表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『血の匂い』

作者: shiro
掲載日:2023/03/29

 

 蛸足の緑だけが光る部屋で、ベッドにうつ伏せになりながら、部屋の奥の本棚を見ている。



 俺は血が好きだ。



俺は肉を食らうんだ。うさぎなんて一目散。殺人鬼だって尻尾巻いて逃げ出すさ。




小さい頃はヴァンパイアの絵本だって何回も読んだし、にんにくが危ないってことも知ってる。


日焼け止めは欠かさないし、トマトジュースは飲まない。



鉄仮面はあいにく持ち合わせてないが、鋭い牙なら、ほらこの通り。

世間では、これを犬歯などと言うそうだが、俺のこれは、一般のそれとは違う。血を喰らう魔物なのさ。



 黒いスーツにハット帽、ポケットに両手突っ込んで身体屈めて歩く。



道ゆく人がみんな俺を見ている。おっと、俺の口から出した牙には気付いちゃいけないぜ。それがお前の死期になるからな。



行きつけの古着屋での店主との会話は欠かさないし、美容室だってヴァンパイア御用達のダークなところさ。

いつものバーでも、必ずカウンターに座るし、おっ、もちろんカクテルは少しずつ、な。上品に飲むんだ。




酒の小瓶とマッチは欠かさず持ち歩くし、暴漢なんてなんのその。

路地裏で火だるまにしてやったのさ。

女に感謝されても、知らん顔。俺は興味なんてないのさ。



歌舞伎町は俺のテリトリーだし、影のオーナーなのさ。好き勝手させてやってるけどな。



生きることなんて怖くない。そもそも俺は死なないからな。

ただ、地を練り歩くのさ。

ハロウィンの日は何故か、多くの人に囲まれたが、そんなの関係ない。

俺は血に飢えてるのさ。




ただ、それでも苦手なものが一個だけあるんだな。これだけはな。


それは「愛されること」なんだな。

余計に寂しくなるだろう。


どうせ死ぬんだから、勝手に死んでいってほしいよな。好き勝手人のこと踏みつけて、踏み跡残して死んでいって欲しくないよな。




でも、あいつらは血飲ませても死んじゃうんだよな。





指切ってみせても、口噛み切って血分けてやっても、心配して手当してくれるんだよな。どうせすぐ治るのに。





同じように愛されて、同じように好きだと伝えられて、同じように心配されて、同じようにみんな明るく笑うんだよな。




唯一ちゃんと見れる太陽なのにな。みんな点滅して消えてっちゃうんだよな。



本棚を見ている。





みんな死んでくんだよな。





みんな。




本棚を見ている。







みんな。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ