わたあめとわたあめ
令和時代の祭りの屋台
わたあめとわたあめが並んでいた。
それぞれ百合百合することなく、
展示されるだけとは嘆かわしい。
わたあめ「…………」
わたあめ「…………」
わたあめ「…………」
わたあめ「…………」
わたあめ「…………」
わたあめ「…………」
とても嘆かわしい!
わたあめ「…………」
わたあめ「…………」
わたあめ「…………」
わたあめ「…………」
わたあめ「…………」
わたあめ「…………」
はよ百合百合せんか!
わたあめ「…………」
わたあめ「…………」
わたあめ「…………」
わたあめ「…………」
わたあめ「…………」
わたあめ「…………」
なので神様は、ちょっと風を吹かせて
わたあめとわたあめを、くっつけて
しまいました♪
わたあめ「ふわっ❤︎」
わたあめ「ふわっ❤︎」
わたあめとわたあめは
モジモジし始めました
わたあめ「あの……」モジモジ
わたあめ「えっと……」モジモジ
わたあめ「すごく、柔らかいんだね」
わたあめ「わたあめちゃんこそ、すごく、ツヤが良いと思いますわ」
わたあめ「え、そんな、ありがとう」
わたあめ「どういたしまして」
わたあめ「…………」
わたあめ「…………」
わたあめ「…………」
わたあめ「…………」
会話が途切れて静かになりました。
わたあめとわたあめはまだ
モジモジしています。
さっきより熱く
モジモジしています。
わたあめ「あ、あの!」
わたあめ「何かしら」
わたあめ「フワフワして、いいですか?」
わたあめ「フワフワ? ちょっと恥ずかしいのではないかしら」
わたあめ「そ、そうですよね。あはははは」
わたあめ「…………いえ、やってみましょう」
わたあめ「ふあ?」
こうして、わたあめとわたあめは
お互いのフワフワした部分を
くっつけて、揺らしあいました。
ふわっ ふわっ ふわっ
わたあめ「あう、あう、あう」
わたあめ「はぁ、夢見心地ね」
左右にゆれて
ふわふわふわ
わたあめ「ねえ。私たちずっと一緒よね」
わたあめ「ええ。こんな気持ちは初めてよ」
ふわっ ふわっ ふわっ
ところがどっこい
人間が、やって来ました。
人間は、カード決済をした後
両手を伸ばしてわたあめに
掴みかかってきました。
わたあめ「きゃあ」
わたあめ「危ない!」
わりばしアタック!
ぺちん♪
人間「ウボァー」
ボカァァァァァン
人間は飛距離1000メートル
等速直線運動で水平移動した。
屋台を4台破壊して、
フェンスを破り
車道の車を弾き飛ばして
学校の塀に穴を開け
テレビ局のビルの壁を割って
美術館の絵画をぐちゃぐちゃにして
上り坂にさしかかったところで
人体ローリングして
自動車の下を潜り抜け
赤信号の真下でストップしました。
ゆえに
パトカーと救急車がやって来ました。
うううううううううううううううう
ピーポーピーポーピーポーピーポー
わたあめ「あう、あう、どうしよう」
わたあめ「逃げましょう。もうここには居られないわ」
わたあめは、ぴょんぴょんしながら
一本足のわりばしを使い
アスファルトの道路をどこまでも
ジャンプで行きました。
どこまでも、どこまでも
つづくアスファルト道
ようつべに動画晒されても
写真をSNSに流されても
わたあめとわたあめは
必死にぴょんぴょん進みました。
わたあめ「はあはあ」
わたあめ「はあはあ」
やがて、体力の限界
わたあめ「もう……だめ……」
わたあめ「はあはあ」
ぱたり
ぱたり
わたあめ「はあはあ」
わたあめ「はあはあ」
2人ともボロボロです。
フワフワ部分はヘナヘナになり
わりばしの底は黒ずんでしまいました。
わたあめ「はあ、はあ、はあ」
わたあめ「はあ、はあ、はあ」
わたあめ「はあ、はあ、はあ」
わたあめ「はあ、はあ、はあ」
わたあめ「私たち、ここまでみたいね」
わたあめ「諦めてはだめよ」
わたあめ「無理だよ、もう動けないの」
わたあめ「合体よ」
わたあめ「がっ、はああああああああ!?」
わたあめは驚きのあまり飛び上がって
全身のフワフワを逆立ててしまいました
わたあめ「合体って、あの伝説の?」
わたあめ「ええ。私たち、伝説になるの」
わたあめ「それってつまり」
わたあめ「くっつくわよ!」
わたあめとわたあめは、覚悟を決めて
激しくくっつきました。
砂糖のベタベタを嫌がるどころか
むしろ歓迎しながら
互いのフワフワを、力強く押し付け合い
生き残るためのパワーを作り出しました
わたあめ「はああああああああああ!」
わたあめ「おりゃああああああああ!」
パキッ
パキッ
2人の割り箸が割れて
二足歩行になりました。
わたあめ「わっ」
わたあめ「足が増えたわ」
こうして2人は
普通に歩けるようになりました。
2人はアスファルト道を
どこまでも どこまでも
歩いて行きましたとさ。
めでたし めでたし