一段落ついて
「あの~、そろそろ起きてもらえませんか」
「………」
*
柄の悪そうな人、寝息はしているから生きてるのは間違いないがなかなか目を覚まさない。
まだ周りに魔物はいるし、ここに置いていくのもあれなので、魔法袋に入れておいた荷車で運ぶことにした。
なんでも用意しておくもんだな。
「おお、軽い軽い」
ステータス補正で力が上がっている。ランクの低い魔物達も格上と認識して襲ってこないし、これなら難なく避難所まで運べそうだ。
*
「…君たち、今警報が出てる村の方から来たように見えたのだが…」
「はい。そうですよ」
「まだ避難に遅れた人がいたのか」
まあ、別にドラゴンはもういないし、避難する必要もなかったのだが、この人はここでおろすことにしよう。
「あの、まだとはどういうことですか?」
「ああ実はだな、村長の娘で村の看板娘…わかるか?」
「ええ、わかりますよ」
朝の時間帯に村の入り口で挨拶したし、新聞にもこれでもかと言うほど載っているからさすがにわかる。
「その子が避難できていないとさっきまで騒ぎになっていたんだ」
「…それでどうなったんですか?」
「謎の新人冒険者によって救出された。ミニヒドラに囲まれて泣きそうになってたところを助け出したそうな」
「ならよかったです」
あの子まだ未成年だし、魔物と戦ったことがない人からすればミニヒドラの群れは脅威なはずだ。まあでも、助かったなら良かった。
にしても、僕からすればドラゴンは脅威ではないが、その人はドラゴンがいるなかで助けに行ったということになる。
僕のように何か対抗手段があったのか、それとも死の覚悟で助けに出た勇敢な人だったのか、ドラゴンを倒しに来なかったことからおそらく後者だろう。
勇敢なのはいいことだ。
「…ん?ここはどこだ?」
おっと、僕も人を助けたんだった。
なんだか寝ぼけてる様子だ。
「うぅ…ドラゴンはどうなったんだ?」
「ああ、ドラゴンなら…」
っと危ない。ハナコさんに伏せておくよう言われたんだった。何故かはわからないが、とりあえず従っておこう。
「まさか君たち!ドラゴンを見に行ってたんじゃ無いだろうな!」
「いえ、決してそんなことはありません」
確かにしばらく観賞したが、それはついでに過ぎずそのために行ったわけではない。
この人も逃げようとしてわけだし違うだろう。
「あれは、夢だった、のか?」
一般的にはランクEXが倒されるなんて考えられない。夢だと思うのも無理は無いのかもしれない。魔石を見せれば倒したことを一発で証明できるのだが、ここはハナコさんを信じて黙っておこう。
「…とりあえずお前が運んでくれたのか、ありがとう。感謝する」
「はい。どういたしまして」
ちゃんとお礼が言える人でよかった。
さて、僕はそろそろ行くとするか。避難所は村の人達が一時的に避難する場所だ。出ても問題はない。
「じゃあ僕はもう行きますね」
*
「会議の結果、あなたが持つ2つのスキルが廃止されました」
「えっと、ならもう使えないんですか?」
「いえ、一度与えられたスキルが勝手に消えることはありません。ただ、以後は取得不可なのでご注意ください」
ハナコさんからまた連絡が来た。確かに破格過ぎるし、廃止されても仕方ないとは思っていたが、今後も使えるなら問題ない。
「それではまた。何かご用があればいつでもご連絡ください」
「はい。わかりました。ではまた」プツン
さて、僕は今、実家に向かっている。しばらく帰らないつもりでいたが、ネスドラゴンを倒したことを家族には知って欲しいと思ったのだ。会議も終わったらしいし、問題ないだろう。お姉ちゃんはまだいるかな?




