔術師が、その材料や分量が微妙に変わっていることに気付き、周りに相談したため発覚した。同じ分野の魔術師たちは一気に血の気が引いた。

 直ぐに健康被害が出ていないかを確認し、回収できるものは回収した。調合は決まった材料と分量でと、別の大魔術師がメリンダに念押ししたが、薬草を運ぶ魔術師に監視をお願いした所、度々分量を変えている様子と報告が上がった。

 毎日、出来上がったポーションを解析し、試飲した上で、その安全性を確かめてから出荷することになった。そのことを彼女に伝えたが、自分が発端だとは分かっていない様子だった。遅効性のものでなく、即効性があるものだったので、何かあれば直ぐに反応が出るため良かったと、魔術師たちは溜め息を吐いた。

 材料や分量の大幅に変わったものは、魔術師たちが被験者となり、体調に問題がなければ、新たにメリンダが開発したものとして登録した。

 

 ところで、大魔術師は他の魔術師を率いる存在だ。


 しかし、メリンダには仕事を振るという事ができない。


 勿論、他の大魔術師たちは、若い彼女が年上の魔術師に仕事を振り難いから遠慮しているのだろうと心配し、事あるごとにアドバイスをしたし、代わりに指示を出してもいいと伝えていた。

 また、ジェイミーを含め、同じ分野の魔術師たちからも、手伝えることはないかと頻繁に申し出をした。


 だが、メリンダは「大丈夫です」と笑って仕事を抱え込む。 


 その為、魔術師としては優秀なのに、大魔術師としては使えない、または無能な存在になってしまった。


 年若い彼女には荷が重すぎたのだろうと、誰もが同情的だった。


 国際親善のために開かれたパーティーで、ミラージュ国のアンドリュー第二王子が、ソリッド国の魔術師たちがメリンダを奴隷のように酷使していると糾弾するまでは。



 ソリッド国王だけでなく、魔術師塔主もそれを否定したが、アンドリュー第二王子はこんな国にメリンダを居させられないと、彼女を連れて強引に帰国してしまった。

 メリンダがそういう目で、他の魔術師たちを見ていたことに、皆ショックを受けたと同時に、怒りを覚えるものも少なからずいた。

 また、彼女の話を鵜呑みにしたアンドリュー第二王子が、ミラージュ国王に告発したことで、両国の友好関係にヒビが入り、一部の鉱物の輸出規制が行われた。ソリッド国もメリンダを不当に扱っていなかったと抗議し、一部の薬草の輸出規制を行った。その中には、彼女のポーションの即効性の要である薬草も含まれている。


 ミラージュ国の魔術師塔からの断交宣言を受け、ソリッド国の魔術師塔では、早々にメリンダが入塔できないように手続きが行われた。魔術師塔に所属する魔術師が、研究過程で得たデータや研究成果は、所属する魔術師塔に帰属する。

 メリンダはミラージュ国の魔術師塔で、同様にポーションを作ると予想されるが、こちらから何かを持ち出す事はできない。


「ミラージュ国の魔術師たちに同情するわ」


 今頃、凄い魔術師が来たと諸手を挙げてメリンダを歓迎しているだろう。しかし、今までジェイミーたちの水面下でのサポートがあっての功績だ。それが無い状態で、どうなるか。ジェイミーは、彼女のポーションを飲んだミラージュ国民に健康被害が出ないことを祈る。


「ジェイミー、どう?」


 コンコンと開いたドアをノックして声をかけてきたのは、同僚のサーシャだった。ジェイミーは肩をすくめる。


「見ての通り。掃除には時間がかかりそう」


「そっか。なら、毎日皆で交代して掃除しよっか」


「そうだね」


 ふと、ジェイミーは部屋の隅に転がっている丸い埃に目が止まった。


「ねぇ。回復薬ってポーションじゃなくてもいいよね?」


「え?どうしたの?」

 

 ジェイミーはぽつりと呟く。


「冒険者たちは即効性が必要だけど、一般人はそうでもないよね?」


「うん?うーん、そうだね……」


 サーシャは首を傾げながら、考え込むジェイミーに返事をした。


「なら、丸薬─ピルにしたらどうかな?」


 落ちていた埃をジェイミーは拾い上げた。


 同じ成分を配合したポーションに比べ、ピルにすれば、即効性は落ちるが持続性はある。その上、ポーション程かさ張らず、更にコストが抑えられるので、長期服用には向いている。体重や年齢に合わせて、飲む数で調整できるので、家族での服用もできる。


「冒険者向けにポーション、一般向けにピルで回復薬を販売してみたらどうかな?」


 ジェイミーの質問に、サーシャはふむふむと頷きながら口を開いた。


「そうだね。一般向けには即効性は無くても良いかもしれないね。肉体労働者は持続力があったほうが嬉しいだろうし。いいんじゃない?」


 サーシャが自分の考えていることを、さらりと口にしてくれるので、ジェイミーはうんうんと嬉しそうに頷く。


「それと、外傷の回復効果のないものを作ったらどうかな?疲労回復効果だけのやつ!」


「え!いいじゃん、それ!単価も抑えられるし、売れるんじゃない?!」


 二人は手を取り合って楽しそうに笑う。これよこれ。こうやって、コミュニケーションを取りながら、私は仕事がしたかったのよと、ジェイミーは心の中で泣いた。メリンダとは、こういったやり取りをほとんど出来なかったのだ。


「はぁ。……メリンダさんは、実務の仕事はできるけど、人を育てたり管理する仕事が苦手だったんだろうな」


「あ〜、そうかもね。どうしても実務ができると、人を育てたり、管理する仕事もできると思っちゃうわよね〜」


 今更ながら、ジェイミーは実務と育成、管理のスキルが違う事に気づき、メリンダに同情した。

 その点、サーシャの実務は凡庸だが、他人の話をよく聞いて、その人に向いた仕事や役割を見つけて、上司に話を持っていったりと、人と仕事を繋げるのが上手い。学生時代も、他の生徒に勉強や魔術を教えるのが上手だったなと、ジェイミーは朗らかに笑うサーシャを見つめた。


「はぁ。サーシャが大魔術師だったらいいのに」


「えぇ〜?無理無理!大した実績ないもん、私!」


 あははと笑って握り合った手に力を込めたサーシャを見ながら、ジェイミーは今度、上司に教育係に彼女を推薦しようかなと考える。

 メリンダの抜けた穴は大きく見えるが、皆で手を取り合えば小さい穴になるかもしれない。

 ぎゅっとジェイミーはサーシャの手を握り返した。



 あれから一年が経ち、ジェイミーの考えたピルの回復薬の売れ行きは良好だった。冒険者たちからも、かさ張らないという理由で売れているそうだ。

 だが、改善の余地はまだまだある。


「やっぱり味かな?表面をコーティングしたらいいかのかしら?」


「そうね。大きさは悪くないんだけど、ちょっと、独特の苦みがあるから、飲みにくいかな」


 ジェイミーがサーシャにピルの相談をしていると、新人のノーヴァが何かを片手に走ってきた。


「ジェイミーさん、サーシャさん!」


 息を切らしながら、ノーヴァは二人の名前を呼んだ。二人は顔を見合わせて瞬きすると、ノーヴァに声をかける。


「どうしたの?ノーヴァさん」


「こ、これ!」


 差し出された新聞を手に取ると「ミラージュ国、天才魔術師第二王子妃の殺人ポーション」と大きく書かれた見出しに、二人はギョッと目を丸くした。記事を読むと、メリンダの作ったポーションで健康被害が報告されたと書かれている。


「そんな……アンドリュー第二王子はお亡くなりになったの?」


 サーシャは小さな声で呟く。


「多分、原因はカフェインね」


 ジェイミーは眉間にシワを寄せて記事を読み進める。アンドリュー第二王子の死因は不整脈と記載されており、若く心疾患の既往歴はなさそうだったので、カフェインを短期間に大量に摂取したのだろうと、ジェイミーは考えた。


「一日のポーションの飲用量は、五本まで大丈夫だったよね?」


 サーシャは、アンドリュー第二王子が二本、メリンダの作ったポーションを飲んでから不整脈を起こしたと書かれているので、首を傾げる。


「うーん。多めにカフェインを入れちゃったんだろうね。カフェインには、疲労感を軽減させて、集中力を高める効果があるから」


 きっと、ミラージュ国の魔術師たちはメリンダを無条件に信用したのだろう。ソリッド国では大魔術師の称号を持っていた上に、現在はミラージュ国の第二王子妃だ。

 そして、メリンダの作るポーションの効果は国外でも有名だった上に、ソリッド国での健康被害は報告されていない。

 更に、彼女は仕事を抱え込むから、誰もその品質のチェックが出来なかったのかもしれない。

 私たちの水面下の働きを、ミラージュ国の魔術師たちは知らないものと、ジェイミーは彼女のポーションで人が亡くなってしまったことに苦い思いをする。


「私たちが、警告していれば良かったのかしら」


 ぽつりとジェイミーが呟くと、サーシャは首を振った。


「いいえ。ミラージュ国の魔術師塔から断交宣言をしてきたもの。きっと聞く耳を持たなかったわ」


 珍しく険しい顔でそう告げたサーシャを意外に思っていると、ノーヴァが半泣きで話し始める。


「メリンダ様は、処刑されてしまうんでしょうか?」


 憧れの人だったんですと、ノーヴァは目を擦った。王族の死に関わっているため、どのような処罰が与えられるのか、他国の為にジェイミーには分からない。何も言えないでいるジェイミーの隣で、サーシャが口を開いた。


「そりゃ、メリンダさんも悪いけどさ、品質チェックを行わなかったミラージュ国の魔術師塔も悪くない?」


 キョトンと二人はサーシャを見上げると、彼女は珍しく怒っていた。


「うちの魔術師塔は、メリンダさんの件があってから、他の部門も品質チェックに力を入れ始めて、健康被害や人的被害が格段に減ったでしょ」


 サーシャの言葉に、ジェイミーは頷く。

 メリンダの件で、他部門も魔術の品質チェックに力を入れ始めたのだ。その結果、健康被害や人的被害が数件に減った。怪我の功名だと皆言っていたが、その品質チェックを他部門へも勧めたのは、他でもないサーシャだ。彼女の人脈の広さに、ジェイミーは驚いたことを思い出す。


「魔術師学会でも報告してる。断交してたとしても、学会発表や学会誌で目にしてるはずよ。現に、品質チェックを始めたり、より力を入れだした国はあるもの」


 国外にも人脈があるのね、凄いわサーシャと、憤慨する彼女を遠い目でジェイミーは見つめた。絶対、彼女は敵に回しちゃだめだと、ジェイミーは心に刻む。


「だから、品質チェックを怠ったミラージュ国の魔術師塔に抗議するわよ!」


 ぎゅっとサーシャは拳を握ると、空いている手でノーヴァの肩を叩いた。


「喧嘩別れみたいになっちゃったけどさ、メリンダさんも同じ釜の飯を食った仲よ!絶対、死なせない」


 サーシャの力強い言葉に、ノーヴァは目にいっぱい涙を溜めて頷く。ニッとサーシャは笑うとジェイミーを見た。


「ジェイミー、ちょっと一緒に塔主様のとこまで付いて来て」


「……いいよ」


 ジェイミーは肩を竦めて返事をすると、ノーヴァの肩を優しく叩いて、サーシャと共に歩き出す。ノーヴァは手に持った新聞をぎゅっと握り締めて、二人の背を見送った。



 ソリッド国の魔術師塔から、アンドリュー第二王子が亡くなったのは、ミラージュ国の魔術師塔が品質チェックを怠ったことが原因ではないかという抗議と、詳しく調査をするようにとの嘆願を出したことで、メリンダは極刑を免れた。

 詳細な調査を行い、メリンダのポーションからは通常よりもカフェインの量が多く検出されたが、それだけでは過剰摂取に当たらなかった。そして、アンドリュー第二王子が普段から、カフェインの多い茶を嗜好していたことが分かった。結果、その茶を短時間に立て続けに摂取した後、ポーションを一気に二本飲み干したことで、不整脈を起こしたと結論が出た。


 メリンダは、中立国の魔術師塔の監視下に置かれ、そこで一生を終えることになった。魔術師としての腕はいいのだ。これからも研究を続けることで、贖罪とすると決定した。


「処刑されなくて良かったわ……」


 新聞を読んだジェイミーが、隣のサーシャに話しかける。彼女は小さく笑った。


「そうね。まあ、檻付きの研究室はちょっと嫌だけど。命が助かったから良かったよね、きっと」


 苦笑いを浮かべたサーシャに、ジェイミーは小さくほほえみ返す。


「それよりも、サーシャ。ナサニエル殿下からの婚約の申し出を断ったって本当?」


 そう話を振られたサーシャは、ポリポリと頬を掻いた。


「だって!ナサニエル殿下は第四王子で、王位継承権は低いとはいえ王族に変わりはないのよ?ただの子爵家の娘の私に、王子妃なんて務まらないよ!」


 あっけらかんとサーシャはそう言って、ため息を吐く。そして、ぼそりと呟いた。


「それに、エルウッド様から婚約の申し出があったの……」


「えっ!」


 ジェイミーは思わず声を上げる。エルウッドはジェイミーたちより三つ年上で、この魔術師塔の副塔主。解析が得意で、どんな魔術も解析してしまう凄腕の持ち主だ。

 だから、あんなに解析、解析とサーシャは言っていたのかと、ジェイミーは合点がいった。


「そっか、おめでとう。式には呼んでね」


 ふふふとジェイミーが笑いながらサーシャの肩を叩くと、彼女は赤くなった頬を両手で隠して唇を尖らせる。


「もう、気が早いよ!まだ返事を出してないし……」


「え〜?早く了承の返事を出さないと。エルウッド様は美丈夫だから、他の子に取られちゃうよ?」


 ジェイミーの言葉に、サーシャは顔を青くした。


「早くお父様に返事を出すよう、お願いしなきゃ!」


 サーシャはそう叫ぶと、一目散に走っていってしまった。

 ジェイミーは全くと肩を竦めると、部門に戻り、サーシャが早退した旨を同僚たちに伝える。皆、いつも元気なサーシャが早退なんて珍しいねと、口々に言い合っていた。


「お疲れ様です。ジェイミーさん」


 賑やかな部門内で、背後から声をかけられ、ジェイミーは振り返る。薬草部門の魔術師ネイトが柔らかく微笑んで立っていた。


「お疲れ様です。ネイトさん」


「あぁ、会えて良かったです。午前中に一度伺ったんですが……」


「そうなんですか?それは失礼しました」


 困った顔のネイトに、ジェイミーは頭を軽く下げる。


「いえいえ。こちらも連絡してませんでしたから」


 そう言ったネイトの落ちついた優しい声に、ジェイミーは好感を抱いていた。いやいや仕事中よと、彼女はシャキッと背筋を伸ばす。


「良かったら、薬草園でお話しませんか?」


「いいですよ。行きましょう」


 ネイトの提案に、ジェイミーは頷いて歩き出した。


 ピルの味が不評なので、ジェイミーはサーシャの紹介で、ネイトとその改善を行っていた。ピルの味を改善しつつ、成分を邪魔しない薬草を混ぜるのか、表面をコーティングするのか等試行錯誤している。

 表面をコーティングしたほうが良いのかもしれないと、考えながら歩いていると、人通りの少ない回廊でネイトが立ち止まった。


「あの、ジェイミーさん」


「はい?」


 ジェイミーは首を傾げながら、ネイトを見上げた。


「その……あなたが……好きです!」


 真っ赤な林檎のような顔で、ネイトはジェイミーに告げた。

 一瞬、ジェイミーは何を言われているのか分からず呆然としていたが、ネイトから告白されたと理解すると、彼と同じように顔を赤くさせる。


「す、みません。急に……」


 ネイトは、赤い顔でボリボリとうなじを掻く。驚いて俯いたジェイミーは、赤くなって熱を持つ耳を痛く感じていた。まさか、ネイトが自分を好いていたなんてと、彼に淡い恋心を抱いていたジェイミーは混乱する。


「その……返事はいつでも構いません」


「は、い……」


 ゴホンとネイトが取り繕うように咳払いをしたので、そろそろとジェイミーは顔を上げた。赤い顔のネイトに、ドキリと心臓が跳ねる。


「い、行きましょうか!」


「は、はい!」


 ぎこちなく二人は並んで歩き出した。

 ジェイミーは、この出来事をサーシャに相談しなきゃと、隣を歩くネイトを盗み見ながら考える。

 きっと彼女なら、良いアドバイスをしてくれるだろうと、爽やかな香りの漂う薬草園の入り口をくぐった。

お読みいただき、ありがとうございました!

評価、ブクマいただけると、嬉しいです。

しごできになりたいな〜と考えながら、つらつらと書きました。

ジェイミーに幸あれ!

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― 新着の感想 ―
[一言] ざまぁのような、ざまぁでないような不思議な読了感。 立場で求められるスキルの違いって現実でも同じ事が言えるもんなぁ。 面白かったです。
[一言] 奴隷のように働かさせられたと言い掛かりをつけられたソ国魔塔側が、助命嘆願をしたのにはモヤッと。 そもそもミ国王子の死は、お花畑の戯言だけ信じて一方的に相手国を敵視した馬鹿王子の自業自得です…
[良い点] 第二王子死亡や国交断絶?何かの割に、人間関係にほっこり(個人的に)とした感じで読ませてもらいました。 [気になる点] 独特な風味のある薬で、糖衣を検討中。 正露◯かな?
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