転生の目的(1)
≪エピソードハナコ≫はハナコさんの物語です。
≪エピソードハナコ≫
ハナコは天使をやっている。元は普通の故人であるが、なんだかんだで天使となった。
そもそも天界とは地上とあまり変わらない感じで社会が成り立っている世界だ。天使の仕事は神々の指示により人の願いを叶えたり、人を導いたりすることだ。そして得られたポイントでおしゃれをしたり家を建てたりするのだ。ただポイントは毎月自然に一定数減り、なくなると非常に肩身が狭い思いをすることになる。
得られるポイントは位によって異なる。高ければ高度な仕事になりそのぶんポイントを多く得られる。ちなみに今ハナコは見習いの段階だ。
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そしてハナコは今、とあるイベント大会に参加している。
異世界転生者をどれ程育成できるかという大会だ。客観的に見れば人を使ったゲームをしているように見えるが、ここでの功績は今後の出世に響くのだ。
ただ、参加したはいいがさっそくやる気のありそうな人達はみんなライバルの天使にとられてしまい、担当になったのは不思議な雰囲気を持つ男性だった。だが話しているとたくさん質問したりと、やる気がないわけではなさそうだった。
しかし、彼はスキルを選ぶところで急に謎の行動をとり始めた。
「あの、本当に【切断】と【ガード】でよろしいんでしょうか」
「はい。お願いします」
(正直言って意味がわからない)
【切断】について、刃物を使わなくても切れるとかだったなら便利そうだがそうではない。
「何でですか!【切断】の、刃物で物が切れるなんて当然のことじゃないですか」
「確かに僕も当然のことだと思います。ですが、当然のことをちゃんとできるってすごいことだと思うんですよ」
【ガード】について、(◆)がついてないということは自動で発動するものだろう。しかし人間が魔法とかに防御体制をとったところでたかが知れてる。他のスキルに見劣る。
「防御くらい自分でできるようになったらどうなんですか」
「いや、何いってるんですか。できるわけがないでしょう」
(ダメだ、話が噛み合わない)
「はぁ、本当にそれでいいんですね」
「はい」
何を思おうが、ルール上スキルの選択を天界側の都合で左右することはできない。
(しかし、この人は何を考えているんだろうか。ふざけてるのかな?…いや、でも彼はちゃんと考えて選んでいるように見えるし…)
(やっぱりわからない)
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「それでは手続きが終わりましたので転生しましょう。その前に何か質問はありますか?」
「そうですね、そう言えば転生の目的って何ですか?」
「…………」