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スミスワイフ家の公爵令嬢

■ベアトリス・ベティ・スミスワイフ(正ヒロイン)


スミスワイフ公爵家の領地は王都から少し離れたところにあります。お父様が領主を継いだとき、伝統ある公爵家に相応しい土地をと直轄地を整理して転封されたそうです。広い領地には難しい土地もありますが、古くからある商工業の街や港も含まれて、とても豊かなところだと思います。


私には兄が居ますので、いつか領地を出ていくことになります。お父様は、そのときは婿を取って土地を分割しようなどとおっしゃいますけれど、現実的ではないと思います。


見知らぬ場所で新しくやっていくのなら、心細くないように、頼りになる旦那様と結婚したいです。


「ベアトリス様は頼りになりますね」


そんな私の理想と真逆のことをおっしゃったのは、ポッターサン家のアルバート様でした。


年の近い貴族の子女と交流を、と両親が探してくれた私のお友達です。


公爵家と伯爵家では家格に差があるので、あたりさわりのない会話になりがちにしても、ひどく的外れに聞こえました。


笑むのも皮肉になる気がしてあいまいに返事をすると、アルバート様は微笑みました。


「そういうところが」


普段はあまり意地悪な言い方はしない人なのですけれど。


「よくわかりません」


権力や財力を期待されているのなら、ただ公爵家に生まれただけという私に動かせるものはありません。そういった意味では、将来ポッターサン家を継ぐアルバート様の方が、よっぽど自由になるのです。


「私たちの友情は家の権勢に影響を与えないでしょう」

「個人的なお付き合いですもの」


お茶会はスミスワイフのタウンハウスで行われています。温室に机と椅子を設えて、並んでいるのは軽い茶菓子と流行りの茶葉です。


今日の茶菓子は屋敷の厨房で作られた物ですが、数回に一度はアルバート様がポッターサン家や市井で作られたお菓子を差し入れてくださいます。今日の手土産は特に育ちが良いという豆の苗でした。


「それでも飽きずに会ってくださるのが嬉しいのです」

「おかしなことをおっしゃいますね」

「あそこに見事に咲いているのは何という花でしょう」


明け透けに話題を逸らすので、話はそこまでとなりました。


見目良く、有能で勉強熱心な私のお友達。


家格に差があるので、優秀さは認めていても、スミスワイフ公爵家がアルバート様を私の結婚相手に考えることはありません。


人当たりも穏やかなこの人と一緒になるのはもう少し爵位の近い家の、自立した女性なのでしょう。


「アルバート様は、良い結婚をされそう」


きっと並べばお似合いだろう。そう思って言った言葉にアルバート様は相好を崩しました。


「そういうところですよ」


誤魔化したがりなのは玉に瑕と思います。

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